人手不足割合は正社員で51.4%、7月としては過去最高 非正社員でも5年ぶりに3割超
2023年7月時点における全業種の従業員の過不足状況を尋ねたところ、正社員が「不足」と感じている企業は51.4%だった。前年同月比で3.7ポイント増加しており、7月としてはこれまで最も高かった2018年(50.9%)を上回り、過去最高を記録した。
また、非正社員では30.5%で、7月としては5年ぶりに3割超の水準に上昇した。
<正社員・業種別>「情報サービス」が74.0%でトップ、「旅館・ホテル」も7割超で高水準
正社員の人手不足割合を業種別にみると、「情報サービス」が74.0%で最も高く、「旅館・ホテル」が72.6%で続き、上記2業種で7割を上回る結果となった。
業種別トップの「情報サービス」は、9カ月連続で7割超となり人手不足が深刻だ。デジタル人材の不足が叫ばれるなか、「新型コロナにより、コーポレートサイトが商売において重要視されるという認識が広まった」(大阪府、ソフト受託開発)や「インボイス制度や電帳法などの法改正にともない、システム改修案件が増加している」(東京都、ソフト受託開発)との声にあるように、システム関連需要が高まっていることで好況が続いている。そうしたなか、「案件の引き合いは多くあるが、スキルマッチした要員が不足している」(新潟県、ソフト受託開発)のような、システムエンジニアなどの高度な技術を有する人材の確保ができていないという意見が多くみられる。
業種別で2番目に高い「旅館・ホテル」では、「新型コロナが5類に移行されてから、旅行者の動きが活発になっていると感じる」(旅館、青森県)、「政府の観光促進支援策がほぼ終了して、反動による冷え込みを感じている一方で、週末・連休・夏休みなどの動きは底堅い」(旅館、茨城県)との声にあるように、大きな需要の落ち込みはないようだ。今後は本格的な“夏の行楽シーズン”を迎えるなか、より人手不足が顕著となりそうだ。
その他、「建設」(68.3%)や「メンテナンス・警備・検査」(68.2%)など6業種が6割台となった。また、正社員の人手不足の割合は上位10業種すべてで前年同月を上回る結果となった。
<非正社員・業種別> 「飲食店」が83.5%で群を抜いた高水準
非正社員の人手不足割合を業種別にみると、「飲食店」が83.5%で唯一8割を上回った。「飲食店」は雇用者の7割以上が非正社員という特徴があるが、コロナ禍で離職した非正社員も多く、新型コロナ拡大以前の就業者数まで戻っていない。新規求人数は増加しているものの、深刻な人手不足は改善できていない状況といえる。
次いで、正社員で2番目に高かった「旅館・ホテル」(68.1%)は、非正社員においても2番目の高水準となった。また、引き合いが強いものの派遣スタッフの不足が続いている「人材派遣・紹介」(65.8%)も含め、3業種が6割超となった。その他、5業種が5割台となった。
今後の見通し: 高止まりの人手不足割合 夏休みシーズンで高まる需要への対応に課題も多く
今回の調査では、人手不足割合は正社員が51.4%で7月として過去最高、非正社員では5年ぶりに3割超となった。アフターコロナにともない人流が戻り国内景気は回復傾向にあるなか、人手不足割合は高止まりしている。
正社員で業種別トップとなった「情報サービス」は、リスキリングなどによる人材育成も中長期的に計画して進めているものの、高度なスキルを有する即戦力を求める声が多く、人手不足の解消には相応の時間がかかりそうだ。また、「旅館・ホテル」と「飲食店」は2022年以降の急激な上昇からは一服感があるものの、依然として高水準で業種別でも上位となり、引き続き深刻な人手不足となっている。両業種とも新型コロナの感染拡大によって営業時間の短縮や休業を余儀なくされ、従業員数が戻り切らない状態で需要が大きく回復し、人手不足感が急激に高まった状況が今なお続いている。業務の効率化を目的とした設備投資も増えているようだが、一部にとどまり業界全体としては高まる需要に追いつかないという。
いよいよ本格的な夏の行楽シーズンを迎えるなかで、さらなる人手不足割合の上昇も予想され、既に時間外労働の増加も目立ってきている。人手不足感は多方面で、高い水準で推移することが考えられ、その解消にはクリアすべき課題が多そうだ。