OUI Inc.の代表取締役である清水 映輔が慶應義塾大学医学部眼科学教室の特任講師として参加した本研究成果が、米国科学誌Scientific Reportsに2023年4月10日(日本時間)に公開され、慶應義塾大学医学部確認のもと、今回日本で初めて情報解禁を行います。
【研究の背景】
ドライアイは、眼科を受診する原因の上位を占めています。特に、日本では6人に1人の割合でドライアイが発症すると報告され、世界では国や地域によって8.7~33.7%の有病率と報告されています。
眼科領域においては、特に網膜疾患や視神経疾患(眼底疾患)のスクリーニングや診断において、人工知能(AI; artificial intelligence) の活用に注目が集まっております。 これら眼底疾患に関連するAI開発は世界中で盛んに行われています。しかし、2023年5月現在、ドライアイを始めとした、前眼部疾患におけるAI開発は進んでおりません。これは、診断やAI開発のための機械学習に必要な、画一的で、大量の細隙灯顕微鏡の画像データを取得することが困難である事が原因の1つとされています。
この問題に対し、研究グループは スマートフォンアタッチメント型細隙灯顕微鏡であるSmart Eye Camera (SEC; 医療機器届出番号: 13B2X10198030101、13B2X10198030201、13B2X10198030301)を開発し、医療機器として実用化をしました。
本研究では、SECを用い、大量の細隙灯顕微鏡の画像データを取得することで、アジアにおけるドライアイの診断基準で最も重要な臨床パラメータの涙液層破壊時間(TFBUT; tear breakup time)の推定を行い、ドライアイ診断AIの開発を目指しました。
【研究内容】
本研究は、SECを用いて収集された、後向きの79症例158眼分の前眼部動画すべてを静止画に分割することで、 合計22,172枚の画像に分割しました。 次に、診断に不適切な5,732枚の画像を除外し、残りの16,440枚に対し、眼科専門医がTFBUTに関わる層破壊(break up)の所見をアノテーション(タグ付け)し、 12,011枚の学習用データセット、1,599枚の評価様データセットに分類し、すべての学習用データセットを機械学習にかけました(図1)。
学習用データセットを使用して開発したドライアイAI診断モデルは、 眼科専門医のドライアイ診断に対して、感度:0.778 (95%信頼区間 0.572-0.912)、 特異度:0.857 (95%信頼区間 0.564-0.866)、機械学習の評価指標であるAUC (Area Under the Receiver Operating Characteristic Curve):0.813 (95%信頼区間 0.585-1.000) を達成しました。また、Gradient-weighted class activation mapping (GradCAM)を用いた、ヒートマップによる可視化技術でも、AIは正確にTFBUTの 所見を捉えていることがわかりまし(図2)。
この結果により、本アルゴリズムは特筆すべき高い診断感度や特異度は達成できませんでしたが、 従来であれば万を超える多数の症例を収集しないと開発不可能であった、画像診断アルゴリズムをわずか79症例で、達成したことに大きな意義があります。 今後は、収集する症例数を増やし、本アルゴリズムを最適化することで、より精度の高いドライアイAI診断モデルを開発し、プログラム医療機器(SaMD;Software as a Medical Device)としての実用化を進めてまいります。
なお、本研究は国立研究開発法人日本医療研究開発機構、日立財団、近藤記念財団、ユースタイルラボ、興和生命科学振興財団、大和証券ヘルス財団、H.U.グループ中央研究所、慶應義塾大学 グローバルリサーチインスティテュート等の研究助成で行われました。
【OUI Inc. 会社概要】
会社名:OUI Inc. (株式会社OUI)
代表取締役:清水映輔
設立:2016年7月15日
本社所在地:東京都港区南青山2-2-8 DFビル510
OUI Inc.は現役眼科医が創業した、慶應義塾大学医学部発のベンチャー企業です。
医学・工学・ビジネスのプロフェッショナルが力を合わせて、世界の失明を50%減らし、眼から人々の健康を守ることをミッションに掲げて活動しています。
http://www.ouiinc.jp/
私たちは、眼科の診察を可能にする iPhoneアタッチメント型医療機器SECをゼロから開発しました。iPhoneのカメラと光源を利用した眼科診療機器は本邦初であり、多数のエビデンスより既存の細隙灯顕微鏡と同等の性能があることが証明されています。 現在世界の失明人口は4,400万人、これらの患者さんの半分以上が、眼科医療に対するアクセスがないことが原因で、予防可能・治療可能な病気によって失明しています。
私たちは、日本中・世界中の眼科医・非眼科医・医療関係者の方々と力を合わせて、Smart Eye Cameraを使ってこれらの患者さんに眼科医療を届けるモデルを世界中に広げ、世界の失明を半分にし、眼から人々の健康を守ることをミッションにかかげ、事業を推進しております。
世界の失明原因第一位は白内障です。白内障は適切な時期に治療をすれば失明に至らない可能性が高いにもかかわらず、発展途上国においては白内障による失明が社会問題となっています。SECはiPhoneに取り付けて使用する小型な医療機器であるため、電気のない地域や被災地など場所を選ばず眼科診察を可能にします。