これまで政府が主導していた宇宙開発の分野は、今、民間企業がイニシアチブをとった「ビジネス」として急速に生まれ変わりつつあり、この流れは「ニュー・スペース」と呼ばれています。スペースX社や、2021年7月に宇宙旅行を果たしたブランソン氏やベゾス氏の話が有名ですが、日本でも、ニュー・スペース企業初となる「ispace社」の株式上場が、2023年4月12日に達成され、同月26日未明には世界初となる民間企業による月着陸が試みられました。残念ながら紙一重の差で着陸成功に至りませんでしたが、同社の再チャレンジを含め、今後も続々と民間企業が月を目指しています。
現実世界では宇宙ベンチャー企業の台頭が著しい情勢ですが、一般の多くの方々は、様々な疑問を抱きながら半信半疑でいるのが正直なところではないでしょうか。
「どうして民間宇宙旅行が急に実現したの?」、「危なくないの?」、「いくらかかるの?」、「宇宙ビジネスなんてもうかるの?」、「どんな種類の商売があるの?」、「大企業よりベンチャーの方が強いの?」
こうした素朴な疑問に一定の答えを出すのが、本書の目的の一つです。
本書は、一冊読んでいただくだけで、宇宙ビジネスのAからZまでをコンパクトにご理解いただけるように執筆いたしました。100社を上回る宇宙ベンチャーが紹介されています。一般の方々はもちろんのこと、特にメディア関係者方々にお読みいただきたいと思います。(実際に共著者両名は、某大手新聞社の記者の方々に対する社内勉強会も実施させていただきました。)
8月17日(木)には、「Kindle日替わりセール」に採用されることになりましたので、これを機にお得にご入手いただけます。
Amazon URL https://www.amazon.co.jp/dp/4334046533
本書の目次
はじめに
【第一章】宇宙ビジネス概観
1.1 「はじめに」解題
1.2 宇宙旅行ベンチャーの特徴比較
【第二章】3つの導線
2.1 3つの導線とは
2.2 宇宙が舞台の賞金レース
2.3 ビリオネアは宇宙を目指す
【第三章】3つの革新
3.1 ニュー・スペースとレガシー・スペース
3.2 ロケットのコスト破壊
3.3 コンステレーション革命
3.4 宇宙に行かない宇宙ビジネスの躍進
【第四章】宇宙ビジネスの注目8分野
4.1 ロケット打ち上げビジネス
4.2 民間宇宙旅行
4.3 通信コンステレーション
4.4 リモートセンシング
4.5 民間宇宙ステーション
4.6 軌道上サービス
4.7 宇宙資源開発
4.8 安全保障ビジネス
【第五章】政府事業から民間商業へ
5.1 どうしてスペースシャトルは廃止されたのか
5.2 どうして突然ベンチャー企業が宇宙に進出したのか
5.3 経営的な観点から考えるCOTSの3つの意義
【第六章】スペースXが「宇宙ベンチャーの雄」となりえた理由
6.1 どのようにして宇宙ベンチャーの基礎を作ったか -第一段階-
6.2 COTSを通じて技術力を高め評価を確立するまで -第二段階-
6.3 事業領域の拡大 -第三段階-
6.4 民間主導の火星移住に向けて -第四段階-
【第七章】高い株価
7.1 米国発宇宙ベンチャー上場ブーム
7.2 なぜド赤字の宇宙ベンチャーに法外な株価が付くのか
7.3 投資家はなぜリスクの高い投資を実行するのか
7.4 なぜド赤字の段階で株式上場が許されるのか
7.5 大きく下げた宇宙株
【第八章】動く日本
8.1 米国政府はリスクを取って法規制を刷新
8.2 我が国も法制度の新設で米国を猛追
8.3 JAXAで始まる「一歩前へ」
8.4 我が国の宇宙ベンチャー列伝
【第九章】リスクとどう向き合うか
9.1 リスクの分散処理とは
9.2 各主体のリスク・テイク
9.3 思考実験
おわりに
以下に、かいつまんで内容をご紹介いたします。
第一章
導入として、今、世界の宇宙業界で起きていることを概観します。
第二章
宇宙ベンチャーが登場する前史について辿ります。宇宙ベンチャーを躍進させる源になった、3つの導線、①賞金レース、②ビリオネアの参入、③NASAの新政策についてご紹介します。
第三章
宇宙ベンチャーが成し遂げた3つの革新、①ロケットのコスト・ダウン、②衛星コンステレーション革命、③宇宙に行かない宇宙ビジネスについて取り上げます。
第四章
「宇宙ビジネスの注目8分野」と題して、いま最もホットな8つのビジネス領域についてご紹介します。
第五章
第二章でご紹介した3つの導線の最後、「NASAのCOTS事業」について詳述します。NASAがリスクをとって民間宇宙ビジネスを育成したこの事業で、スペースX社も育ててもらいました。
第六章
イーロン・マスク氏がビジネスの英知を駆使してリスクを乗り越えていく様を、スペースX社の歴史を追いながら辿っていきます。
第七章
ド赤字の宇宙ベンチャーになぜ高い株価がつくのか、新産業の勃興と資本市場の関わりについて見ていきます。
第八章
技術としては一流を誇ってきたわが国が、遅ればせながら急速に改革を行って、現在新たな宇宙産業を生み出そうとしている様子を見ていきます。我が国の主要な宇宙ベンチャーについてもご紹介します。
第九章
これまで断片的に述べてきた「社会におけるリスクの分散処理」についてまとめるとともに、これが米国で新産業を生み出す原動力になっている点を確認します。そして最後に、今後の我が国の宇宙産業について展望してみます。
著者紹介
小松伸多佳(こまつのぶたか)
1965年東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。(株)野村総合研究所元主任研究員。イノベーション・エンジン(株)のキャピタリストとして宇宙分野の投資を担当。JAXA(宇宙航空研究開発機構)客員等歴任。
後藤大亮(ごとうだいすけ)
1976年京都府生まれ。大阪大学大学院基礎工学研究科修士課程修了後、宇宙開発事業団、のちのJAXA(宇宙航空研究開発機構)にて人工衛星、探査機、ロケットの開発・運用に従事。JAXA主任研究開発員。