トルコ・シリア大地震:ユニセフ、両国での緊急支援計画を発表~約3億7,000万米ドルを国際社会へ要請【プレスリリース】

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アレッポのアフリーンで、家を失った人たちのための避難所で過ごす、被災した子どもたち。(シリア、2023年2月9日撮影) © UNICEF_UN0780615_Zayatアレッポのアフリーンで、家を失った人たちのための避難所で過ごす、被災した子どもたち。(シリア、2023年2月9日撮影) © UNICEF_UN0780615_Zayat

【2023年2月17日 ニューヨーク/ジュネーブ/アンマン(ヨルダン)発】

トルコ南部のシリア国境近くで発生した大地震を受け、ユニセフ(国連児童基金)はシリアとトルコでの支援計画を発表しました。緊急支援を行うためユニセフが国際社会に要請した金額はそれぞれ1億7,270万米ドル(シリア:2月~5月の必要資金)と1億9,600万米ドル(トルコ:2月~4月の必要資金)です。以下はその抜粋です。

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自宅が倒壊したときに怪我を負い、ハマーの国立病院で治療を受ける6歳のジャワドくん。(シリア、2023年2月8日撮影) © UNICEF_UN0782947_Farah自宅が倒壊したときに怪我を負い、ハマーの国立病院で治療を受ける6歳のジャワドくん。(シリア、2023年2月8日撮影) © UNICEF_UN0782947_Farah

シリア
2月6日未明に発生した大地震とその後続く余震によって、主にアレッポ県、ハマ県、イドリブ県、ラタキア県を中心に莫大な人的・物的被害に見舞われています。シリア北西部に住むほぼすべての人が影響を被っており、死傷者の数は増え続けています。全容はまだ明らかになっていませんが、女性や子どもが最も影響を受けていると思われます。

多くの家屋や基本的なサービスのインフラが破壊されるか、損傷しています。370万人の子どもを含む880万人以上が被災し、多くの人が食料、水、避難所、緊急医療、心理社会的サポートを緊急に必要としています。

被災した地域で暮らしていた国内避難民(IDPs)、特に避難キャンプ以外の場所、また損傷した家屋やアパートに住んでいた人々が危機に見舞われています。厳しい天候やさらなる自然災害に直面した場合、この人々はより大きな危険にさらされることになります。

厳しい経済状況や12年近くにわたる長期的な危機にある中で、電力・水・燃料の著しい不足に加え、氷点下の凍てつく寒さ、以前からあった大規模な人道的ニーズ、社会的サービスのインフラの損傷、最近発生したコレラなど、複数の要因が深刻な人道的ニーズをさらに増大させています。

家族を失った子どもたちは、普通の生活に戻れる可能性がさらに低くなり、これまでに無いレベルの心的外傷ストレスを抱えています。学校が損傷し、教材も消失しているため、家を失った子どもたちは、もはや教室にも安全な場所を見つけることができません。子どもたちはより脆弱になり、搾取や虐待のリスクにさらされています。

ユニセフは、地震の被害を受けた540万人(260万人の子どもを含む)に命を守る緊急支援を行うために、1億7,270万米ドルを必要としています。浮かび上がりつつある新たなニーズに迅速に対応できるよう、柔軟性のある、使途を特定しない資金の提供が求められます。
 

北西部のアレッポで、ユニセフが支援する給水車から安全な水を容器に汲む人たち。(シリア、2023年2月10日撮影) © UNICEF_UN0781310_Al-Asadi北西部のアレッポで、ユニセフが支援する給水車から安全な水を容器に汲む人たち。(シリア、2023年2月10日撮影) © UNICEF_UN0781310_Al-Asadi

・水と衛生(WASH)
シリアの被災地域では、避難者の移動が増加する一方で、水と衛生のインフラが甚大な被害を受けています。安全な水や衛生設備・サービスの利用が困難になったため、コレラ、下痢性疾患、新型コロナウイルス感染症などの感染症のリスクにさらされている脆弱な子どもやその家族が増加しています。2月7日にユニセフの現地チームとパートナーがアレッポ、ラタキア、イドリブ、ハマで行った初期の緊急ニーズ調査では、一時避難所や避難場所、また水道ネットワークが機能しなくなった地域に給水車で水を運ぶことが急務であることがわかりました。イドリブとアレッポの一部では、全長16kmの環状の送水ラインが大きく損傷し、修理不能な箇所もあるようです。Medankiダムの貯水池に亀裂が生じ、アフリン地区とアザズ地区の19万人以上の飲用水に影響が出る可能性が報告されています。
 

ユニセフが支援する移動式保健クリニックで診察を受けるため、列に並ぶ人たち。(シリア、2023年2月10日撮影) © UNICEF_UN0781585_Al-Asadiユニセフが支援する移動式保健クリニックで診察を受けるため、列に並ぶ人たち。(シリア、2023年2月10日撮影) © UNICEF_UN0781585_Al-Asadi

・保健
アレッポ、ラタキア、タルトゥース、ハマの172の医療施設で保健当局とパートナーによって行われた初期の緊急診断で、多くのニーズが特定されました。医薬品は不足しており、イドリブとアレッポの一部で水の汚染が報告されたため、コレラの再燃が懸念されています。

・栄養
被災したアレッポ、イドリブ、ラタキア、タルトゥース、ハマでは、100万人近くが栄養支援を必要としています。

・教育
状況が流動的なため報告数は今後変わる可能性がありますが、2月14日現在、アレッポ、タルトゥース、ラタキア、ホムス、ハマ、イドリブで900以上の学校がさまざまな程度の被害を受けたと報告されています。また、170以上の学校が避難所に使われていると報告されています。
 

