DG Daiwa Venturesが連携する海外トップVC「HOF Capital」と、日本のスタートアップ市場への期待と課題について対談で語りました

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株式会社DG Daiwa Ventures(本社:東京都千代田区、代表取締役 大熊将人、阿部東洋、以下:DGDV)は、共同投資実績も複数重ねる米国拠点のグローバルVC、HOF Capital(本社:米国ニューヨーク州、Co-Founder Hisham Elhaddad、Onsi Sawiris、Fady Yacoub、以下:HOF)との対談を通じ、日本に限らず世界的なイノベーション支援に今後も協力して取り組んでいくことを発表しました。

日本発グローバルファンドを掲げるDGDVは、世界中のVC・CVCを中心に定期的なミーティングや共同の投資活動を通じて、海外ネットワークを強化しています。中でも著名ユニコーンを複数輩出してきたグローバルVCのHOFとは共同投資も重ねるなど深い関係を築いてきました。
HOFの共同創業者・マネージングパートナーのファディ氏とDGDV プリンシパルの野島が対談し、見えてきたグローバル投資家の日本市場に対する考え方や日本市場の抱える課題、お互いの協力体制についてご紹介します。

HOFファディ氏・DGDV野島 対談取材記事(抜粋)

●DGDVとの共同投資について
— ファディさんが共同創業されたHOFは米国が拠点ですが、DGDVは日本のVCです。どのようにしてDGDVを知ったのでしょうか?

ファディ氏「これまでにDGDVとHOFはいくつか共同投資をしてきたのですが、きっかけは数年前に遡ります。当時、HOFは日本の企業とネットワークを構築しているところでした。
その際に、大手金融機関のニューヨーク支店の企業開発部門担当者が、DGDVとHOFの投資分野が似ていることに気づき、両社で手を組めば強みを発揮できるのではないかとご紹介いただいたことがきっかけです。
それ以来、DGDVとHOFは連携してきました」

— ファディさんと野島さんのお二人はプライベートも含めてとても親しくされているようですが、どのようにお仕事をされているのでしょうか?

ファディ氏「DGDVに紹介されて以来、野島さんやDGDVのチームメンバーと少なくとも月に一度はカンファレンスコールをしています。時間帯はいつも米国の私が夜で、日本が早朝ですね。
日本のVCの中でも、DGDVとの共同投資が一番多いです。
私が東京に行ったときも、多くの時間を一緒に過ごさせてもらっており、親しい友人だと思っています」

●日本市場について
— HOFは日本市場に興味を示しているVCのひとつですね。個人的な意見もあると思いますが、文化的な面で、日本の面白いところや美しいところは何ですか?

ファディ氏「私自身かなりこだわりのある人間なのですが、ひとつ挙げるなら、日本には、自分のやることに100%ではなく、120%力を入れようとする文化があります。
例えば、機械の部品ひとつをとっても、日本人は120%の完成度を目指して、ひたすら努力します。細部にまで気を配っていますよね。これは文化や人々のあり方から見ても、非常に大きな魅力です」

野島「日本人のDNAには、細部へのこだわりがあるのでしょう。もうひとつは、サービス精神でしょうか。
いずれも日本人がこだわる要素で、良いことだと思います。

ビジネスや投資に関してはどうでしょう。事実上、日本はGDP3位の経済規模を誇っています。
VCの観点から日本をどのように見ていますか?また、世界の投資家は投資機会という観点から日本をどのように見ているのでしょうか?」

ファディ氏「先進国での最後のフロンティアのひとつだと思います。
日本は、世界第3位の規模を誇っていますが、同時に、そのリードを維持するためには、迅速に行動する必要があります。そのための重要な要素は、『人材と既存の組織』だと思います。

少なくとも以前と比べれば、ファウンダーの数は確実に増えていますし、リスクを取って自分の会社を作ろうとする人たちの数も増え、そうしたファウンダーが手に入れられる資金手段や資金額も増えています。
米国でもようやく、日本のグロースステージの資金を提供する組織がいくつか出てきました。
また、日本市場の成長を維持するには、企業の発展が不可欠です。日本以外の新しい市場で大規模な開発を行う企業が増える必要があります。

