下水汚泥が価値ある資源に変身!横浜市内産の資源「下水汚泥」から回収した「リン」による肥料利用をスタート

この記事は約4分で読めます。
リン回収に係る下水道革新的技術実証事業(B-DASHプロジェクト)※1に JFEエンジニアリング株式会社と横浜市が共同提案した技術が採択され、両者で共同研究体協定を締結しました。
回収したリンを活用した肥料開発や流通の仕組みづくりなどについては、JA横浜と横浜市が連携して取り組んでいきます。
1 趣旨
原料の大半を輸入に頼る化学肥料の価格は、複雑化する国際情勢に伴い高騰しており、国では肥料の国産化・安定供給に向けた議論が本格化しています。このような中、注目されているのが下水汚泥に含まれる「リン※2」の肥料利用です。
市内で発生する下水汚泥からリンを回収し、肥料原料として活用できれば、輸入に過度に依存しない国内での資源循環が生まれ、食料安全保障の強化にもつながります。
横浜市では、JFEエンジニアリング株式会社と共同で、下水汚泥から安全な肥料原料としてリンを回収する技術を導入するとともに、2027年国際園芸博覧会を皮切りに、農業等での利用が図られるよう、JA横浜と連携して、回収したリン(以下、回収リン)を配合した肥料の開発や市内を中心とする円滑な流通に向けた取組を推進します。

2 下水道革新的技術実証事業(B-DASHプロジェクト)に採択 共同研究体協定を締結
JFEエンジニアリング株式会社と横浜市が共同で提案した「MAP※3により脱水ろ液※4から効率的にリンを回収する技術」が令和4年度(補正)下水道革新的技術実証事業に採択され(令和5年2月)、迅速かつ着実な事業推進に向け、このたび、両者で共同研究体協定を締結しました。
提案技術は、従来技術と比べ、各種センサーを用いた運転管理の自動化・省力化や、肥料の製造や利用を容易にするための乾燥機能の付加、既存設備の廃熱利用による省エネ化などを図るもので、令和5年度に北部汚泥資源化センターに、首都圏で初となる実規模のリン回収施設を建設します。
建設後、必要な実証データを取得・蓄積し、国との共有を図りながら、この施設を運用してリンを回収し、肥料原料としての利用につなげていきます。

3 JA横浜との連携
回収リンを配合した肥料の開発・製造や市内を中心とする円滑な流通に向けて、主に次の項目について、JA横浜と横浜市が連携して取り組みます。

(1) 回収リンの供給及び利用方針の検討に関すること
(2) 回収リンの肥料登録に関すること
(3) 回収リンを配合した肥料の試験施肥及び製品開発に関すること
(4) 回収リンを配合した肥料の製造に関すること
(5) 回収リンを配合した肥料の流通に関すること
(6) 回収リンを配合した肥料のブランド化及び普及・啓発に関すること

4 2027年国際園芸博覧会を契機とした農業等への普及展開
横浜で開催される2027年国際園芸博覧会を、回収リンを配合した肥料利用の本格的なスタートと位置付け、SDGsの実現にも資する資源循環の象徴的な取組として国内外に発信するとともに、これを契機として、市内を中心とした農業等への普及展開をしっかりと進めることで、肥料の国産化・安定供給に貢献していきます。

※1 下水道革新的技術実証事業(B-DASHプロジェクト=Breakthrough by Dynamic Approach in Sewage High Technology Project):新技術の研究開発及び実用化を加速することにより、下水道事業における低炭素・循環型社会の構築等を実現し、併せて、本邦企業による水ビジネスの海外展開を支援するため、国土交通省が実施しているもの。実証研究では、国土技術政策総合研究所が、自治体・民間企業等で構成される共同研究体と委託研究契約を締結し、共同研究体は、自治体が提供するフィールドにて研究を実施する。
(参考URL:http://www.mlit.go.jp/mizukokudo/sewerage/mizukokudo_sewerage_tk_000450.html
※2 リン:窒素、カリウムとともに肥料の三要素と呼ばれ、植物の生育に特に必要とされる養分
※3 MAP:リン酸マグネシウムアンモニウム。脱水ろ液に含まれるリン酸及びアンモニア性窒素と、添加する水酸化マグネシウムを反応させることにより、肥料原料として利用可能な結晶化したMAPを回収する。
※4 脱水ろ液:横浜市の下水汚泥処理フロー(濃縮→消化→脱水→焼却または燃料化)のうち、脱水工程では、汚泥の濃度を高めるために液体分を分離する。この分離された液体分を脱水ろ液といい、比較的高濃度のリンを含む。
 

 

 

タイトルとURLをコピーしました