東京大学協創プラットフォーム開発株式会社(本社:東京都文京区本郷、代表取締役社長:植田 浩輔、以下「東大IPC」)が運営するオープンイノベーション推進1号投資事業有限責任組合(以下「AOI1号ファンド」)は、自動交渉AIを活用した無人航空機(以下、ドローン)運航管理システム(UTM*1)を開発するIntent Exchange株式会社(本社:東京都目黒区、代表取締役:中台慎二、以下「Intent Exchange」)に対して、7,500万円の出資を行うことを決定しました。
また、今回のIntent Exchangeへの投資は、DRONE FUND株式会社(東京都渋谷区 代表取締役:千葉功太郎、以下「DRONE FUND」)、日本電気株式会社(本社:東京都港区、代表取締役:森田隆之、以下「NEC」)との共同出資となります。
2025年頃に導入予定の認定UTMプロバイダによる運航管理
空撮や農薬散布、測量、点検などの分野でドローンの活用が広がっており、2022年7月末迄には、約29万台のドローンが国に登録されました(*2)。改正航空法の施行にともない、2022年12月5日からは「有人地帯での目視外飛行(レベル4)」が可能となり、物流での利用など、さらなる実社会での活用が見込まれています。
しかしながら、ドローンの運航の際には、他のドローンや航空機との衝突などが課題とされており、この解決のためにUTMの開発と導入が国際的に進んでいます。UTMを利用することで、ドローン運航者は、他のドローンの飛行計画やリアルタイムな位置情報の把握、計画調整などが可能となります。日本でも、航空局が認めたUTMプロバイダをドローン運航者が利用するならば、リスクの高い飛行を行うことを可能とする方針(*2)を打ち出しており、その実現時期は2025年頃と設定されています。
国際的に導入が進みつつあるUTMにおいては、国が集中的にドローンを管理する構造から、複数の民間UTMプロバイダが分散的に相互接続する、分散型のアーキテクチャに移行しつつあり、標準化団体ASTM Internationalでも分散型で標準化されています。2022年に日本で導入された無人航空機のリモートIDもこのASTMの規格に基づいており、UTMのデファクトスタンダードになると見込まれています。
この分散型のアーキテクチャにおいて重要となるのが、運航者が他の運航者との調整を支援する機能です。現在、運航者間で経路が重複した際には、運航者間で電話やメールなどでアナログ的に運航経路やタイミングを調整をしていますが、この調整がデジタルによって自動的に行われます。これを実現するのが、Intent Exchangeの自動交渉AIです。
NECと産総研で共同研究してきた自動交渉AI技術を事業化、カーブアウト
Intent Exchangeは、モビリティとサプライチェーンの調整DXを実現するべく、その第一歩として、国内において分散型UTMの研究及び、その実現に向けた経路設計・調整ソリューションを提供しています。NECと国立研究開発法人産業技術総合研究所で研究してきた自動交渉AIを活用したドローンの分散型運航管理システム事業で、BIRD INITIATIVE株式会社(本社:東京都目黒区、代表取締役:北瀬聖光、以下 「BIRD」)が事業化に向けて推進、2023年4月にカーブアウトし誕生しました。
BIRDは、事業会社、金融会社、アカデミアの連携により共創型R&Dから新事業の創出を目指し、NEC、株式会社大林組、日本産業パートナーズ株式会社、株式会社ジャパンインベストメントアドバイザー、伊藤忠テクノソリューションズ株式会社、および当社が運営するオープンイノベーション推進1号投資事業有限責任組合の6社で2020年に設立しました。
様々な自律モビリティの運航管理を含む調整プラットフォームを目指す
Intent Exchangeの中台代表取締役は、NECにおいて分散システムや機械学習の研究開発に長年携わった後、NEC、理化学研究所、産業技術総合研究所において、この自動交渉AIの研究開発を主導しました。更に、UTMの国際業界団体であるGUTMA(※2)において、アジア人として唯一の理事に就任している他、ASTMにおけるUTM標準化活動に創成期から関わってきました。国内では、同社が参加するNEDO(※3)の「次世代空モビリティの社会実装に向けた実現プロジェクト」(ReAMoプロジェクト)(※4)において、日本のUTMが国際標準と整合するよう制度設計も主導しています。
また、UTMの導入による空中リスク低減に加えて、「有人地帯での目視外飛行(レベル4)」の拡大に必要となるものが、ドローンの飛行経路の下にいる人や物への衝突リスクなどを含む地上リスクの適切な評価と管理です。Intent Exchangeは、人口密度データと墜落シミュレーションに基づくリスク評価ツールを開発。地上リスク評価、ドローン運航支援の事業化にも着手します。
ドローンなどのエアモビリティのみならず、今後、様々な自律モビリティが遠隔制御され、相互に調整することが求められる社会がやってきます。Intent Exchangeは、この自律モビリティの運航管理に加えて、今後、サプライチェーンマネジメントの領域でも、自動交渉技術の導入と事業化を推進し、様々な調整プラットフォームを目指しています。
