2022年は、新型コロナウイルス感染症オミクロン株の急速な感染拡大とともにはじまりました。3年続くコロナ禍において、全職員がそれぞれの職務に、真摯に取り組んでいただいておりますことに、心より敬意と感謝を申し上げます。with/afterコロナのなか経済活動は再開する一方、燃料費・原材料費の高騰や様々な社会課題が表出するなか、将来を不安視する声も多いと思います。しかし、そのような時だからこそ、私たちは基本理念・使命に基づき、持続的に地域福祉を提供する存在であり続けることが重要です。さらに、2030年の創立100周年に向けて「聖隷みらい創造プロジェクト」を推し進めていきます。
少子化が進むなか、2023年は子ども家庭庁が設立され、子ども・親・家庭への育成・支援が一元化されます。聖隷も、未来を担う子どもたちの健全な育成に向けた支援を行いたいと考えています。そして、全ての利用者一人ひとりに丁寧にかかわり、地域の暮らしを守り、様々な課題にスピード感をもって対応していくため、組織や機能の再編を進めていきます。
- 社会福祉法人として最高の質を追求した事業を展開する
社会課題は多様化・複雑化しています。コロナ感染症拡大に伴い、病院受診や施設の利用控えによる病気やフレイル※1、また、子育てや介護に関連した離職、生活困窮やヤングケアラー問題など社会課題は様々です。私たちは、コロナ感染症の今後の状況を見据えて事業運営をしっかりと構築し、社会課題解決に向けて柔軟に対応しなければなりません。聖隷の強みは、多岐に渡る事業を総合的に提供していることです。その強みを活かし、地域ごとに事業戦略を立案し、利用者を中心としたサービス連携を進め、生活圏域を軸に事業部体制・施設機能の再編を検討します。さらには医療・福祉を問わず、必要なサービスにつながる総合的な相談体制構築も必要と考えています。それぞれの地域で困っていることや、制度の狭間のニーズに対応し、地域のセーフティネットとしての役割を果たします。地域に向けた最高の質の追求が聖隷の成長につながるよう、地域共生社会の実現に向けて取り組んでいきます。
※1 フレイル:加齢や疾患によって心と体の働きが弱くなってきた状態のこと。
- 人材の確保と育成を推進する
ますます増大する医療・福祉などのニーズに対し、質の高いサービスを提供し続けるためにも、共に働く仲間を増やし、長く働き続けられる組織であることが求められます。労働環境の整備とともに、仕事内容を評価した処遇の在り方についても検討を行います。聖隷の事業は、地域の医療・福祉を支える働きがいのある仕事です。社会に貢献したい、ワクワクする仕事がしたいという想いに応えるため、法人内ベンチャー制度(新規事業提案制度)を立ち上げます。多様な人材がやりがいを持ってキャリアデザインを実現でき、エンゲージメント※2が高まる仕組みを整え、聖隷の理念を体現できる人材育成を強化します。
※2 エンゲージメント:働く人の企業に対する愛着心や思い入れを表すもの。個人と組織が一体となり、双方の成長に貢献しあう関係とされている。
- 大規模広域法人としての強みを活かした仕組化を推進する
2022年2月のウクライナ侵攻は世界に衝撃が走りました。聖隷は「ウクライナ希望のつばさSHIZUOKA」に参画し、避難民に手を差し伸べ、住宅・物資の提供を行いました。また、福祉施設において感染症が発生した際には、病院の感染制御チームと協働し、いち早く感染防止対策を行うなど、大規模広域法人としての総合力が発揮されました。このような、地域・事業部を越えた連携を、さらに進めていきたいと考えています。
労務・経理・保険請求事務・情報システムなどは協同化・集約化を進め、より一層の業務効率化と生産性向上を追求します。また、法改正の対応だけでなく、各種制度を検証する仕組みを考えます。BCP(事業継続計画)や健康経営の情報についても、ノウハウの蓄積を共有し、大規模広域法人として質の向上を図ります。
- 聖隷DXを推進する (DX…デジタル・トランスフォーメーション)
介護を必要とする施設においては見守りシステムの導入が進んでいます。2023年3月には対象施設のベッドの約60%に導入される予定となっており、これにより、利用者の安全性向上及びサービスの質向上が期待され、業務内容の効率化につなげていきたいと考えています。2023年は、保健・医療・福祉分野における利用者情報を結びつけ、効果的に活用するための検討プロジェクトを立ち上げます。また、現在、検討が進められている利用者価値向上を目的とした、スマートフォン向け「聖隷アプリ」も運用を開始したいと考えています。これらデジタル化を推進するにあたり、懸念されているサイバー攻撃の脅威への対策も強化します。
- ディーセント・ワークを推進する (ディーセント・ワーク…人生と両立できる働きがいのある仕事)
職員には、家族や趣味など自分のための時間と、仕事の時間とのバランスをとりながら、いきいきと意欲を持って働き続けてもらいたいと考えています。職員がいきいきと働き、家族も含めて健康であることへの取り組みが、利用者への質の高いサービス提供につながり、ひいては事業継続につながる健康経営を強力に推進していきます。そして、働き方改革を進め、職員の働きやすさ、満足度の向上につながる施策を実行します。
- 現有資源を有効に活用し経営環境の急変にも揺るがない財務体質とする
感染症や国家間の紛争が、社会・経済に大きな影響を及ぼす状況下で、私たちの事業を取り巻く経営環境は先が見通しにくいものとなっています。2023年度は聖隷浜松病院S棟耐震化増改築工事、聖隷こども発達支援センターかるみあ和合増築工事が竣工を迎えます。これまでの大規模投資に対しても、計画と実績の分析を行うとともに、必要に応じ事業の見直しを行い、新たな事業投資に備えます。
- 皆さん一人ひとりの行動が未来の聖隷を創ります
聖隷は、SDGsとカーボンニュートラル※3という世界共通の新たな価値観を取り入れ、持続可能な社会・地域共生社会の実現に向けて取り組んでいます。困っている人がいれば助ける、誰もやらないが必要なことは最後までやり遂げる。地域における公益的な取組など、既成概念にとらわれず新たな価値を創造していきます。
聖隷の事業は人と人との結びつきが事業の根幹となっています。まずは、聖隷で働く仲間を大切にする。仲間を大切にするからこそ、利用者を大切にできます。職員一人ひとりが膠漆之心※4(こうしつのこころ)を大切に活躍することを期待します。
※3 カーボンニュートラル:温室効果ガスの排出量(+)と吸収量(-)を合計してゼロにすること。
※4 膠漆之心(こうしつのこころ):膠(にかわ)と漆(うるし)のように強く離れがたい固い絆の例えです。仲間との絆、経営陣と職員の絆すなわち相互理解を深めることを大切にしています。
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【出来事】
50年前(1973年)
■社会福祉法人聖隷保養園を社会福祉法人聖隷福祉事業団に改称
■聖隷病院を聖隷三方原病院に改称
■有料老人ホーム「浜名湖エデンの園」開設
40年前(1983年)
■聖隷予防検診センタービル完成(現:聖隷三方原病院管理棟)
30年間(1993年)
■特別養護老人ホーム「森町愛光園」開設