-
18歳で求められる困難な自立
日本には、貧困や虐待、両親の不慮の事故・病気など、さまざまな理由から親もとで暮らすことができず、児童養護施設や里親家庭などで育つ子どもたちが約4万2千人います。
このように親などの保護者がいなかったり、適切な養育を受けられなかったりする子どもたちを、公的な責任で保護し、育てていくことを「社会的養護」と言います。
そうした子ども・若者たちは、多くの人のように親に頼ることができないにもかかわらず、原則として18歳までに自立を求められ、学び、働き、暮らすうえでのさまざまな困難に直面します。
また、社会的養護という支援の網から抜け落ちてしまう人たちもいます。親にも頼ることができず、社会にも支えてもらえずに育つことを余儀なくされている子ども・若者たちが、統計に表れている数字以上に存在するのです。
社会的養護を巣立った人たちのことを、「ケアリーバー(ケアから離れた人)」と呼びます。そのケアリーバーのなかには、病気などで体調を崩したり、仕事を失ったりすると、頼れる実家などがないために住む場所や食べるものにさえ困ってしまうギリギリの状況で頑張っている人たちが多くいます。
長引いたコロナ禍や物価上昇など、社会の変化にもっとも大きな影響を受けるのは、社会的養護を巣立ったケアリーバーをはじめとする家庭基盤や経済基盤の弱い若い人たちです。
新型コロナをきっかけに、それまでどうにか自力で頑張れていた人のなかからも、失業などによって精神的に孤立してしまった人、不安な状況下で虐待などの過去のトラウマがフラッシュバックしてしまった人、借金に手を出さざるをえず首が回らなくなってしまった人など、誰かのサポートが必要にもかかわらず誰にも頼ることができない人がたくさん生まれました。
表面的には、社会はコロナ禍以前に戻ったように見えます。しかし、ひとたび生活の基盤が崩れてしまうと、それを独力で立て直すことはとても難しく、現在も多くの若者たちがサポートを必要としています。
-
若者おうえん基金とは
「若者おうえん基金」は、児童養護施設や里親家庭などで育った子ども・若者たちの進学やひとり立ちには、知られざるたくさんの困難があることに着目し、2018年に首都圏若者サポートネットワークが立ち上げた基金です。
生協組合組織からのカンパや、クラウドファンディングなどで集めた寄付金を助成金として、子ども・若者に伴走型の支援をおこなう伴走者たちへ給付し、子ども・若者の支援を行っています。
昨年、節目の第5回若者おうえん基金助成で、これまでの助成総額が1億1433万7790円となりました。
-
若者おうえん基金を3地域へと拡大する合同クラウドファンディングを8月28日に開始
2023年、若者おうえん基金は、大きな転機を迎えました。
これまでは基金として助成できる範囲が首都圏に限られていましたが、今年、九州地域(沖縄を含む)、広島・岡山地域、山陰地域の全国3エリアに、ケアリーバーの子ども・若者支援のためのネットワーク(地域サポートネットワーク)が立ち上がり、このエリアの支援活動にも助成金給付をおこなうことができるようになりました。
これまで支援の手が届かなかった子ども・若者たちを助成金によってサポートすることはもちろんですが、地域若者サポートネットワーク設立の目的はそれだけではありません。
首都圏で培ってきたノウハウやネットワークも生かしながら、地域内の活動団体同士による横のつながりを強化したり、行政への働きかけをおこなったりすることなどによって、ケアリーバーの子ども・若者たちをよりスムーズに支援できる環境を整えていくことも、地域サポートネットワークが担う重要な役割と考えています。
この度、各地域で「若者おうえん基金助成事業」を実施するためのクラウドファンディングを開始します。
【クラウドファンディング概要】
◆WEBページ:
◆実施期間:
2023年8月28日(月)~11月26日(日)
◆目標金額:
1,000万円
◆寄付金使途:
① 首都圏若者サポートネットワーク(東京都・埼玉県・神奈川県)
・里親家庭・児童養護施設などの子ども、若者を支援する伴走者への助成金の給付
・体験就労事業
・支援の実態調査・研究など
②特定非営利活動法人おおいた子ども支援ネット(九州地域)
・「九州若者おうえん基金」の立ち上げ
こどもや若者の居場所、ケアリーバーの伴走支援、若者の社会参加や就労支援に取り組む団体を中心に応援する。
③特定非営利活動法人どりぃむスイッチ(広島県・岡山県)
・広島県・岡山県で、生活困窮に陥りやすいケアリーバーやケアリーバーに準ずる方に支援を届けるための繋がり作り(食料品・日用品支援・居場所作りなど)のための助成・ケアリーバー等の支援の実態調査
④労働者協同組合 ワーカーズコープ・センター事業団(山陰地域)
・山陰地域でのケアリーバーを支援しようとする団体等への助成や、若者や支援の実態を明らかにする調査・研究など
※いただいたご支援は、READYFOR株式会社よりユニバーサル志縁センターがお預かりし、各3団体に支援者の指定通りにご支援を入金します。
