保健ケア施設の半数、基本的な衛生環境を欠く~約38億5,000万人が感染症のリスクに【プレスリリース】

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保健センターの外で手を洗う親子。(カメルーン、2022年6月撮影)©   UNICEF_ UN0668635_Dejongh保健センターの外で手を洗う親子。(カメルーン、2022年6月撮影)© UNICEF_ UN0668635_Dejongh

【2022年8月30日 ジュネーブ・ニューヨーク発】

ユニセフ(国連児童基金)と世界保健機関(WHO)の共同モニタリングプログラム(JMP)が発表した最新報告書によると、世界の保健ケア施設の半数が、患者が治療ケアを受ける場所や施設内のトイレにおいて、水と石けんまたはアルコールベースの手指消毒液を用いた基本的な衛生サービスがないことが明らかになりました。このような施設を利用する人は約38億5,000万人にのぼり、感染症の高いリスクに晒されています。さらにそのうち6億8,800万人は、基本的な衛生サービスが全くない施設でケアを受けています。

「保健ケアを提供する現場では、衛生設備と衛生習慣は欠かすことができません。この状況の改善は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックからの回復、予防、準備のために不可欠です。安全な水、清潔なトイレ、安全に管理された医療廃棄物といった基本的な対策への投資を増やさなければ、保健ケア施設の衛生状態を確保することはできません」と、WHO環境・気候変動・保健局長のマリア・ネイラ博士は述べています。「私は加盟国に対し、保健ケア施設における水と衛生(WASH)サービスを強化するという、2019年世界保健総会の公約を実現するための取り組みを強化し、これらの取り組みをモニタリングすることを働きかけます」

JMP報告書『保健ケア施設における水と衛生、感染予防と管理(2000年~2021年)(原題:Progress on WASH in health care facilities 2000–2021: special focus on WASH and infection prevention and control)』は、かつてないほど多くの国が病院や保健センターなどの保健ケア施設における水と衛生施策の重要な役割を報告する中、トイレだけでなく、ポイント・オブ・ケア(患者が治療ケアを受ける場所)での衛生サービスへのアクセスを評価し、衛生サービスに関するグローバルな基準値を初めて確立しました。衛生習慣に関しては、40カ国(世界人口の35%に相当)のデータが入手可能になりました。2020年時点では21カ国、2019年は14カ国でした。
 

グジャラート州にあるクリニックで、石けんを使って手を洗うスタッフ。(インド、2022年5月撮影) © UNICEF_UN0647775_Jariwalaグジャラート州にあるクリニックで、石けんを使って手を洗うスタッフ。(インド、2022年5月撮影) © UNICEF_UN0647775_Jariwala

この新たに確立された世界的な推計値が明らかにしたものは、保健ケア施設の衛生状態に関する、より明確かつ憂慮すべき状況です。保健ケア施設の68%はポイント・オブ・ケアに衛生設備を備え、65%はトイレに水と石けんを備えた手洗い設備を備えていたものの、両方を備えているのは51%のみで、基本的衛生サービスの基準を満たしていません。さらに、世界全体の保健ケア施設の11分の1(9%)は、どちらも備えていません。

「医療従事者が衛生サービスを利用できなければ、患者は保健ケア施設を利用することができません」と、ユニセフの水と衛生・気候・環境・エネルギー・災害リスク軽減(CEED)担当ディレクターのケリー・アン・ネイラーは述べています。「安全な水や基本的な衛生サービスのない病院や診療所は、妊産婦や新生児、子どもたちにとって死の落とし穴となる可能性があります」と述べています。毎年、約67万人の新生児が敗血症で命を落としています。こうした死は予防可能であることから、なおさら悲劇なのです。 

報告書は、汚染された手や環境が、保健ケア施設における病原体の伝播や抗菌剤耐性の拡大に大きな役割を果たすことを指摘しています。水と石けんを備えた手洗い設備の確保や、施設の環境を清潔に保つための介入は、感染予防とコントロールの基礎であり、特に安全な出産など、質の高いケアを提供するために極めて重要です。

施設における水と衛生サービスの普及率は、地域や所得階層によってまだばらつきがあります。

  • サハラ以南のアフリカの保健ケア施設では、衛生サービスにおいて遅れをとっています。地域全体の4分の3(73%)の保健ケア施設で、ポイント・オブ・ケアにアルコールベースの手指消毒液または水と石けんを備えていますが、トイレに水と石けんを備えた手洗い施設は3分の1(37%)に過ぎません。また、病院の87%がポイント・オブ・ケアに手指衛生設備を備えているのに対し、その他の保健ケア施設では68%となっています。
  • 後発開発途上国では、水質の安全が保護された水源が敷地内にある保健ケア施設の割合は、わずか53%です。比較として、世界全体では78%で、病院は(88%)は小規模な保健ケア施設(77%)よりも良好です。東・南東アジア地域では90%にのぼっています。一方で、世界的に見て、保健ケア施設に給水サービスがない割合は、都市部では約3%、農村部では約11%にのぼっています。
  • 入手可能なデータがある国々では、保健ケア施設の10分の1に、衛生設備が備わっていません。衛生設備がない保健ケア施設の割合は、ラテンアメリカ・カリブ海諸国と東・南東アジアでは3%、サハラ以南のアフリカでは22%でした。後発開発途上国では、保健ケア施設に基本的な衛生設備が設置されている割合は、わずか5分の1(21%)でした。
  • さらに、多くの保健ケア施設では、基本的な環境の清浄や医療廃棄物の安全な分別・廃棄が行われていないことが明らかになりました。

本JMP報告書は、スウェーデンのストックホルムで開催されている「世界水週間」会議で発表されます。8月23日から9月1日まで開催されるこの年次総会では、食糧安全保障、健康、農業、技術、環境、安全保障など、人類最大の課題に取り組むための新しい方法が検討されます。

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