12月1日は「世界エイズデー」:2021年には子ども31万人が新規HIV感染~コロナ禍等でおとなとの治療格差が拡大【プレスリリース】

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14年前にHIV陽性と判明した5人の子どもの母親と生後3週間のティティアンちゃん。投薬治療を続けており、子どもたちは健康に成長している。(ブルキナファソ、2022年5月撮影) © UNICEF_UN0640797_Dejongh14年前にHIV陽性と判明した5人の子どもの母親と生後3週間のティティアンちゃん。投薬治療を続けており、子どもたちは健康に成長している。(ブルキナファソ、2022年5月撮影) © UNICEF_UN0640797_Dejongh

【2022年11月28日 ニューヨーク発】

ユニセフ(国連児童基金)が発表した、子どもとHIV/エイズに関する世界の現状の全体像を示した報告書によると、2021年には0歳から19歳までの子どもと若者約11万人が、エイズに関連する要因で死亡しました。さらに新たに31万人がHIVに感染しており、HIVとともに生きる子どもと若者の総数は270万人となりました。

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12月1日の世界エイズデーに先立ち、ユニセフは、過去3年の間、子どもや青年期の若者および妊婦に対するHIVの感染予防と治療に進展がほぼ見られず、多くの地域では新型コロナウイルス感染症の流行以前の予防・治療サービス水準に未だ達していないと警鐘を鳴らしています。これは、子どもとおとなが受けられるHIV感染症治療には格差が存在し、拡大し続けているという現状に加えて課題となっています。

ユニセフのHIV/エイズプログラム部門副チーフのアニュリタ・ベインズは、「子どもたちへのエイズ対策は、長い間おとなへのそれに後れをとってきましたが、この3年間の停滞状況は、前例がありません。あまりにも多くの若い命が病気と死の危険にさらされています。体系立って検査と感染者の特定をし、命を守る治療を受けさせることができていないため、子どもたちが取り残されています。進展がないまま一日が過ぎるたび、300人以上の子どもや若者がエイズとの闘いに敗れ亡くなっているのです」と述べています。
 

HIVに感染し、ウイルス量の検査を受ける9歳のロナルドさんと母親。体調を崩していたが、投薬治療のおかげで容態は良くなりつつある。(ウガンダ、2022年4月撮影) © UNICEF_UN0656420_SchermbruckerHIVに感染し、ウイルス量の検査を受ける9歳のロナルドさんと母親。体調を崩していたが、投薬治療のおかげで容態は良くなりつつある。(ウガンダ、2022年4月撮影) © UNICEF_UN0656420_Schermbrucker

HIVとともに生きる人々全体のわずか7%を占めるにすぎないにもかかわらず、子どもと若者は、2021年にエイズ関連の全死亡者の17%を、新規HIV感染者の21%を占めました。不公平を生む要因に対処しない限り、子どもと若者のエイズ撲滅は遠い夢であり続けるだろうと、ユニセフは警鐘を鳴らしています。

しかし報告書では、より長期的な動向は引き続き好ましいと指摘しています。0歳から14歳までの子どもたちのHIV新規感染は2010年から2021年にかけて52%減少し、15歳から19歳までの新規感染も40%減少しています。同様に、HIVとともに生きる妊婦が抗レトロウイルス療法(ART)を生涯受け続ける割合は、10年間で46%から81%に増加しました。

HIVとともに生きる子どもの総数が減少傾向にある一方で、子どもとおとなの治療格差は拡大し続けています。ユニセフのHIV対策優先国において、抗レトロウイルス療法を受けている子どもの割合は2020年には56%でしたが、2021年には54%に低下しました。この減少は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックやその他の世界的な危機が疎外と貧困を拡大したことなどいくつかの要因によるものですが、子どもたちのエイズ対策の後退と、対策を進める政治的意思の世界的衰退を反映しているものでもあります。世界全体で抗レトロウイルス療法を受けている子どもの割合は52%とさらに低く、過去数年間でわずかに増加したにすぎません。
 

最南東部のディファにある母子センターで、スタッフが行うHIVの啓発活動に参加し、妊娠中に検査を受けることの重要性を学ぶ母親たち。(ニジェール、7月撮影) © UNICEF_UN0684336_Dejongh最南東部のディファにある母子センターで、スタッフが行うHIVの啓発活動に参加し、妊娠中に検査を受けることの重要性を学ぶ母親たち。(ニジェール、7月撮影) © UNICEF_UN0684336_Dejongh

一方、HIVとともに生きるすべての成人で抗レトロウイルス療法を受けている人の割合は76%と、子どもよりも20ポイント以上高いものでした。子どもと妊婦(81%)の差はさらに開いています。驚くべきことに、HIVとともに生きながら抗レトロウイルス療法を受けていない0歳~4歳の子どもの割合は、過去7年間で上昇しており、2021年には2012年と同程度の72%にまで上昇しました。

アジア太平洋地域、カリブ海地域、東部・南部アフリカ、中南米、中東・北アフリカ、西・中央アフリカといった多くの地域でも、2020年に妊娠中の女性や授乳中の母親で治療を受けている人の割合が低下し、2021年にはアジア太平洋地域と中東・北アフリカでさらに低下することが予想されています。HIV母子感染の件数も最も多い西部・中部アフリカ地域を除き、前述のどの地域も治療を受けている人の割合は2019年のレベルまで回復していません。こうした混乱は、新生児の命をさらなる危険にさらしています。妊娠している女性の診断ができず、治療が開始されなかったために、2021年には7万5,000人以上の子どもの新規感染が発生しました。

「最も弱い立場にある人々に手を差し伸べるための新たな政治的コミットメント、戦略的パートナーシップ、そして支援プログラムを拡充するためのリソースがあれば、子ども、若者、妊婦のエイズをなくすことができます」とベインズは述べています。

 

 

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■ HIV/エイズに関連するユニセフの動画を、公式YouTubeアカウントにてご覧いただけます。
・『ウズベキスタン:「私をハグしてください」~HIV陽性の女の子が伝えたいこと』
https://youtu.be/WLcXboymSPc
・『ナミビア、リヴェーの「希望」:HIVと生きる』
https://youtu.be/Y7kXzbt8yRw

■ ユニセフについて
ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念を様々な形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています。 https://www.unicef.or.jp/
※ ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する33の国と地域を含みます

■ 日本ユニセフ協会について
公益財団法人 日本ユニセフ協会は、先進工業国33の国と地域にあるユニセフ国内委員会のひとつで、日本国内において民間として唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、政策提言(アドボカシー)を担っています。 https://www.unicef.or.jp/

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