たとえば、アフリカのような地域は、重工業が大きな役割を果たすことができる場所です。今後数十年にわたり定期的な収入と成長をもたらし、必要なインフラを構築することができます。
そのような市場は非常に若く、新しい才能を持ったファウンダーがいる市場でもあるので、世界中から既存の大企業が参入して、彼らが成功するために必要なリソースを提供しています。
グローバルの大企業は、現在の優位性を活かして市場全体に展開し、世界中に足跡を残しているのです。

加えて、足元で注目すべきは、人々がより新しい事業に挑戦し、今までなかったサポート体制で新規ビジネスを展開することを良しとする風潮になってきていることです。

私たちは、マルチステージのグローバルVCがもっと日本市場に参入していけるように、日々取り組んでいます。そして、日本市場の企業が、日本という重要な市場を活用し、それを足がかりにして、さらにグローバルな展開をしていくことを期待しています」

野島「海外の投資家が日本への投資を検討している場合、英語を話さなければいけないですが、もちろんそれだけではなく、我々から心を開いて臆せずに海外の投資家と話をすることが重要だと思います。

海外のVCに日本は面白い市場か、と尋ねると、みんな面白いと答えます。日本の経済規模は莫大だと言います。しかし、日本のベンチャーエコシステムがどのように機能しているかについては、ウェブサイトに情報がない、あるいは何も知らないと言います。

そのような中で、HOFは日本の文化や人々を理解しようと日本市場を研究している数少ない企業のひとつです。日本の文化に興味を示し、日本の投資家と話をしようとする姿勢を見せてくれたことが、私たちがここまで関係を深められた理由のひとつです」

●日本市場の魅力と今後の期待
― わずか30年前は、日本の企業が世界のトップ30にたくさんランクインしていました。しかし、この30年でトップ企業はほとんど米国の企業に入れ替わってしまいました。
この勢いを失ってしまっている日本において、日本のミレニアル世代やZ世代の起業家、ファウンダーをどのように見ていますか?なぜ日本のマーケットに注目するのでしょうか?

ファディ氏「どこに投資をするかは、GDPの数値だけでは決まりません。私たちの投資の中核は米国市場であり、それは地球上で最も大きな市場です。
しかし、それ以上に、どこにユニークな機会があり、長期的にはどこが世界により大きな付加価値を生むと考えられるかが重要なのです。

そう思いませんか?投資家や企業などに対して大きな経済的成果をもたらすために、私たちは当然このようなことをしています。

しかし同時に、その最大の原動力は、人類にとって最大の変化をもたらすこと、あるいはそもそも最大の価値を生み出すことにあります。
おっしゃる通り、この10年、あるいは10年以上で日本はリードポジションを奪われてきました。しかし、現在もGDP第3位の経済大国です。日本はそのリードを維持し、さらに拡大できる可能性がありますが、そのためには、日本以外の市場に打って出ることが必要です。

アフリカでは、中国の大企業がインフラを整備し、政府事業を獲得するために競い合っているのを目にします。スリランカやインドネシアでも同様です。
このような状況で、日本の企業はさらに強くプッシュする必要があります。これらの市場で日本が大きな足跡を残せば、今後数十年間は保証されるでしょう。

私たちの世代は、ソニーのように市場を動かす存在となってパラダイムを変えた企業を作ってきましたが、次世代にそのバトンを引き継がないといけません。その際、スタートアップ企業は、新しい市場で新しいプロダクトをテストする役割を果たすと思います。 また、その市場で何が起きているのかをリアルタイムに伝えることもできます。
まだ足がかりがない市場に進出して、ジョイント・ベンチャーやM&Aのステージを用意することもしたいと思っています。

日本という国を構成する文化的要素である、最適化や、120%の献身、そして取り組んでいることが何であれリスペクトをすること等、世界はそれをもっともっと見たいと思っているのです。

特に今は、いかにして多くのものを安く作るかが重要な時代になっています。しかし、それは必ずしも私たちが追い求めるべき原動力ではありません。大きなスケールで高品質のものを作ることこそ、もっと見せてもらいたいと思うことなのです。そしてそれは日本が得意とする領域なのです。