東大IPCは、カーブアウトベンチャーの支援及び、国家インフラの一端を担う技術の社会実装を目指し、この度Intent Exchangeへの投資実行に至りました。
ドローン運航管理の社会実証に向けてNEDOのReAMoプロジェクトのもとで、東京大学の西成活裕教授や鈴木真二特任教授との共同研究が進んでいます。また大企業とアカデミアとの連携によって生まれた技術を、大企業からカーブアウトしたスタートアップによって社会実装を進めようとしています。東大IPCとしては、Intent Exchangeの技術の社会実装を支援して参ります。
Intent Exchange株式会社 代表取締役 中台慎二 コメント
母校の投資機関に出資頂くことになり、大変励みに感じております。Intent Exchangeが用いる自動交渉AI技術や、ドローンや自動運転車などの自律モビリティ向けの交通システムは、アカデミックと密接に連携して研究開発をしていく必要があります。現在も、ReAMoプロジェクトなどで東大との連携を行っておりますが、今後も、なお一層、連携を進めていき、東大及び日本の技術が、世界で使われている状態を目指して、尽力して参ります。
東京大学協創プラットフォーム開発株式会社 マネージャー 片山達彦 コメント
Intent Exchangeの自動交渉AIは、東大との共同研究の成果を実装したドローンの運航管理を始め、自動運転や物流等の国家基盤となるインフラの最適化を推し進めることが出来る技術であり、その可能性に強く期待しています。
同社はNECからBIRD INITIATIVEを経てのカーブアウトであり、大企業の研究成果を社会実装するために作られた会社です。
AOI1号ファンドは、このような企業とアカデミアとの連携によるスタートアップの育成・投資を応援するファンドです。大企業からのカーブアウトが国家基盤となるインフラを最適化するという挑戦的なミッションを積極的に支援して参ります。
日本のオープンイノベーション活動の発展寄与を目指すAOI1号ファンド
AOI1号ファンドは、東京大学周辺でのオープンイノベーション活動の推進を目的とし、「企業とアカデミアとの連携によるベンチャーの育成・投資」というコンセプトで2020年に組成されました。本ファンドでは、各業界のリーディングカンパニーと連携した新会社設立やカーブアウトベンチャー、および事業会社と連携したプレシード育成投資を通じ、新たな分野におけるオープンイノベーションの成功事例創出を目指します。
東大IPC は、今後も、東京大学周辺のイノベーション・エコシステムの発展およびそれを通じた世界のイノベーションを加速するため、ベンチャーキャピタルやオープンイノベーションを推進する企業との様々な連携を通じ、アカデミアの生み出す学術・研究成果を活用するベンチャーの創出、育成および投資を進めていきます。
*1 UTM:無人航空機の運航者が複数いる空域でも、それぞれの機体を安全かつ効率的に運航できるようにする管理システム(Unmanned Aircraft System Traffic Management)
*2 国土交通省 レベル4の実現に向けた 新たな制度整備等
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kogatamujinki/kanminkyougi_dai18/siryou1.pdf
*3 NEDO:国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(New Energy and Industrial Technology Development Organization)
*4 ReAMo:次世代空モビリティの社会実装に向けた実現プロジェクト(Realization of Advanced Air Mobility Project)https://reamo.nedo.go.jp/
Intent Exchange株式会社について
事業概要
・モビリティ運航管理及び企業間取引・調整に関連する技術の研究・開発
・モビリティ運航管理及び企業間取引・調整に関連するソリューションの提供
・システムインテグレーションサービスの提供
・前各号に附帯又は関連する一切の業務
設 立 2023年2月28日
所在地 東京都目黒区下目黒1丁目8-1 アルコタワー7階
代表者 代表取締役 中台慎二
URL https://intent-exchange.com
東京大学協創プラットフォーム開発株式会社(東大IPC)について
概要 東京大学周辺のイノベーション・エコシステムの発展を目指す投資事業会社
設立 2016年1月
株主 国立大学法人東京大学(100%)
所在地 東京都文京区本郷7-3-1 東京大学南研究棟アントレプレナーラボ261
代表者 代表取締役社長 植田浩輔
URL https://www.utokyo-ipc.co.jp/