トルコ・シリア大地震:現地状況とユニセフ緊急支援内容まとめ【プレスリリース】

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北西部のラタキアで、地震により倒壊した建物の瓦礫によりかかる男の子。(シリア、2023年2月8日撮影) © UNICEF_UN0779763_Belal北西部のラタキアで、地震により倒壊した建物の瓦礫によりかかる男の子。(シリア、2023年2月8日撮影) © UNICEF_UN0779763_Belal

【2023年2月8日 ニューヨーク/ジュネーブ/アンマン(ヨルダン)発】

トルコとシリアの国境地域を襲った一連の地震を受け、ユニセフ(国連児童基金)は、シリア・トルコの両国で緊急支援を開始しています。以下は現地時間の8日にユニセフが発表した、これまで判明した被災地の状況、両国におけるユニセフの支援内容、および背景情報です。

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イスケンデルンで、子どもを救出する救助隊。(トルコ、2023年2月6日撮影) © UNICEF_UN0778546_Erokイスケンデルンで、子どもを救出する救助隊。(トルコ、2023年2月6日撮影) © UNICEF_UN0778546_Erok

被災地の状況
家が倒壊し、子どもを含む多くの人々が避難しています。子どものいる家族は、建造物の安全性や余震による影響が確認できない中、損壊した自宅に戻るのを恐れ、路上、商業施設、学校、モスク、バスターミナル、橋の下や開けた場所で寝泊まりしています。気温が氷点下まで下がり、雪や氷雨が日常的に降る厳しい天候に、何千もの家族がさらされています。

一連の地震のうち最初の大きな揺れは、多くの人が就寝中の深夜に発生し、人々は倒壊した建物から逃げることができませんでした。そのため、まだ何百人も瓦礫の中に閉じ込められている恐れがあります。捜索・人命救助活動のためのタイムリミットが徐々に近づいています。
 

北西部のアレッポで、ユニセフが支援する給水車から水を汲む人たち。(シリア、2023年2月7日撮影) © UNICEF_UN0779952_北西部のアレッポで、ユニセフが支援する給水車から水を汲む人たち。(シリア、2023年2月7日撮影) © UNICEF_UN0779952_

正確な数は確認中ですが、多くの学校、病院、その他の医療・教育施設が地震によって損傷、倒壊しています。トルコ全土やシリアの一部の学校は、少なくとも今後1週間は閉鎖される予定です。多くの学校は被災した子どもたちや家族の一時的な避難場所となっています。例えばシリアでは、数百の学校が被害を受けました。アレッポだけでも、少なくとも4つの学校が全壊し、危険なため使用できない状態です。

シリアの被災地全域で、揚水・水処理施設、給水塔、下水道、および地震前からすでに避難している人々が暮らしていた避難キャンプにある貯水タンクなど、重要な水インフラが損なわれています。このため、コレラや急性水様性下痢症など、水を媒介とする感染症のリスクが高まっています。

両国で道路や重要なインフラが被害を受けている可能性もあり、捜索・救助活動やより広範な人道支援活動を困難にすることが予想されます。

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ユニセフの対応
■ シリア

  • シリアでは、ユニセフは現地のパートナーと連携し、地震の影響を特定しながら、被災した子どもたちや家族への人道支援活動を強化しています。
  • 被災した子どもたちや家族が、安全な飲み水と衛生設備を利用できるようにすることが当面の最優先事項です。災害発生後の初期段階で、感染症の発生と拡大を予防するため、これは特に重要です。主要な給水所の被害状況、サービスの中断や損傷の有無を至急確認し、避難している人々に安全な水を迅速に提供することを優先します。当面の措置として、ユニセフは給水車で水を緊急輸送し、一時的な断水状況を補う予定です。またユニセフは、水と衛生および栄養補給のための物資を、あらかじめ配置しました。
  • もうひとつの優先事項は、子どもの保護です。家族と離ればなれになった子どもや同伴者のいない子どもを特定・保護し、家族と再会できるようにします。また、生涯で最も強い地震を経験した多くの子どもたちが心に傷を負った可能性も高く、子どもたちに心理社会的サポートを提供することも重要です。
  • 脆弱な立場にいる子どもたちが適切な栄養を摂り、教育を受けられるようにすることも、重要な優先事項となっています。これには学校の被害状況、また避難所として使用されているかどうかの確認作業も伴います。
  • シリア国内にあるユニセフの各事務所が被害の状況を調査しながら、被災した子どもたちやその家族への継続的な人道支援を至急強化していきます。被災状況の確認が進むにつれ、人道支援のニーズがすます拡大することが予想されます。

■ トルコ

  • ユニセフは、トルコ政府および災害緊急事態管理庁(AFAD)と、より広範な人道支援活動が行われるにつれ発生する新たな支援ニーズについて調整を進めています。トルコ国内でのユニセフの当面の最優先事項は、被災した子どもたちとその家族が最も必要としている支援を確実に受けられるようにすることです。
  • ユニセフは家族・社会サービス省(MoFSS)と協力し、被災地域の子どもたちの保護を進め、すでに児童養護施設などで暮らす数百人の子どもたちを安全な場所に避難させています。
  • ユニセフはまた、数千人の子どもや乳幼児に防寒服や毛布を、避難している家族には衛生キットや母子用キットを支給するよう、トルコ政府をサポートしています。
  • ユニセフは、より広範な人道支援活動が行われるにつれ発生する新たなニーズへの対応について、引き続きトルコ政府および災害緊急事態管理庁と調整を進めています。ユニセフの対応は、子どもの保護、緊急の心理社会的支援の提供、子どもに優しい空間と仮設学習場所の稼働、主要給水所と各サービスの被害状況の確認、および保健・栄養ニーズへの対応に重点を置いています。

