■調査概要
実施主体:コーン・フェリー、グロービスの共同企画
調査方法:インタビュー
調査対象:指名・報酬委員会*の事務局、担当役員 *任意機関を含む
調査期間:2022年9~11月
回答企業:約30社
回答企業一例(開示を許諾いただいた企業のみ掲載/五十音順、敬称略):
・ 旭化成
・ アサヒグループホールディングス
・ オムロン
・ 花王
・ カゴメ
・ キリンホールディングス
・ 島津製作所
・ セガサミーホールディングス
・ SOMPOホールディングス
・ 第一生命ホールディングス
・ 日立製作所
・ デンソー
・ 日本電気(NEC)
・ パナソニックホールディングス
・ 富士通
・ ベネッセホールディングス
・ 本田技研工業
・ 三井化学
・三菱UFJフィナンシャルグループ
■調査結果サマリーと考察
1.社外取締役は「量」から「質」へ
・指名委員会と報酬委員会の実効性において社外取締役が果たす役割の大きさが明確に認識されており、形式的に「量」を充足させることから「質」を確保する段階へと移行しつつある
・多くの企業で課題となっているグローバル化に関し、グローバルな経営経験を有する人材への需要が高まっているが、要件を満たす人材が日本には大幅に不足。しかしながら、海外人材を社外取締役として招聘する日本企業はほんの一部にとどまる
2.役員の指名は「段階3.0」へ
・「CEOの指名と後継者計画」に関しては一定の仕組みが整備されているが、CEO以外の執行役(員)の指名と後継者計画は未整備
・CDO(Chief Digital Officer)に象徴される一部の新設された役員ポストに限り、社外からの人材招聘が見られるものの、大半は社内登用が前提
・指名委員会の審議対象をCEO以外の執行役(員)に拡大する企業が見られる(「段階3.0」)
・社外取締役個々人のパフォーマンスを本格的に評価する事例は見られない
▼図表1 執行役(員)の指名・後継者計画の進化段階
3.役員報酬は従来型を踏襲
・報酬委員会を通じた役員報酬は、各社にそこまで大きな差異は認められない。社外からの執行役(員)の招聘がまだ一部に限られ、多くは社内登用かつ日本人が中心になっているため、社外やグローバルレベルの報酬水準や、職務基準の報酬体系を強く意識する必然性が薄い
・従業員においてはいわゆる「ジョブ型」が進むのに対し、役員層においては職務範囲が不明瞭になっている。役員の報酬水準を決定する際の基準を従来の役位(専務、常務等)とする企業が多くを占める(「段階1.0」)
・社外取締役の報酬は各社とも固定報酬を採用しており、その水準に関しては他社とのベンチマークを通じて妥当性を確認
▼図表2 執行役(員)報酬の進化段階
4.今後の論点
・人材市場が未成熟であること、経営執行の体制は企業ごとの文脈依存性が高く社内人材の組み合わせで柔軟に対応すべきという思想が根強く残っていること、などが執行役(員)の指名・後継者計画、また報酬に関する仕組みの進化を押し止めるボトルネックになっている
・「企業価値の継続的な向上」という視点から社外取締役と執行役(員)の役割を再定義し、適所適材の実現を推進するための論点は、次の2点に集約される
①役員育成を通じた人材市場の充実化
②経営執行体制の高度化
■調査責任者のコメント
「コーポレートガバナンス・コードの施行以降、日本企業のコーポレートガバナンスに対する意識が高まってきています。特に2021年の改定が、その流れを決定づけた感があります。ガバナンス体制の両輪を成す指名委員会、報酬委員会を見ると、多くの大企業で形式的な整備が急ピッチで進められてきました。コーポレートガバナンス報告書などの開示資料からも、そのことが窺えます。一方で、形式を超えてどこまで実のある仕組みが作られているのか、進んでいる企業ではどんな議論が行われているのかは、あまり公にはなっていません。今回の調査を通じて、日本企業においても役員の指名と報酬には進化のステージがあること、両委員会に関わる社外取締役の役割に変化が生じていることなど、非常に興味深い事実が見えてきました。この調査結果は、日本企業がこれからのコーポレートガバナンスを考える上で、示唆に富んだ内容になっているものと確信しています。」(コーン・フェリー・ジャパン株式会社 シニア クライアント パートナー/コンサルティング部門責任者 柴田 彰)
