ウクライナ紛争の拡大・激化から半年:赤十字運動が報告書を発行

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ウクライナ紛争の拡大・激化から半年、多くの人々が、大きな犠牲を払わされてきました。国際赤十字・赤新月運動(赤十字運動)は、この節目に、この半年間行ってきた活動内容をまとめた、『Six Months of Armed Conflict in Ukraine(ウクライナ紛争の拡大・激化から半年)』という47ページの報告書を発行しました。以下に、その概要を掲載します。

6カ月にわたる想像を絶する苦悩

ウクライナ紛争の拡大・激化から、半年が経ちました。この間、途方もない苦しみや死、破壊がもたらされ、人的被害はいまだ拡大の一途をたどっています。人々はすべてを捨てて、命からがら避難することを余儀なくされ、数千もの民間人が死傷し、多くの人がトラウマを抱え、緊急の保護を必要としています。避難生活を送っている人の多くは、女性や子ども、高齢者です。学校や医療施設、家屋などのインフラも破壊され、損傷を受けました。

新天地でやり直すか、不確実さや危険を覚悟で故郷に戻るか―苦しい選択を迫られる人々

1,300万を超える人々が故郷から避難することを余儀なくされました。その一方で、避難する決心がつかず、もしくは避難することが叶わず、紛争下にある地域でいまだ暮らしている人々も数多くいます。いずれの場合も人々は、心へのダメージや収入減、家族の離散など、紛争によるさまざまな影響を受けています。一方で、想像を絶する苦しみの中で、人々が最も支援を必要としているときに、人類愛の力が発揮されるのを私たちは目の当たりにしてきました。世界中の多くの国々が、避難してきた人々を温かく迎え入れたのです。今回の危機に対する国際社会の対応により、政治的な意思さえあれば、武力紛争やその他危機により避難を余儀なくされた人々にどれほどの支援ができるかが、まさに示されました。

各国赤十字・赤新月社がコミュニティーと手を携え、数百万人を支援

この半年にわたり、赤十字運動は、必要不可欠な人道援助物資の配付や、心のケアを含む医療の提供、現金・バウチャーの支給、水・衛生サービスの提供、武力紛争下にある地域からの自主避難の支援などを通して、数百万もの人々に支援の手を差し伸べてきました。

私たち赤十字運動は、長年にわたり、ウクライナ現地で活動を続けてきました。ウクライナ赤十字社は、100年以上にわたって現地コミュニティーで活動してきたことに加え、2014年からは、ICRCとともに戦闘下で暮らす人々を現地で支援してきました。また、国際赤十字・赤新月社連盟(連盟)の他、ウクライナおよび周辺地域の各国赤十字・赤新月社も、避難民の支援を行ってきました。

2022年2月以降、ウクライナと国境を接するベラルーシやハンガリー、モルドバ、ポーランド、ルーマニア、ロシア、スロバキアなどの国々の他、ヨーロッパの大部分の国々、さらにはその他の国々でも、数千人に上る赤十字運動のボランティアや職員が緊急動員されてきました。そして、現地にある拠点や知識、経験、当該国の赤十字・赤新月社の人的資源を駆使して、いち早く支援を実施しました。避難民の支援や、医療の提供、温かい食事の提供、人々の話の傾聴をはじめ、何が求められようと、赤十字運動は、支援を必要とする人々に寄り添い続けてきました。また、これからも、こうした活動を続けて行きます。

連盟は、世界各国の赤十字社、赤新月社からの援助を取りまとめ、ウクライナおよび近隣諸国で、ここ最近で最大規模の支援に着手しました。一方で、ICRCは支援を大幅に拡大し、現在、同国内10カ所に合計700人余りの職員を動員しています。こうした連盟やICRCの他、48の各国赤十字・赤新月社が、今回の武力紛争によりもたらされた人道危機に、まさに世界規模で対応しています。

赤十字運動による、半年間の活動内容のサマリーは、以下の通り。

ウクライナ紛争の拡大・激化から半年の間にもたらされた人道上の影響

  • 660万人以上が、新たに国内避難民となった
  • 660万人以上が、欧州各国で難民として登録された
  • 避難民のうち9割が、女性や子ども、高齢者、障がい者
  • 1,770万人以上が、人道支援を必要としている

