電力取引分科会 サブグループBでは、電力の需要家が取得した再生可能エネルギーや電力取引データを、企業の事業や資金調達などのファイナンスサービスへ活用するユースケースの検討を進めています。2022年3月には電力取引実績・電力購入先情報の取得、スコアリング、可視化の手法を活用したユースケースについて机上にて協同実証を行いました。今回は、エナリスが運用を行う電力取引プラットフォーム(ブロックチェーン)での再生可能エネルギーの取引で発生する決済において、デジタル通貨DCJPYを活用するとともに、デジタル通貨DCJPYでの貸付(サスティナビリティ・リンク・ローン:以下SLL)を行うファイナンスサービスの実証実験を行います。デジタル通貨DCJPYを活用してのファイナンスサービスの実証実験は、今回が初めてとなります。
1.背景と目的
昨今の世界的な脱炭素化に対する取り組みが加速する中、日本においても再生可能エネルギー電源の導入が求められており、再生可能エネルギー取引データ(電力・環境価値データ)の活用が進んでいます。しかしながら、再生可能エネルギー発電所の増加に伴い環境に悪影響を与える粗悪な発電所も増えており、このような状況において需要家は、真に環境に配慮された発電所であることを証明する「第三者による再生可能エネルギー電源の環境配慮証明」を取得している発電所から調達していることが重要になると考えられます。
このような背景を踏まえ、デジタル通貨フォーラム電力取引分科会 サブグループBでは、クリーンエネルギーの利用実績等の増加がファイナンスサービス優遇の条件となる「再生可能エネルギーの取引データおよび発電所の第三者スコアリングレポートを活用したファイナンス実証」を実施することといたしました。クリーンエネルギーの取引データをキーとしたファイナンスサービスで企業の脱炭素を促進するだけでなく、企業自らの主体的な脱炭素行動を創り出す循環を生み出すことが可能になることを期待し、本実証実験にて将来的な可能性を模索します。
2.実証実験の概要
今回の実証実験では、エナリスが運用を行う電力取引プラットフォーム(ブロックチェーン)を用いた電力取引で発生する決済及びSLLの実行等をデジタル通貨DCJPYで行います。本実証実験には、比較的柔軟な目標設定が可能なSLLのサステナビリティ目標(以下:SPTs)にクリーンエネルギーの利用実績等が設定されていることを条件としたサービスが適していると考え、SPTsおよび金利テーブルを電力取引プラットフォーム(ブロックチェーン)に設定し、金融機関のSLL実行等をデジタル通貨DCJPYで行います。
■実施日:2023年2月24日(金)
■実施内容
① クリーンエネルギーの利用実績取得とデジタル通貨による支払いの実証
② 需要家がSLL契約のためSPTsを設定し、SPTsおよび金利テーブルを電力取引プラットフォームに持たせ、金融機関のSLL実行をデジタル通貨で行う実証
③ 需要家が融資を受けた資金使途制限の実証
④ 再生可能エネルギー利用率・GHG(Green House Gas)排出量削減率等のSPTs評価結果に基づき金利徴収を行う実証
⑤ 実証実験に非中央集権型自律分散組織(DAO)の仕組みの活用可能性を検討し、可能性がある場合は実装し課題を検証※金融機関側の融資資金の調達、DAOの仕組み活用については机上検証
■電力取引データ等を活用したデジタル通貨DCJPYによるファイナンスサービスイメージ
■実証実験に参加する企業(電力取引分科会 サブグループB)
株式会社エナリス(幹事)/東京都/株式会社三井住友銀行/株式会社ディーカレットDCP(事務局)
【会社概要】
企業名 :株式会社ディーカレットDCP
URL :https://www.decurret-dcp.com
代表者 :代表取締役会長兼社長 村林 聡
事業内容:デジタル通貨事業
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