これが私が抱く日本市場の魅力であり、私が期待している理由です」

― 今回の対談の中で、海外の投資家が日本に投資しようとするときに、おそらくふたつの大きな問題があると指摘されていました。ひとつは、言語の問題、つまり英語を話せる日本人が多くないということです。もうひとつは、開示情報自体が少ないということですね。

DGDVは日本発のグローバルファンドとしてこのふたつの課題の解決に邁進しています。
HOFはDGDVと協力して、この日本市場で今後どのようなことを展望されていますか?

ファディ氏「正直に言って、DGDVチームと一緒に仕事をするのは楽しいことです。
私たちは常にコミュニケーションを取っていて、毎月のオンラインコールはもちろん、複数のSNSでもつながっています。
私たちが米国で見ていること、DGDVチームが東京や日本全国で見ていること、そして私たちがつまずいたことなどについてもお互いに共有します。

そして、興味深いファウンダーや興味深い分野に遭遇し、さらに深く掘り下げたいと思ったときにはいつでも連絡します。言葉の壁になりそうなものがあればサポートもしています。

全体として、日本のエコシステムに対する同じ長期的な命題を持ち、それを実現するために、私たちはさまざまなリソースを組み合わせ、適切な機会を見つけ、それを理解し、私たち自身で投資機会を呼び込むことができます。
そして、私たち自身の投資と他のグローバルな投資の両方を、その企業やエコシステムに引き込み、その成長とスケールアップを支援することができるのです。
従って、DGDVとの連携にはとてもワクワクしています」

野島「HOFとDGDVは同じようなビジョンを持っています。それが私たちが一緒に多くの投資をしている理由のひとつでもあります。
私たちは同じような分野、課題に関心を持っていて、日本だけでなく世界的なイノベーションを支援したいと思っています。それを共に叶えるためにも、今後もHOFと持続的な関係を築きたいと思っています。
そうした共通の命題を持つHOFと一緒に過ごす時間をとても楽しんでいます」

●日本以外の投資家から資金調達を計画している日本のファウンダーに向けて

ファディ氏「対談を通じて、私たちがなぜ日本に期待しているのか、そして日本が持つ機会についてお話しました。
それを踏まえて私からのメッセージは『自分を過小評価しないこと、長期的に考えること、そしてグローバル・シフトを活用すること』です。
異なる世界のダイナミズムの中で、日本は常に革新的で勤勉でいますが、極限まで最適化を追求し、何をするにも最高水準を目指すという基本原則はこれまでも、これからも変わりません。
そのため、新しいテクノロジーの時代においても、産業革命の時代と同じように、日本文化の良い側面を継続していけばいいのです」

野島「それは今まで私が聞いた中で最高のメッセージのひとつです。
多くの日本のファウンダーがまさにおっしゃっていただいた通りだと思いますし、海外の投資家と話すのは彼らの宿命のような気がしてならないのです。
でも、中には本当にシャイな人もいるし、海外の投資家と話すことに自信を持てない人もいる。だから、そういうメッセージは本当に重要だと思います。

日本人のファウンダーの皆さんがこの記事を読んで、自信を持って、本当に彼らが情熱を注いでいることを、その情熱のままに実行に移してくれることを願っています」

(※本記事は英語対談を元にした前中後編3編からなる日本語抄訳記事となります。)

https://dg-daiwa-v.com/hofxdgdv-1/

■DG Daiwa Venturesについて
社名:株式会社DG Daiwa Ventures
住所:東京都千代田区丸の内一丁目9番1号
設立:2016年7月1日
代表:代表取締役 大熊将人、阿部東洋
概要:次世代技術を有するスタートアップ企業への投資及び事業育成支援を目的として、累計約200億円を運用するベンチャーキャピタルです。GPのデジタルガレージが持つ投資ネットワーク・インキュベーション能力と、大和証券グループが持つファンド運営ノウハウを掛け合わせることで、投資先の事業成長を加速いたします。
URL:https://dg-daiwa-v.com/

 

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