※寄付者は4団体のうち1団体を選択して寄付することができます。
-
メッセージ
皆さん、こんにちは、村木厚子です。
今日これを見てくださっている皆さんは、若者支援に関心のある方だと思います。
皆さんはどんな若者を応援したいですか
頑張っている子、一生懸命やっている子、そんな若者を応援したいですね。私もそうです。
でも、最近、それだけじゃちょっと足りないかなと思うようになりました。
私の大好きな漫画ブルーピリオドにこんな若者の言葉が出てきます。
「努力できんのは環境じゃね。貧乏だと努力すんのもすっげぇコストかかるからハードモードだっつうの」
本当にその通りだと思います。
若者おうえん基金は頑張っている子、一生懸命やっている子も、そして厳しい環境の中であがいている闘っている子も応援したいと思っています。
これまでの活動は首都圏中心でしたが、これからは九州・沖縄、中国、山陰にも活動を広げます。
どうか皆さん、若者支援のために力を貸してください。
よろしくお願いします。
(首都圏若者サポートネットワーク顧問 村木厚子)
3年におよぶコロナ禍がようやく治まり、社会の動きが活発になってきました。
しかし、ロシアのウクライナ侵略に伴う物価上昇と猛暑や水害による農産物の物価高騰が、生活難をもたらしています。
首都圏若者サポートネットワークは、社会的養護下から巣立つ子ども・若者のくらしを応援しています。
しかし今の状況では、これらの若者たちが直面する困難は減るどころかより一層厳しくなるのではないかと懸念されます。
困った時の少しのお金、相談できる人、実家に代わって受け入れてくれる居場所があれば、どんなに安心できることでしょうか。
私たちは取り組みを強化するとともに、全国に広げようとしています。
この活動は多くの団体・個人のみなさまの寄付によって支えられてきました。
寄付額が増えればそれだけ、応援できる子どもの数を増やすことができます。
今年もみなさまの寄付をお願いいたします。
(首都圏若者サポートネットワーク運営委員長 宮本みち子)
-
虐待を経験した70名が出演するドキュメンタリー「REALVOICE」の上映会開催
社会的養護を受けている子どもやケアリーバーの人たちのなかには、児童虐待を受けた経験をもつ人たちも多くいます 。虐待を受けた経験は、その後も精神面などに大きなダメージを残しますが、当事者の抱える生きづらさを実感をもってイメージすることは、なかなか難しいかもしれません。
そんな見えづらい虐待を受けた経験をもつ人たちのリアルな姿を綴ったドキュメンタリー映画があります。自身も児童養護施設で育った映画監督・山本昌子さんが2022年末に完成させた『REALVOICE』です。
若者おうえん基金として、映画『REALVOICE』の上映&トークイベントを開催
最新のスケジュールは以下からご確認ください。
-
団体概要
・首都圏若者サポートネットワーク
首都圏若者サポートネットワークは、児童養護施設や里親家庭など、なんらかの事情があって公的な支援のもとで育った子ども・若者たちが、社会のなかでみずからの力を発揮して生きていくことを応援する民間ネットワークです。
子ども時代につらい経験をした若者たち、そして彼らに寄り添って伴走型の支援をおこなう伴走者たちを、市民や民間団体の力を集めてサポートしています。
(事務局:公益社団法人 ユニバーサル志縁センター)
HP:https://wakamono-support.net/
・特定非営利活動法人おおいた子ども支援ネット(大分県)
「九州若者サポートネットワーク」は特定非営利活動法人おおいた子ども支援ネット(大分県)と社会福祉法人グリーンコープ(福岡県)との協働によって創設しました。
「共生の理念」を大切にしながら、九州地域のケアリーバーや生きづらさや困難を抱えるこども若者をサポートするみなさまと、支えあい・育ちあいを大切にしていきます。どうぞよろしくお願いいたします。
HP:https://oita-kodomosien777.net/
・特定非営利活動法人どりぃむスイッチ(広島県)
広島県福山市で、社会参加に困難をかかえる子ども若者とその家族の支援をしています。地域若者サポートステーション・アフターケア事業所・自立援助ホーム、若者の総合相談・居場所作りなど様々な角度から若者支援に取り組んでいます。
若者とそのご家族が主体的に幸せに生きていくことに貢献するため、専門性をもって関わり、社会へのかけ橋となり、すべての若者が主体的に生きていける社会を目指しています。
・労働者協同組合 ワーカーズコープ・センター事業団(山陰地域)
当団体は、働く人が皆で出資し、民主的に運営し、ともに働くことで地域の課題を解決していくことを目的としています。
社会的に困難を抱える人たちの多様な就労機会の創出や、地域住民とともに地域ニーズにかなう仕事おこしを行っています。
山陰地域では、地域若者サポートステーションをはじめとする若者支援や子育て支援、障がい児者支援などに取り組んでいます。