​従業員の顧客理解を促進するフレームワーク「評価ギャップマトリクス™」を開発

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顧客ロイヤルティや従業員エンゲージメント向上を支援する株式会社エモーションテック(東京都港区、代表取締役:今西 良光、以下エモーションテック)は、従業員による自社評価と顧客評価のギャップから未知の課題と強みを可視化するフレームワーク「評価ギャップマトリクス™」(※1)を開発したことをお知らせいたします。

(※1)「評価ギャップマトリクス™」は、提供サービス(顧客体験)に関する従業員による自己評価を縦軸、顧客による評価を横軸にプロットしたフレームワーク。従業員による自己評価と顧客評価の違いが引き起こすそれぞれの顧客体験の状態を「サービス評価のズレ」(左上)、「ロイヤルティの源泉」(右上)、「既知の課題」(左下)、「意外な強み」(右下)の4区分に整理することで、企業にとっての未知の課題や強みを把握できる。「評価ギャップマトリクス™」は現在商標登録出願中。

実施背景
 昨今のパンデミックなどによる急激な社会環境の変化は、顧客と企業との接点を変え、顧客ニーズを変化させました。このような中、顧客の声を中心に持続的な経営活動を目指そうとするカスタマーセントリシティ(顧客中心主義)の重要性に注目が集まっています。企業がカスタマーセントリシティを目指すためには、顧客の声を吸い上げるための適切なCX調査や分析、顧客課題の特定を行うことはもちろん、顧客課題を組織に浸透させ、従業員の意識や行動変革を促し続けていける強固な組織基盤を整えることが重要です。
 こうした背景から、エモーションテックでは、従業員の顧客理解を促進するフレームワーク「評価ギャップマトリクス™」を開発しました。これは、従業員エンゲージメントが顧客ロイヤルティ向上に関係しているというサービス・プロフィット・チェーン(※2)の考え方を応用したもので、従業員による提供サービス品質への正しい理解が、顧客ロイヤルティの向上に繋がるという構想に基づいています。(※3)
 「評価ギャップマトリクス™」は、従業員の自社評価と顧客評価とのギャップを見ることによって、組織や会社全体における「うぬぼれポイント」や「ロイヤルティの源泉」、「意外な強み」などを明らかにします。

(※2)サービス・プロフィット・チェーン(SPC)とは、企業が従業員を大切にすることで、従業員のサービス品質が向上し、その結果顧客の満足度、そして企業収益の向上につながるという考え方。1994年にハーバード大学のヘスケット教授とサッサー教授らが”Putting the Service-Profit Chain to Work”にて発表し、日本でも『バリュー・プロフィット・チェーン』という書籍で詳しく取り上げられている。
(※3)2019年9月に顧客体験向上につながる従業員体験を見つけ出す特許技術(特許第6588176号:評価結果を分析するためのコンピュータシステムおよびそのコンピュータシステムにおいて実行される方法およびプログラム)を取得

小売企業での実証実験例
「評価ギャップマトリクス™」の実証実験として、全国に複数店舗を構える小売企業にご協力いただきました。従業員と顧客を対象に、それぞれに店舗の推奨度(※4)、及び各体験の評価について(※5)調査を実施しました。

(※4)対従業員には「自分の店舗でのお買物を、親しいお友達や知人にどの程度おすすめしたいと思いますか?」、対顧客には「お客様は今回ご利用いただいた店舗を、親しいお友達や知人にどの程度おすすめしたいと思いますか?」と質問して0-10の11段階から回答を依頼
(※5)対従業員には「自分の店舗は下記の点において魅力的だと思いますか?」、対顧客には「店頭での以下の体験はどのように評価しましたか?」と質問し、各顧客体験について、非常に思う〜絶対に思わない(対従業員)、非常にプラスに影響した〜非常にマイナスに影響した(対顧客)の7段階から回答を依頼

調査結果
実証実験の結果、以下が明らかになりました。図は、従業員による自己評価≦顧客評価の店舗(上)と従業員による自己評価>顧客評価の店舗(下)です。

  • 従業員による自己評価が過大である店舗(従業員の評価が顧客の評価を上回っている)に比べ、従業員による自己評価が顧客評価と同等もしくは過少である店舗では、収益力が高いことが分かった。(売上+113%〜+121%、客単価+103〜+107%。従業員による自己評価が過大である店舗グループの売上を100として算出)
  • 従業員による自己評価が過大である店舗に比べ、従業員による自己評価が顧客評価と同等もしくは過少である店舗では、顧客ロイヤルティも高い傾向であることが分かった。(NPS+5pt〜+6pt。自己評価が過大である店舗グループのNPSを100として算出)
  • 従業員による自己評価が顧客評価と同等もしくは過少である店舗では、各顧客体験について、自組織の弱みと強みを正しく認識できているということが言える。
  • 逆に、従業員による自己評価が顧客評価よりも過大である店舗では、自組織の弱みであるはずの体験を過大評価する傾向にあった。特に「顧客ロイヤルティに影響が大きい体験」は顧客評価とのズレを埋める必要があるが、これらの店舗は影響の大きい体験も過大評価しやすい傾向が明らかになった。(バブルサイズは顧客ロイヤルティへの影響の大きさを表す(※6))その結果、NPSが低水準となっている可能性が示唆された。

(※6)エモーションテックが保有する特許技術(特許第6176813号:ユーザが評価対象を評価した結果を分析するためのコンピュータシステムおよびそのコンピュータシステムにおいて実行される方法およびプログラム)による

今回の実証実験からは、サービス品質を向上させ、売上を伸ばすためには、従業員と顧客の評価に大きなギャップがないこと、つまり「顧客評価を正しく認識していることが重要である」ことが明らかになりました。
また、このポイントを押さえた対応ができる店舗や組織は、顧客ロイヤルティが向上し、収益力が高まっていくことも示唆されています。得られた収益が従業員に還元されることで、結果的にサービス・プロフィット・チェーンの好循環が生まれると考えられます。

エモーションテックは、今後も顧客体験や従業員体験の向上に繋がる研究を重ね、より多くの企業のCXM/EXMの推進と定着に貢献してまいります。

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