赤十字運動の支援体制

  • 48以上の各国赤十字社、赤新月社が、支援に従事
  • 10万人以上が、ボランティアとして活動に参加
  • 770の人道の専門家を緊急派遣

主要な支援内容:

  1. 500万人に基本的な援助を提供
  2. 800万人が清潔な水にアクセスできるように支援
  3. 718,000人に医療を提供
  4. 6,360万スイスフラン(日本円でおよそ90.1億円)の経済援助を実施

分野別の詳細な活動内容は、以下の通り。

医療ケア

  • 800万人が清潔な水にアクセスできるよう支援
  • 718,000人に医療を提供
  • 368,000人に心のケアを提供
  • 984,000人に衛生用品を配付

具体的な活動内容:

  1. 応急手当を実施、および訓練を提供
  2. 移動診療所を開設し、医療を支援
  3. 物資や衣料品を提供し、既存の医療施設のストレスを緩和
  4. 健康な生活習慣を促進、および新型コロナウイルス感染症などの伝染病を予防・管理
  5. 心のケアを提供
  6. 清潔な水と衛生設備へのアクセスを確保

人々の緊急ニーズへの対応

  • 6,360万スイスフラン(日本円でおよそ90.1億円)の経済援助を実施
  • 626,000人に経済自立支援を実施
  • 500万人に必要不可欠な援助を提供

具体的な活動内容:
紛争の影響を受けた人々の緊急ニーズと長期的なニーズの両方に資することを目的とし、総合的な人道支援を実施しています。

  1. 多目的に使える現金やバウチャーを支給
  2. 適切な住まいの確保を支援
  3. 避難民を受け入れている世帯に、受け入れに伴う金銭的な負担を補うための現金を支給
  4. 食料やキッチン用品一式、衛生用品、衣類などの基本的な救援物資を提供

保護
保護活動を通じて、赤十字運動は、暴力や差別、排除などの問題が発生することを未然に防ぎ、または対処することを目指します。また、人々が尊重され、その権利が保証されるようにします。

  • 66,000人に保護やジェンダー、インクルージョンに関するプログラムを提供
  • 中央追跡調査局とファミリー・リンク・ネットワークを通じて、13,000人を追跡調査し、保護
  • 中央追跡調査局とファミリー・リンク・ネットワークを通じて、2,000人を捜索

具体的な活動内容:

  1. 被害を受けた人のニーズとリスクの評価
  2. 赤十字運動の職員に、保護やジェンダー、インクルージョンの原則、および性的搾取や虐待の防止に関する研修を提供
  3. 被害を受けた人々に、支援の受け方とフィードバックの方法を啓発
  4. 捕虜や民間人抑留者が拘束されている場所を訪問した上で、その処遇や拘束状況を評価し、家族に伝える
  5. 離ればなれになった家族の再会支援や、行方不明者の情報の提供
  6. 地雷・不発弾の除去によりウクライナ現地の安全性を向上、また、地雷の危険性に関する情報を共有し、啓発
  7. 中立かつ公平な立場から、紛争当事者との合意に基づき、人道的な条件の下、紛争地域からの安全な自主避難を支援

拡大する人道ニーズ

今回の報告書は、ウクライナ紛争の影響を受けた人々を支援すべく赤十字運動が行ってきた、膨大な規模の支援を振り返った上で、今後数週間から数カ月の間に増大するであろう膨大なニーズを明らかにしたものです。

武力紛争が続く中、冬が近づくにつれ、より多くの人々が避難を余儀なくされる可能性や、最も基本的なニーズさえ満たすことができない人々が出てくる可能性があります。また、たとえ明日紛争が終結したとしても、人々やコミュニティー、都市、環境が受けた被害から回復するには幾年もかかることでしょう。

今後数カ月の間に、寒い季節が訪れるにも関わらず、ホスト・コミュニティーへの重圧はやむことがなく、心のケアに対するニーズは高まる一方で、状況はますます複雑化することが予想されています。各国政府や人道支援組織には、膨大なニーズがあるにも関わらず、終わりが見えない状況を見据え、この壊滅的な危機に長期的に対応すべく備えることが求められています。

報告書全文は、以下(英語版のみ):
『Six Months of Armed Conflict in Ukraine – RCRC Movement Report』
https://www.icrc.org/en/document/six-months-armed-conflict-ukraine-red-cross-red-crescent-movement-report

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