絵画・写真・絵手紙コンテスト「リリー・オンコロジー・オン・キャンバス がんと生きる、わたしの物語。」第12回の受賞者を発表・表彰

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日本イーライリリー株式会社(本社:兵庫県神戸市、代表取締役社長:シモーネ・トムセン、以下、日本イーライリリー)は2022年6月24日、オンラインにて、第12回「リリー・オンコロジー・オン・キャンバス がんと生きる、わたしの物語。」絵画・写真・絵手紙コンテストの授賞式を開催し、絵画部門・写真部門・絵手紙部門あわせて73件の応募作品の中から、6名の受賞者を発表し、表彰しました。

 

【オンライン会見の様子】

第12回「リリー・オンコロジー・オン・キャンバス がんと生きる、わたしの物語。」受賞者
【最優秀賞】
絵画部門:  小原 絢子 (おはら あやこ) さん     (兵庫県神戸市/32歳) 『祈りの千羽鶴』
写真部門:  内田 輝美 (うちだ てるみ) さん       (長崎県諫早市/54歳) 『キャンサーギフト』
絵手紙部門: 上杉 美智子 (うえすぎ みちこ) さん (愛媛県今治市/78歳) 『会いたかった』

【優秀賞】
絵画部門:  長田 智佐子 (おさだ ちさこ) さん    (神奈川県横浜市/58歳) 『大切な花びら』
写真部門:  秋澤 真希子 (あきさわ まきこ) さん (埼玉県三郷市/37歳) 『感じる温もり』
絵手紙部門: 養田 公美 (ようだ ひろみ) さん  (長野県千曲市/76歳) 『たった一度だけの二歩、三歩』

日本イーライリリーの執行役員でオンコロジー事業本部長の小嶋 毅彦は、次のように述べています。
「リリー・オンコロジー・オン・キャンバスは、この度12年目を迎えることができました。受賞者、審査員、そして応援頂いているすべての皆様に感謝を申し上げます。本コンテストの作品とエッセイは、“がんと共に生きる”姿勢や想いがこめられ、そこからは感動や勇気を与えてくれます。日本イーライリリーは、一人ひとりの患者さんや支援者の皆さんを繋げる“場”を今後も提供し、がんになっても自分らしく生きられる社会の実現に向け、これからも皆さんと歩んで参りたいと思います。」

第12回の受賞作品は、リリー・オンコロジー・オン・キャンバスのウェブサイト(https://www.locj.jp/)およびFacebook(https://www.facebook.com/locjChannel)に今年8月公開予定。

<第12回「リリー・オンコロジー・オン・キャンバス がんと生きる、わたしの物語。」 募集・審査について>
募集期間:
2021年8月17日~2022年1月31日

応募件数:
絵画部門 22件  写真部門 24件  絵手紙部門 27件

募集テーマ:
「がんと生きる、わたしの物語。」

審査:
【最優秀賞、優秀賞、入選】
絵画・写真・絵手紙作品ならびに制作背景を綴ったエッセイについて、作品の技術的・芸術的な評価よりも募集テーマを的確にとらえた作品であるかを重視し、以下5名の審査員により2022年4月15日に一部オンラインで審査が行われ、最優秀賞、優秀賞、入選の計12点を決定しました。

審査員:
岸本 葉子(エッセイスト)
堀 均(公益財団法人 日本対がん協会 がんサバイバークラブ)
西村 詠子(NPO法人 がんとむきあう会 理事長)
森 香保里(四国こどもとおとなの医療センター アートサイコセラピスト)
亀山 哲郎(フォトグラファー)  ※順不同/敬称略

賞:
最優秀賞(各部門1名)、優秀賞(各部門1名)、入選(若干名)

リリー・オンコロジー・オン・キャンバスについて
リリー・オンコロジー・オン・キャンバスは、がんと告知されたときの不安や、がんと共に生きる決意、がんの経験を通して変化した生き方などを作品とエッセイで表現し、多くの人と想いを分かち合っていただく「場」として、日本イーライリリーが2010年に創設しました。

日本イーライリリーについて
日本イーライリリー株式会社は、米国イーライリリー・アンド・カンパニーの日本法人です。人々がより長く、より健康で、充実した生活を実現できるよう、革新的な医薬品の開発・製造・輸入・販売を通じ、がん、糖尿病、筋骨格系疾患、中枢神経系疾患、自己免疫疾患、成長障害、疼痛などの領域で日本の医療に貢献しています。詳細はウェブサイトをご覧ください。https://www.lilly.co.jp

