今年の食品値上げ 「計画的」?発表⇒実施まで「70日」、前年より長く 累計4万5000品目の値上げデータ分析

この記事は約4分で読めます。
帝国データバンクは、2022年以降の食品値上げ4万5000品目のデータを基に、最近の値上げの傾向や動向について調査分析を行った。

<調査結果(要旨)>

  1. 「緊急値上げ」から「計画的値上げ」へ? 値上げ発表⇒実施までの期間が長期化 

調査期間:2023年4月28日まで

調査対象:食品主要195社における値上げ品目

調査機関:株式会社帝国データバンク

「緊急値上げ」から「計画的値上げ」へ? 値上げ発表⇒実施までの期間が長期化 

2023年も2万品目を超える怒涛の食品値上げラッシュが続く。こうしたなか、食品メーカー各社による値上げの発表日から実施日(出荷)までの日数差=値上げ日数が、昨年と比べて長期化の傾向にあることが分かった。22年以降の国内の主要な食品や飲料メーカー195社・約4万5000品目の値上げデータを基に分析したところ、2023年1-6月までの値上げ日数(ターム)は、平均70.9日だった。前年同期の67.5日、22年通年の68.4日に比べても長く、余裕を持った「計画的な値上げ」が浸透している可能性がある。値上げ日数を期間別にみても、23年1-6月は発表日から実施日まで「2カ月以上」が8割を占め、前年に比べて高い割合を占めた。

主な食品分野別にみると、「加工食品」は同じ1-6月間で前年比3.9日早い71.6日だった。一方、醤油などの「調味料」は同7.5日遅い82.9日、ポテトチップスなどの「菓子」は13.0日遅い67.8日だった。チーズなどの「乳製品」は約1カ月(20.3日)遅い54.3日で、いずれも値上げ日数に長期化の傾向がみられた。

 

背景には、値上げに対する「スタンスの変化」が要因の一つにあげられる。2022年は、特に4月以降の国際的な原材料高や原油高、さらに急激に進んだ円安の影響で大幅なコストアップに直面したものの、多くの食品で「値上げ慣れ」しておらず、価格アップへの抵抗感から価格の据え置きや「実質(ステルス)値上げ」などで対応する状態が続いた。ただ、原材料価格の上昇ペースが企業努力で制御可能な範囲を超えた企業が相次ぎ、採算確保のために価格改定を急いだケースが多く発生した。特に急激な円安進行の影響が直撃した11月は値上げ発表から実施日まで46.2日と最も短く、差し迫った「緊急値上げ」の動きが目立った1年だった。

2023年は引き続き原材料費の高止まりに加え、輸送費や電気代の高騰でもコストが増えている。こうしたなか、企業・消費者側双方で値上げを「やむを得ない」と捉える認識の広がりもあり、コスト増分について柔軟かつ計画的に価格転嫁を行う企業が増えている。そのため、足元の原材料価格動向や採算ラインなど値上げの前提条件を複数設定するケースもあり、22年に比べ値上げに対する抵抗感が薄まっていることも「計画的値上げ」を後押しする要因となっている。

高い水準続く物価高 値上げまでの期間を活かした「賢い購買行動」求められる

2022年度の生鮮食品を除く消費者物価指数は前年度に比べて3.0%上昇となり、第二次石油危機によるインフレの影響を受けた1981年度以来、41年ぶりの高水準となった。3月単月でも3%を超え、2月に比べて伸び率は低下したものの依然として高水準が続いている。

足元では、小麦の取引相場低下を背景にしたパスタの値下げなど、一部の製品では価格引き下げの動きがある。ただ、多くの食品では原材料高など引き続き値上げ圧力が強く、少なくとも今秋までは断続的に値上げが続きそうだ。こうしたなか、多くの食品では値上げの告知から実施日までの「モラトリアム」が2カ月以上あり、食品分野によっては値上げ実施日が揃って同日のケースもある。日ごろ多く使用する製品は情報収集や値上げ前に少し多めに買い足すなど、消費者側でも生活防衛に向けた「賢い購買行動」が求められそうだ。

タイトルとURLをコピーしました