- 「COSMOS2」で業種が「航空機・同付属品製造業」(主業・従業含む)の企業を調査対象とした
- 上記条件以外でも、航空機の関連団体の会員で航空機に関わる売上高の比率の高い企業なども対象に追加
- 業績の最新期は原則として2021年度だが、それ以外は判明している最新期を使用した
売上高推移 ~最新期合計売上高は2兆4713億5000万円、2年連続で減少
全国の航空機関連企業224社の業績推移をみると、2021年度の売上高合計は2兆4713億5000万円、前期比で10.5%減少した。「増収」だった企業は22.3%と前年度から8.9ポイント増加したのに対し、「減収」は47.3%と比率こそ低下したものの、ほぼ半数を占めた。新型コロナウイルス感染症拡大で航空旅客需要が喪失したが、「スペースジェット」の開発が凍結された前年からみると、売上推移はわずかに改善がみられるものの、依然として厳しい状況が続いている。直近の推移をみると、224社の売上高合計は、コロナ前の2019年度までは4兆円弱で安定的に推移していたが、2020年度(2兆7627億9000万円、26.5%減)以降は大幅な減収に転じた。航空機以外にも自動車部品などの製造を手がけている企業も多く含まれており、コロナ禍で製造業全体が停滞した影響も受けているとみられる。
利益推移 ~全体では黒字転換も「赤字」企業の割合は増加
航空機関連企業224社のうち、当期純損益が判明した企業の2021年度の当期純損益合計は1575億8900万円の黒字。2期連続で赤字となっていたが3期ぶりの黒字転換となった。三菱航空機1社で計上した単年度赤字(2021年度は87億9900万円、2020年度は912億8900万円)が全体に大きく影響する傾向は続いており、赤字幅が縮小したことでその合計額は改善した。ただ、2021年度は「赤字」企業が41.7%と前年よりも増加、全体的に航空機関連企業の収益は悪化しており、三菱航空機以外の収益状況も厳しさを増している。「増益」企業は構成比27.3%で前年度から増加、「黒字」企業は58.3%で前年度から減少した。2021年度の収益状況については、売り上げの回復が限定的ななか、資材価格や人件費高騰などの影響も受け、中小規模事業者を中心に厳しい状況に立たされている様子が窺える。
所在地別 ~「愛知」がトップ
全国の航空機関連企業のうち、多数を占める「航空機・同付属品製造業」(主業・従業含む)の都道府県別所在地では、全国224社のうち三菱航空機などが本社を置く「愛知」が41社でトップ。2位は「東京」で35社、3位は「岐阜」で32社となり、東海地区に航空機関連企業が集積していることが分かる。
まとめ
新型コロナウイルス感染症拡大で航空旅客需要は一気に喪失。とくに、主力の米ボーイング社や欧州のエアバス社などからの受注の減少などによってわが国の航空機関連企業の業績は厳しさを増している。そうしたなか、多くの期待を背負ってきた国産初のジェット旅客機「スペースジェット(旧・MRJ)」の開発中止が決定された。開発を手がける三菱航空機が本社を置く愛知県では落胆の声が多く聞かれる一方で、ある程度は覚悟していたという冷静な受け止め方もされている。
しかし、自動車に次ぐ“ものづくり”の柱として大きな期待を受けている航空宇宙産業において、重要なアイコンであった「スペースジェット」を失う影響は決して小さくはない。思い切った設備投資をして量産化を待ち望んでいた企業にとっては、事業存続を左右しかねない決定でもある。とくに、中小クラスの航空機部品メーカーでは事業継続が困難に陥る懸念が募る。
今後は、得られた知見を次世代戦闘機への活用を進めていくなどとしているが、中小部品メーカーを中心にこれまで積み上げられてきたノウハウが失われることのないよう、官民あげての取り組みが求められる。