タラキアにある避難所となった学校で、ユニセフのスタッフと遊ぶ3歳のリタちゃん。(シリア、2023年2月15日撮影) © UNICEF_UN0784072_Haddadタラキアにある避難所となった学校で、ユニセフのスタッフと遊ぶ3歳のリタちゃん。(シリア、2023年2月15日撮影) © UNICEF_UN0784072_Haddad

・子どもの保護、緊急時下のジェンダーに基づいた暴力(GBViE)
アレッポ、イドリブ、ラタキア、タルトゥース、ハマ、ホムスの少なくとも推定92万人の子どもたちが、心身の健康に直接影響を与えるリスクから確実に保護されるための緊急支援を必要としています。ユニセフとパートナーたちによって、70件以上の、家族が離れ離れになるケースや親の保護下にいない子どものケースが特定されましたが、すべて再会もしくは代替養護が提供されました。この数は、今後数日から数週間のうちに増加すると予想されます。

・現金給付と社会的保護
今回の地震は、特に障がいのある子どもがいる家庭や母子家庭といった非常に弱い立場にある家庭にとって、さらなる打撃となっています。予備的な評価では、アレッポやハマまたは沿岸部の仮設集団避難所に逃れている避難家族など、4万以上の脆弱な立場にある家族(20万人)が大きな影響を受けていることが判明しています。

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カフラマンマラシュの一時避難所のテントの中に座る子ども。(トルコ、2023年2月11日撮影) © UNICEF_UN0781447_Ölçerカフラマンマラシュの一時避難所のテントの中に座る子ども。(トルコ、2023年2月11日撮影) © UNICEF_UN0781447_Ölçer

トルコ
大地震は、トルコの最も被害の大きかったカフラマンマラシュ県、ハタイ県、ガジアンテップ県、キリス県、オスマニエ県、マラティヤ県、アドゥヤマン県、ディヤルバクル県、シャンルウルファ県、アダナ県の10県で暮らす約1,520万人(うち170万人が難民)に大きな影響を及ぼしました。影響を受けた人数には、子ども460万人(うち81万1,000人が難民)も含まれています。トルコ政府は対応策を主導し、この10県に3カ月間の非常事態宣言を発令、国際的な支援要請を行いました。ユニセフは他県への拡大も視野に入れながら、10県を対象とし支援を続けています。

カフラマンマラシュから寄せられた最新の報告によると、建物の23%が倒壊または大きな損傷を受けており、アンタキヤ中心部のハタイではその割合は50%以上にのぼると報告されています。250万人の子どもを含む推計910万人が支援を必要としており、現在100万人以上が一時避難施設に滞在しています。

一時避難施設での過密な生活、水や衛生設備へのアクセスの制限、廃棄物やごみの処理ができていない状況は、感染症発生のリスクとなっています。2月13日現在、トルコ家族・社会サービス省は、おとなの同伴者のいない子どもやおとなと離ればなれになった子どもを1,300人確認しました。そのうち369人を家族と再会させることができ、435人が病院で治療を続けています。人々が受ける心理社会的な影響は大きく、ユニセフは長期にわたる負の影響をもたらす可能性がある、と警鐘を鳴らしています。また、子ども、若者、家族は虐待、暴力、人身取引にさらされる可能性があり、子どもと女性の保護は引き続き重要な懸念事項であるとしています。

保健施設やサービス提供者が被災しているため、妊産婦や子どもの診察、定期的な予防接種などの日常の保健サービスへのアクセスが中断されています。また被災地域では学校の再開が3月1日まで延期されています。被災した家族が一時的に学校を避難所として使用しているため、35万人以上の難民や移民の子どもを含む約400万人の子どもたちの教育へのアクセスが損なわれています。被災した県の生徒は、他の71県の学校に編入される予定のため、他県での受け入れ人数を増やす必要があります。教育を受けることができないことにより、子どもたちの学習能力の低下、中退、心理社会的苦痛などのリスクが予想されます。

ユニセフは150万人の子どもを含む300万人に緊急支援を届けるため、1億9,600万米ドルを国際社会に要請しました。この要請は、2023年2月~4月の3カ月間の初期緊急支援対応のためのものです。政府主導の対応をユニセフが補完し、現在および今後増加する人道的ニーズに迅速に対応するためには、使途に限定の無い資金が不可欠です。

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ユニセフ「自然災害緊急募金」ご協力のお願い
地震や津波、洪水、台風やサイクロン、干ばつなどの自然災害に苦しむ子どもたちのために、ユニセフは緊急支援を行っています。その活動を支えるため、(公財)日本ユニセフ協会は、ユニセフ「自然災害緊急募金」を受け付けております。トルコ・シリア国境で発生した地震の影響を受けた子どもを含む、最も支援を必要としている子どもたちとその家族に支援を届けるため、ご協力をお願い申し上げます。

1. クレジットカード/コンビニ/ネットバンクから
https://www.unicef.or.jp/kinkyu/disaster/2010.htm

2. 郵便局(ゆうちょ銀行)から
振替口座:00190-5-31000/口座名義:公益財団法人 日本ユニセフ協会
*通信欄に「自然災害」と明記願います。
*窓口での振り込みの場合は、送金手数料が免除されます。

※ 公益財団法人 日本ユニセフ協会への寄付金には、特定公益増進法人への寄付として、所得税、相続税、法人税の税制上の優遇措置があります。また一部の自治体では、個人住民税の寄付金控除の対象となります。

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■ ユニセフについて
ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念をさまざまな形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています。 https://www.unicef.or.jp/
※ ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する33の国と地域を含みます

■ 日本ユニセフ協会について
公益財団法人 日本ユニセフ協会は、先進工業国33の国と地域にあるユニセフ国内委員会のひとつで、日本国内において民間として唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、政策提言(アドボカシー)を担っています。 https://www.unicef.or.jp/

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