第12回「リリー・オンコロジー・オン・キャンバス がんと生きる、わたしの物語。」 受賞作品

【最優秀賞】 絵画部門
小原 絢子 (おはら あやこ) さん <兵庫県神戸市> 作品タイトル 『祈りの千羽鶴』

■エッセイ(抜粋)
目の中に、悪夢が見つかったのは、娘が1歳2ヶ月のころでした。家族で動物園に行った帰り娘のオムツを変えようと、「楽しかったね。」と声をかけ、ふと娘の目の奥に白くて血走った玉のようなものが、チラリと見えました。『なんだろう。』私は嫌な予感がし遅い時間にもかかわらず、眼科に飛び込みました。「娘さんの目には悪性の腫瘍があり、おそらく、網膜芽細胞腫(もうまくがさいぼうしゅ)というものです。このままだと失明し、命をおとすかもしれません。」と医師に告げられました。『元気な娘が癌!まさか…』
私は、恐怖と絶望で涙が止まりませんでした。自分を責めました『どうしてもっと早くに気がついてあげられなかったのだろう。毎日、一緒にいたのに…こんな母親でごめんね…。小さな体に抗がん剤を半年間打ちましたが、眼球摘出を告げられました。『かわいい娘の目がなくなる…』とても苦しい決断でしたが娘の命には代えられないという思いで手術に同意しました。残された目には、腫瘍が網膜の真ん中にあり、視力を取り戻すことはできません。娘は、今2歳になり、まだ治療中です。小さな体で毎月の手術に耐えています。私は娘の病気が分かるまで、網膜芽細胞腫(もうまくがさいぼうしゅ)という子供の癌がある事を全く知りませんでした。多くの人にこの病気の事を知って欲しいと思います。手遅れになる前に少しでも早く発見して、大切な命を守りたいと思っています。この絵は、癌で苦しんでいる子供達とその家族のために祈りを込めて描きました。

【最優秀賞】 写真部門
内田 輝美 (うちだ てるみ) さん <長崎県諫早市> 作品タイトル 『キャンサーギフト』

■エッセイ(抜粋)
『昨日のこと。まだ歩くのがぎこちない私の手を引いて歩く中1の息子。私が手を差し出すと、仕方なく、手をつないでくれました。微妙な空気、微妙な距離感。でも、母はなんだっていいんです。あなたと手をつなげたことが、とびきり素敵な出来事なんです。』これは2015年に投稿した記事です。私が子宮体ガンを患い、13時間に及ぶ手術を受け、ようやくベッドから起き上がれるようになった頃、見舞に来てくれた息子をエレベーターまで送っていく後ろ姿を、夫が携帯カメラで収めてくれました。キャンサーギフト。ガンは時に素敵なプレゼントをくれます。息子から受け取った優しさもその1つです。きっと息子は、この時心の苦しさを抱えていたはず。でも、病の母が差し出した手を振り払うことなく、受け入れてくれました。私はがむしゃらに「強さ」だけを求めて生きてきた。ガンに罹ったことで立ち止まり、周囲の風景を眺め、息子や家族、そして人の優しさに気付くことができました。あれから6年。いろいろなことがありました。ガンは寛解しましたが、心が苦しくなるようなことも続きました。今年20歳になる息子は、相変わらず優しさを持ち合わせたいい青年に育っています。

【最優秀賞】 絵手紙部門
上杉 美智子 (うえすぎ みちこ) さん <愛媛県今治市> 作品タイトル 『会いたかった』

■エッセイ(抜粋)
令和元年に胃ガンと診断され、抗ガン剤治療後、翌年手術し、もうすぐ二年が経ちます。若い頃から元気がとり得の私が、まさかこんな病気になるとは、夢にも思いませんでした。ふり返ると、家族には心配や迷惑をかけたなあと思います。病院の先生や看護師さんに親身にお世話していただき、また沢山の友人も気づかってくれ、「みなさん、ありがとう」と叫びたいくらい感謝の気持ちでいっぱいです。そんな中、昨年私が一番感動することがありました。私はガンの転移はないか、定期的にCT検査を受けています。その検査の所に私が退院してからずっと会いたいと思っていた看護師さんに、偶然会えたのです。「Iです、覚えていますか?」「エッ、Iさん、まあ、ずっと会いたかったよ~。」マスクをしていましたが、名札を見てすぐにわかりました。お互いに涙の再会で、言葉をなくしていました。彼女は、私が入院時からの担当で、急変でICUに入った時や、手術後等お世話になった人です。当日検査に私の名前を見つけて、待っていてくれたとの事でした。うれしかった。検査の度に、再発してないか、変わりはないか、内心気が気ではありませんが、まだまだがんばらにゃいかん。生きていたら、そして念じていたらかなえられることがあるんだと、彼女に会って、強く元気づけられました。

