Joint European O-RAN and TIP PlugFest Fall 2022がi14y Labの主催により開催されました。i14y Labは、ドイツを始めとする欧州のベンダやシステムインテグレータからなるエコシステム構築により、ネットワーク・ディスアグリゲーションとOpen RANの促進を目的とした業界コンソーシアムであり、Deutsche Telekom社とEuropean Advanced Network Test Center(EANTC)の支援を受けています。今回のイベントは、AnalogDevices, Inc.社などの技術ベンダにとり、とりわけローデ・シュワルツとVIAVI Solutions社の試験・計測(T&M)ソリューションによってそれぞれのプラットフォームの適合性を検証できる機会となりました。
成果の大きかったシナリオの一つが、O-RAN無線ユニット(O-RU)の自動検証です。ネットワーク・ディスアグリゲーションには、さまざまなベンダのネットワーク機器間での相互運用性が必要となることから、新しい課題も生まれます。たとえば、発展を遂げているO-RUは3GPPとO-RANの両規格に従う必要があります。また、O-RAN ALLIANCEが定めたフロントホール・コンフォーマンス試験を通じて、新たに登場してくるO-RUデザインはO-RAN分散ユニット(O-DU)と相互運用可能であることも保証しなければなりません。
なかでもAnalog Devices社は、複数のアプリケーション・シナリオに対応できるように、特に柔軟性の高いO-RUレファレンス・デザインを開発しました。そのADRV904x-RD-RUMB 8T8R O-RUレファレンス・デザインと開発キットは、TDD(時分割複信)とFDD(周波数分割複信)モードに加え、600 MHz~6 GHzまでの全FR1周波数を含む多数のバンドをサポートするほか、4Gおよび5G NR規格に対応した完全なO-RAN RU Split 7.2x分割オプションも盛り込まれています。
ローデ・シュワルツとVIAVI Solutions社はどちらも、ワイヤレス通信のテスト分野におけるリーディング企業であり、O-RAN ALLIANCEと3GPPの仕様策定にも積極的に参加しています。この両社が協力して開発したO-RANコンフォーマンス試験ソリューションは、すでにいくつかのオープン試験統合センター(OpenTesting and Integration Centre:OTIC)をサポートするために利用されており、今回のO-RANプラグフェストでも以下のようにAnalog Devices社のO-RUレファレンス・デザインの検証に使われました:
• ローデ・シュワルツのR&S SMM100Aベクトル信号発生器とR&S FSVA3000シグナル・スペクトラム・アナライザ、R&S VSEベクトル信号解析ソフトウェアによって、O-RANアプリケーションのために拡張したRFシグナルを生成・取得・解析することで実際の無線環境をエミュレートしました。
• VIAVI Solutions社のTM500 O-RUテスタによって、O-RUとのインターフェース構築やO-RANフロントホールを介したI/Q データの交換に必要なO-DU側のMプレーンおよびC/Uプレーンのための機能を実装しました。
• さらにVIAVI社のO-RU Test Managerアプリケーションを使って、この統合システムを集中制御し、テスト・セットアップ全体を通じてシームレスなユーザー・エクスペリエンスを確保しました。
i14y LabによるOpen RANプラグフェストではこの試験プラットフォームを用いて、オープン・フロントホール・インターフェース作業部会WG4が定めたO-RANコンフォーマンス・テスト仕様に則してAnalog Devices社のO-RUレファレンス・デザインを検証しました。このテスト仕様には、FDDとTDDの両モードでの動作に対する制御およびユーザー・プレーン(CUプレーン)も含まれています。加えて、同テスト・セットアップは、3GPP TS 38.141-1が規定する基地局(BS)についての伝導によるトランスミッタのコンフォーマンス・テストケースにも対応しています。
ローデ・シュワルツは、モバイルネットワーク用インフラ設備の検証からモバイルネットワークのコンフォーマンスやベンチマークにまで対応した広範な製品ラインナップを用意して、Open RANネットワークの開発・展開・運用を推進できるようにお手伝いしています。
ローデ・シュワルツでワイヤレス通信市場セグメントを担当する副社長のAlexander Pabstは次のように説明しています。「Analog Devices 社のようなOpen RANの技術革新を担う企業は、ディスアグリケーション化したマルチベンダ・ネットワークにおいて、それぞれのデザインの円滑な相互運用性を検証できる高性能なO-RUテスト・ソリューションを必要としています。ベルリンにあるi14y Labは、そうしたOpen RANソリューションのテストや調和・調整、検証などにとって非常に有効な連携の場となっています。そのため、当社はi14y Labの協力パートナーであることを光栄に考えており、他のパートナー企業とも協力して、Open RANに係る産業界すべてにとって、柔軟性の向上や技術革新などに向けた選択肢が広がるように努めています」。
Analog Devices社のワイヤレス通信担当副社長Joe Barry氏は次のように話しています。「当社Analog DevicesのO-RUレファレンス・デザイン・プラットフォームについて、ローデ・シュワルツとVIAVI社の試験セットアップを使って、その相互運用性やO-RAN規格のコンフォーマンスについて事前テストできました。これにより、当社のお客様は安心してそれぞれのインテグレーションの取組みを行っていただけます。なにより設計サイクルが短くなり、市場投入スピードは大きく向上するでしょう」。
またVIAVI社でワイヤレス分野のマーケティング担当副社長Stephen Hire氏も次のように述べています。「Open RAN技術はすでに新規導入の場面ではその能力が実証されています。しかし、メインストリームとしての飛躍を遂げるには、幅広い周波数割当てや4Gと5Gの様々な組合せに対応できる柔軟性を証明してみせる必要があります。Analog Devices社の新しいO-RUのような柔軟性の高いデザインは、その実現に役立つに違いありません。しかし、こうしたより柔軟なデザインには、テストに関してもはるかに多くの変更が必要になります。当社はローデ・シュワルツと協力してAnalog Devices社とi14y Labをサポートし、私どもの自動テスト・プラットフォームが3GPPおよびO-RAN ALLIANCEの仕様に対する適合性をいかに効率よく証明可能かを明らかできたことを高く評価しています」。