「今や企業は、売上・利益・株主価値の量的な成長に加え、質的成長、つまりESGの環境対応、人的資本経営、コーポレートガバナンスの3つを如何に経営に取り入れていくかが求められています。今回とりあげたコーポレートガバナンスは、多くの企業が本格導入し、開示報告書も年々洗練されつつあります。ただ、本質的な経営ガバナンスにまで踏み込んで取り組んでいる企業とそうでない企業との間に大きな差が生まれていることも感じます。今回の調査結果では、コーポレートガバナンスは企業が将来どのようなアジェンダを議論していくのか、そのためにどのような経営体制が求められるのか、その手段としてガバナンスはどうあるべきか、という本来の目的から制度設計を構築されている事例も見られました。本調査を通じて、各施策レベルの進化に加えて、本来の目的をどのように設定するか、という議論まで発展していくことを願っています。」(株式会社グロービス グロービス・コーポレート・エデュケーション マネジング・ディレクター 西 恵一郎)
■メディア向けブリーフィングと結果レポートの配布
以下の通り、オンラインでメディア向けブリーフィングを実施します。結果レポートは解釈の振れを防ぐために、当面はブリーフィングにご参加いただいた方にのみご共有致します。ご都合がつかない方には録画の手配や別途ご説明の機会を設定させていただきます。
メディア向けブリーフィングセッション
日時:2023年2月16日(木)13:00-14:00
スピーカー:
株式会社グロービス グロービス・コーポレート・エデュケーション マネジング・ディレクター 西 恵一郎
コーン・フェリー・ジャパン株式会社 シニア クライアント パートナー/コンサルティング部門責任者 柴田 彰
コーン・フェリー・ジャパン株式会社 シニア プリンシパル 上杉 利次
実施形式:Zoom Webinarを予定
お申込み: https://www.cvent.com/d/clqw2v
コーン・フェリーについて
コーン・フェリーは、米国ロサンゼルスに本社を置くグローバルな組織コンサルティングファームです。クライアントの組織設計、適材適所を支援し、社員の処遇・育成・動機付けといった課題についてもコンサルテーションを提供します。さらに、専門性を高めることによる人材のキャリアアップを支援します。
グロービスについて
グロービスは1992年の設立来、「経営に関するヒト・カネ・チエの生態系を創り、社会の創造と変革を行う」ことをビジョンに掲げ、各種事業展開を進めてきました。「ヒト」の面では、学校法人としての「グロービス経営大学院」ならびに、株式会社立のスクール「グロービス・エグゼクティブ・スクール」「グロービス・マネジメント・スクール」、企業内研修事業を行うグロービス・コーポレート・エデュケーションとeラーニングやオンラインクラスのほか定額制動画学習サービス「GLOBIS 学び放題」などを提供するグロービス・デジタル・プラットフォーム、「カネ」の面では、ベンチャー企業への投資・育成を行うベンチャー・キャピタル「グロービス・キャピタル・パートナーズ」、「チエ」の面では、出版事業ならびに情報発信サイト/アプリ「GLOBIS 知見録」により、これを推進しています。さらに社会に対する創造と変革を促進するため、一般社団法人G1によるカンファレンス運営、一般財団法人KIBOW による震災復興支援および社会的インパクト投資を展開しています。
グロービス:
学校法人 グロービス経営大学院
・日本語(東京、大阪、名古屋、仙台、福岡、オンライン)/英語(東京、オンライン)
株式会社 グロービス
・グロービス・エグゼクティブ・スクール
・グロービス・マネジメント・スクール
・企業内研修
・出版/電子出版
・「GLOBIS知見録」/「GLOBIS Insights」
・「GLOBIS 学び放題」/「GLOBIS Unlimited」
株式会社 グロービス・キャピタル・パートナーズ
顧彼思(上海)企業管理諮詢有限公司
GLOBIS ASIA CAMPUS PTE. LTD.
GLOBIS Thailand Co. Ltd.
GLOBIS USA, Inc.
GLOBIS Europe BV
その他の活動:
・一般社団法人G1
・一般財団法人KIBOW
・株式会社茨城ロボッツ・スポーツエンターテインメント
メディアの方からの本件についてのお問い合わせ先:
コーン・フェリー・ジャパン株式会社 マーケティング マネジャー 松田清史
Tel: 070 3193 6371(携帯)/E-mail: kiyofumi.matsuda@kornferry.com
株式会社グロービス 広報室 担当:田村菜津紀、土橋涼
E-MAIL: pr-info@globis.com