【優秀賞】 絵画部門
長田 智佐子(おさだ ちさこ) さん <神奈川県横浜市> 作品タイトル 『大切な花びら』

■エッセイ(抜粋)
昨年の秋、定期検査で癌の再発が見つかりました。気持ちがどこまでも凹み、気力も体重もどんどん落ちて行きました。幸いまだ再手術ができる段階。頑張りましょう!と言われれば、あとは私の気持ちを上げるだけ。そんな時、一番大きな力になったのは、友達や知人からの沢山の励ましのメッセージでした。それにどれだけ心が救われたことでしょう。お陰で顔を上げ、手術を受けることが出来ました。ところが、術後の検査でまた別の部位に異変が。「これも癌だったのね。」と医師の言葉に、思わず涙が眼にたまり心は悲しみで溢れかえりました。(どうして、こんな…)再び落ち込む私。すると今度は、もっと沢山の励ましのメッセージが届いたのです。その一言一言は、まるで優しい花びらのように、私の凍える心を溶かしていってくれたのです。それはそれは、素晴らしい力でした。お陰で、もう一度手術に臨むことが出来ました。私は、今のこんな自分を不幸だと思わないことにしました。ただ少し皆と違う体験をしているだけ。そう思わなければ、きっとこの大切な優しい花びらは枯れて色あせてしまうでしょうから。短期間の再発に、この先も色々起こるかもと言われ、これからもきっと癌と共に生きて行くのだろうと思います。でもこの体もまた私。正面を向き、顔を上げ、この大切な優しい花びらと共に、一つずつ乗り越えて行こうと思います。絶対枯らさないように…。

【優秀賞】 写真部門
秋澤 真希子(あきさわ まきこ) さん <埼玉県三郷市> 作品タイトル 『感じる温もり』

■エッセイ(抜粋)
30代前半、初めての妊娠が分かってすぐ、見つかったステージ4の口腔がん。なぜ私が、そしてなぜ今・・・そんな問いが堂々巡りし、不安におしつぶされそうな日々を過ごし、妊娠7カ月の時、全身麻酔で人生初めての大手術。
痛みと悲しみと喪失感で涙がでそうになる度に、「大丈夫!僕がいるから!」とお腹の中から力強い胎動で何度も何度も私を励ましてくれる愛おしい存在。私一人では耐えられなかったかもしれない。あなたが一緒に頑張ってくれるから乗り越えられる。
確かに感じるあなたの存在が、母になる自覚と幸せを感じさせてくれた。無事にあなたを出産でき、力一杯に抱きしめられ、手をしっかりと握り見つめ合って笑える幸せ、そんな当たり前のように思うことが奇跡だということを絶対に忘れない。
いつまであなたの成長を見守ってあげられるかわからないけれど、世界で一番たくさんの愛情を注いで、いつもの公園を毎日のように手を繋いでお散歩し、あなたと笑いながら楽しく過ごすこのありのままの日常をこれからも写真に残し続けたいと思う。

【優秀賞】 絵手紙部門
養田 公美 (ようだ ひろみ)さん <長野県千曲市> 作品タイトル 『たった一度だけの二歩、三歩』

■エッセイ(抜粋)
昨年、七十七歳を迎え、私は生前整理を始めました。これまで、もったいないを言い訳に山ほどため込んだ荷物を「えい、やぁ!」と処分し、子供たちが小学生の頃に描いた絵や作文も数枚だけを残して、ほとんどさよならしました。けれど、私がどうしても片付けられないのが、初孫が履いた青い靴。もう誰も履かないことはわかっているのだけれど・・・。初孫が生まれたのは、二十四年前のこと。待ちに待った孫の誕生に、私の心は喜びで溢れました。しかし、誕生から三か月、孫に小児がんが見つかったのです。宣告された余命は三か月。大きな喜びから一転、地獄へ突き落されたような気持ちになりました。それでも、孫は宣告された三か月を過ぎても命を繋ぎ続けてくれて、両手をパチパチと叩いたり、「あー、うー」とおしゃべりしたり、おいしそうに離乳食を食べたりと、成長する姿を見せてくれました。そして一歳を過ぎた頃には、抗がん剤治療により体力が奪われていたため、立ち上がることすらできないのではないかと思っていた私の目の前で、わずか二、三歩。たった一度のあんよでしたが、私にとっては夢のような姿でした。それから四か月後。孫はそのとき履いていた小さな靴を遺してこの世を去りました。私に夢のような時間を与えてくれた青い靴。宝物。

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