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北東部ラッカで、非公式居住区で避難生活を送る国内避難民の親子。(シリア、2022年9月撮影) © UNICEF_UN0710285_Souleiman北東部ラッカで、非公式居住区で避難生活を送る国内避難民の親子。(シリア、2022年9月撮影) © UNICEF_UN0710285_Souleiman

紛争下のシリアの状況について
シリアの子どもたちは、世界で最も複雑な人道危機のひとつに直面し続けています。悪化する経済危機、2011年以降10年以上にわたる紛争下の局地的な敵対行為の継続、大多数の難民・避難民、荒廃した公共インフラにより、人口の3分の2が支援を必要としています。食料不安や、不確かな代替水源への依存、安全面の懸念、学校中退者の多さは深刻です。

水系感染症は、被災した子どもたちや家族にとって、命にかかわる脅威です。シリアでは、2022年9月10日に発生が宣言されたコレラが、瞬く間に国中に広がり、特に子どもたちが脅かされています。

2011年に始まった紛争の中で、12歳までの子どもたちは皆、紛争下の暴力や避難生活しか知りません。家族は何度も家を追われ、中には6、7回も避難した家族もいます。長年にわたる暴力、破壊、経済状況の悪化により、生活環境は耐えがたい状況になっています。

2023年にシリア全土で人道支援を必要とする人々の数は、今回の地震の発生前の時点で1,530万人近く(そのうち子どもの数は過去最多の700万人)と推定されていました。

  • シリア北西部では、紛争によって多くの家族が、何度も居住場所を変えながら避難を繰り返しており、公共施設や学校、モスク、未完成の建物、商店など住居機能が不十分な場所で暮らし続けている人もいます。今回の地震の影響で、また再び風雨や寒さにさらされた子どもたちは、低体温症や呼吸器系感染症などの疾病のリスクにさらされています。多くの人々は、保健、水、衛生といった最も基本的なサービスを利用できなかったり、あるいは利用できても非常に限定的であったりします。
  • 現地にいるユニセフのスタッフは、特に子どもたちが非常に混乱していると伝えています。地震発生時、子どもたちはまだ夜が明けていない早朝に家から避難しなければならず、現在も多くの家族が、通りや空き地で過ごさざるを得ない状況です。多くの学校や大学は、さらなる揺れを恐れて家に戻ることができない家族のための避難所に使われています。多くの子どもたちにとって、このような恐怖は、紛争によって家を追われた過去の経験を思い出させる痛ましいものだったでしょう。
  • 家から避難している子どもたちや家族は、特に移動中に不発弾に遭遇する大きな危険にさらされています。この地域の土地の3分の1は地雷や不発弾が残っている危険地帯であると言われており、今回の地震で被災した人々が、そうした危険地帯を移動し、爆発物や地雷に遭遇することが懸念されます。

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北西部のラタキアで、凍える寒さの中避難し、建物の倒壊を恐れ歩道に座り込む女の子。(シリア、2023年2月7日撮影) © UNICEF_UN0779773_Belal北西部のラタキアで、凍える寒さの中避難し、建物の倒壊を恐れ歩道に座り込む女の子。(シリア、2023年2月7日撮影) © UNICEF_UN0779773_Belal

危機下にある子どもたちに迅速な支援を届けるために
ユニセフは、被災した子どもたちや家族が緊急に必要とする人道支援を届けるため、国際社会に支援を求めています。

被害の状況が徐々に明らかとなる中、緊急支援活動のための資金を迅速に確保することで、ユニセフとパートナーは、今後のあらゆる支援ニーズの変化にも対応することができます。緊急事態発生の際は常にそうであるように、いち早く資金を確保・供給することによって、迅速な人道支援が可能になり、命を守るための初動対応に全力を尽くすことができます。

ユニセフは国際社会に対して、災害発生下で最も弱い立場に置かれるのは子どもたちであることを認識し、活動に必要な予算の初期分配において、子どもたちのニーズを満たす支援活動への予算配分が優先されることを、求めています。
 

 

ユニセフ「自然災害緊急募金」ご協力のお願い
地震や津波、洪水、台風やサイクロン、干ばつなどの自然災害に苦しむ子どもたちのために、ユニセフは緊急支援を行っています。その活動を支えるため、(公財)日本ユニセフ協会は、ユニセフ「自然災害緊急募金」を受け付けております。トルコ・シリア国境で発生した地震の影響を受けた子どもを含む、最も支援を必要としている子どもたちとその家族に支援を届けるため、ご協力をお願い申し上げます。

1. クレジットカード/コンビニ/ネットバンクから
https://www.unicef.or.jp/kinkyu/disaster/2010.htm

2. 郵便局(ゆうちょ銀行)から
振替口座:00190-5-31000/口座名義:公益財団法人 日本ユニセフ協会
*通信欄に「自然災害」と明記願います。
*窓口での振り込みの場合は、送金手数料が免除されます。

※ 公益財団法人 日本ユニセフ協会への寄付金には、特定公益増進法人への寄付として、所得税、相続税、法人税の税制上の優遇措置があります。また一部の自治体では、個人住民税の寄付金控除の対象となります。

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■ ユニセフについて
ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念を様々な形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています。 https://www.unicef.or.jp/
※ ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する33の国と地域を含みます

■ 日本ユニセフ協会について
公益財団法人 日本ユニセフ協会は、先進工業国33の国と地域にあるユニセフ国内委員会のひとつで、日本国内において民間として唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、政策提言(アドボカシー)を担っています。 https://www.unicef.or.jp/

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