ハイチ地震から1年:25万人がいまだ学校環境整わず~深刻な資金不足で遅れも【プレスリリース】

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ユニセフの仮設テントの中に机を運ぶ子どもたち。(ハイチ、2022年2月撮影) © UNICEF_UN0590979_Diaz Mercadoユニセフの仮設テントの中に机を運ぶ子どもたち。(ハイチ、2022年2月撮影) © UNICEF_UN0590979_Diaz Mercado

【2022年8月16日 レ・カイ(ハイチ)発】

ハイチ南西部を襲ったマグニチュード7.2の大地震から1年、新学期の開始まであと3週間となった現在も、25万人以上の子どもたちに適切な学校環境が整っていないとユニセフ(国連児童基金)は警鐘を鳴らしました。

不安定な情勢と資金不足により遅れている復興作業は、現在も進行中であり、完了までには何年もかかるとみられています。地震で倒壊・損壊した1,250校のうち、大半はまだ再建されていない状態です。
 

地震によって壊れた学校の再建が終わり、完成した新しい学校。(ハイチ、2022年6月撮影) © UNICEF_UN0649578_Joseph地震によって壊れた学校の再建が終わり、完成した新しい学校。(ハイチ、2022年6月撮影) © UNICEF_UN0649578_Joseph

「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック、マグニチュード7.2の地震、そして広がる情勢不安と貧困という一連の出来事によって心に傷を負った子どもたちにとって、学校は単なる学習の場だけではなく、安心して身を寄せられる場所です」と、ユニセフ・ハイチ事務所代表のブルーノ・マ-スは述べました。「新学年が始まっても十分な教育・医療サービスを受けることができず、安全な水を飲むことも、可能性を最大限に発揮して成長・発達するための公正な機会を得ることもできない子どもたちがあまりにもたくさんいます」。

2021年8月14日、南県、ニップ県、グランダンス県で大規模な地震が発生し、2,200人が死亡、12,200人が負傷しました。1,250の学校、97の保健・医療施設、55の水道システムが損壊し、34万人以上の子どもたちが適切な教育環境を失い、80万人が保健・医療、飲料水、衛生サービスを利用できなくなりました。
 

クリニックで、栄養不良と診断された生後9カ月の女の子。母親がいなく、祖母が子育てをしている。(ハイチ、2022年2月撮影) © UNICEF_UN0589507_Rouzierクリニックで、栄養不良と診断された生後9カ月の女の子。母親がいなく、祖母が子育てをしている。(ハイチ、2022年2月撮影) © UNICEF_UN0589507_Rouzier

ユニセフとパートナーは、被害を受けた女性や子どもたちに基本的なサービスを提供するために活動していますが、資源の不足やギャングによる暴力によって、活動が遅れたり妨げられたりすることがしばしばあります。

厳しい環境と限られた資金の中で、ユニセフはこれまでに234の教室を再建または修復し、7万4,000人の生徒たちに学校用キットを提供しました。さらに、被災した学校には、約100張の高性能テントが設置されました。グランダンス県、ニップ件、南県の3万1,000人以上の生徒が、補習授業で勉強に追いつくこともできました。被災した22の飲料水システムを修理し、被災者の約半数に当たる44万人が水を利用できるようになりました。また12万1,000人を対象に、石けん、家庭用水処理用品、生理用品を含む衛生キットを2万3,000セット配布しました。

この1年間で、2万3,700人以上の子どもたちが、ユニセフ が支援する75カ所の「子どもにやさしい空間」において、心理社会的活動やレクリエーション活動に参加しました。また、少なくともジェンダーの基づく暴力の被害を受けた1,100人が心理的・医療的ケアを受け、保護者と離ればなれになったり同伴者のいない子ども18人が、代替ケア・サービスを受け、 家族と再会することができました。
 

保健センターで、ジフテリアの予防接種を受ける女の子。(ハイチ、2022年3月撮影) © UNICEF_UN0630461_Seck保健センターで、ジフテリアの予防接種を受ける女の子。(ハイチ、2022年3月撮影) © UNICEF_UN0630461_Seck

ユニセフは、移動式診療所を通じて、1万5,800人の子どもを含む5万2,000人に総合的な保健・栄養サービスを提供してきました。加えて、4,800人の5歳未満の子どもたちが、中度または重度の急性栄養不良の治療を受けています。さらに1万2,300人の人々に基本的な保健サービスを提供し、1万5,000人の消耗症に苦しむ子どもたちに質の高いケアを提供するための取り組みが進められています。ユニセフは、保健・栄養面での支援を加速させるための追加資金を緊急に必要としています。これまでのところ、COVID-19の予防接種を受けたのは人口のわずか1.4%で、国の目標をはるかに下回っています。

また、地震で大きな被害を受けた最も困難な立場にある人々を支援するため、ユニセフは困窮する家庭への追加的収入となる多目的現金給付支援を行っており、今年は約1,000世帯に達しています。これらの資金は、家族が基本的なサービスを利用できるようにするためのものです。

ユニセフはまた、性的搾取と虐待からの保護(PSEA)に関する1万枚のポスターと6万部のパンフレットを作成し、被災者に配布したキットに同封しました。3,000人以上がPSEAと利用可能な報告メカニズムに関する情報を受け取り、60人のコミュニティ・リーダーと30人の指導者が、ニップ県、グランダンス県、南県のそれぞれの地域で情報を提供するための訓練を受けました。10のラジオ局が6カ月間PSEAのスポットや番組を放送する契約を結び、450人のU-レポーターがPSEAに関する研修を受け、自身のコミュニティの中で情報を伝えています。

2021年末、ユニセフは2022年の人道支援計画として、ハイチの52万人の子どもを含む95万人に支援するために必要な資金として、9,700万米ドルを国際社会に求めました。しかしユニセフはこれまでに、ハイチの子どもたちの基本的な保健、教育、栄養、保護のニーズを満たすために必要な資金の30%しか確保できていません。6,460万米ドルの緊急資金がなければ、ユニセフはハイチで最も弱い立場にある人々を支援することができないのです。

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■ ユニセフについて
ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念を様々な形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。 https://www.unicef.or.jp/
※ ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する33の国と地域を含みます
※ ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています

■ 日本ユニセフ協会について
公益財団法人 日本ユニセフ協会は、先進工業国33の国と地域にあるユニセフ国内委員会のひとつで、日本国内において民間として唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、政策提言(アドボカシー)を担っています。 https://www.unicef.or.jp/

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