ModBindはモジュラスのチームにより開発され、現在では複数の創薬研究プロジェクトで活用されています。モジュラス社内での検証実験によればModBind の予測結果と実験データとの間で高い相関が示されています。具体的には複数の創薬標的の治療薬候補化合物に対して、相関係数R2=0.67、平均誤差0.51(対数値)を得ております。ModBindは他のシミュレーション技術と違って、多様性の高い構造を有する化合物群に対して高精度に薬効の予測が可能であることから、本技術は、中規模スループットでのバーチャルスクリーニング・化合物フィルタリング、及び臨床候補化合物の発見に向けたリード化合物の最適化などでの利用に適していると考えられます。
モジュラスは富士通との共同研究を通じて、本アルゴリズムのさらなる性能最適化、スケールアップ、様々な計算機環境への適用などを通して、大規模化合物ライブラリに対するハイスループット・バーチャル・スクリーニングの実現を目指します。そして本アルゴリズムと新規化合物案を大量に発生する計算技術と組み合わせることによりリード化合物の最適化を更に加速できます。富士通の研究チームは、すでに同社のハイパフォーマンス・コンピューティング(HPC)技術を、ModBindを構成するMDシミュレーションに適用して高速化しています。さらに多様な計算環境で実行可能とし、モジュラスの示す本アルゴリズムについての検証データの再現性を既に取得しています。
【モジュラス株式会社 代表取締役CEO 木村 俊のコメント】
「この度は富士通の世界トップクラスのHPC研究チームと協働できることに加え、弊社の新たなシミュレーション技術ModBindを発表できることを大変嬉しく、また名誉に思います。弊社ではこの新しい技術を活用することで社内研究パイプラインを加速することに加え、世界中の患者さんとそのご家族が必要としている新薬をより早く届けることが可能になると期待しております。」
【富士通株式会社 研究本部 コンピューティング研究所 イノベーティブコンピューティングプロジェクト プロジェクトディレクター 富田 安基のコメント】
「コンピュータシミュレーションを活用したIT創薬は迅速な新薬開発のために高い期待が寄せられていますが、その計算時間や精度は十分ではありません。本共同研究で、モジュラスの創薬に関する深い知見と、富士通のHPC技術を融合させることにより、低分子創薬においてコンピューティングパワーを最大化し創薬プロセスのイノベーションへの貢献を目指します」
本研究の一部は、「富岳」産業試行課題(課題番号:hp210322)を通じて、国立研究開発法人理化学研究所が運用するスーパーコンピュータ「富岳」の計算資源の提供を受け、実施しました。
*1. スーパーコンピュータ「富岳」:スーパーコンピュータ「京」の後継機として理化学研究所に設置された計算機。令和2年6月から令和3 年11月にかけてスパコンランキング4部門で1位を4期連続で獲得するなど、世界トップクラスの性能を持つ。令和3年3月9日に本格運用開始。
*2. AI橋渡しクラウド(AI Bridging Cloud Infrastructure、ABCI):産業技術総合研究所に人工知能技術開発のための大規模高速計算基盤として設置されたクラウド型計算システム。平成30年8月に本格運用開始。平成30年11月に世界のスパコンの省エネ性能ランキングGreen500 Listの4位を獲得するなど、世界トップクラスの省電力性能を持つ。令和2年11月には機械学習処理ベンチマークMLPerf HPCで世界最速を達成。
【本件のお問い合わせ先】
モジュラス株式会社 経営管理部 e-mail:info@modulusdiscovery.com