遼寧の味を日本で満喫――。美食を通して文化交流を図るグルメイベント「日本における遼寧の味 ― 遼寧料理を日本の中華レストランへ」の試食会が21日、東京都内でスタートした。テーマは海の幸。日中の名シェフが競演し、大連の中華と和食でゲストを魅了した。
初日の舞台は、新宿区にある老舗中華料理店「玉蘭」。新鮮な魚介類をふんだんに使い、濃厚な味に仕上げた遼寧省・大連の海鮮料理と、ピンク色に輝く中トロの刺し身が円卓を彩る。試食に参加した約20人のゲストは、日中の美食を堪能した。
中国側は、世界中餐業連合会名厨委員会日本分会会長で、シェフの王建華氏が腕を振るった。日本からは「天厨菜館天王洲店」の吉田一弘料理長、「築地青空三代目銀座三越店」の木村直行板長が厨房(ちゅうぼう)に立った。
■目と舌で楽しむ
王氏は、イカやエビの炒め物「海鮮全家福」に野菜の彫刻(飾り切り)を添え、華やかな一品に仕上げた。軽やかな手つきで、鳥や竜を模した繊細な彫刻を施した。
遼寧料理は、「食材が新鮮であることと、食材の選択がすごく大事になってくる」と王氏。この日のメニューは、遼寧料理の特徴である、濃厚な味わいの品が並んだ。
メニュー:
刺身
海鮮全家福(魚介類の炒め物)
蔥爆海參(ナマコと長ネギの炒め物)
軟炸蝦仁(軟らかいエビフライ)
糖醋魚(コイの甘酢あん)
炸小黃魚(イシモチの空揚げ)
辣炒蜆子(あさりのピリ辛炒め)
紅燒帶魚(タチウオの煮込み)
海蠣子湯(かきのスープ)
遼寧料理の特徴について王氏は「一つの料理でいろんな味が楽しめる。例えば野菜の彫刻では、目で味わい、それから口で味わうという、さまざまな楽しみ方をしてもらえる」と話した。
■海鮮が一番好き
在日中国大使館の李万鵬領事は18日の開幕式にビデオメッセージを寄せ、自然が豊かな遼寧省は「六山一水三野」と呼ばれ、渤海湾では中国で最もおいしいとされる魚介類が捕れると説明した。
大連の海鮮料理では、魚の空揚げが特に有名だ。「日本でも海鮮は有名なので、共通点があるのでは」と王氏は語る。
ゲストとして試食した大連生まれの鄒暁丹さんは、海鮮料理が一番好きだと話す。「ふるさとの懐かしい味がして感動した」と、顔をほころばせた。
■「食は万国共通」
「天厨菜館天王洲店」の吉田料理長は、タチウオの煮込み「紅燒帶魚」と、軟らかいエビフライ「軟炸蝦仁」を振る舞った。吉田氏は「天厨菜館」で25年のキャリアを持ち、中華料理一筋でやってきた。
今回のイベントについては、「新鮮。なかなかこうやって現地のシェフが来てくれて一緒に料理する機会はない」と話し、食の交流の場に料理人が参加する意義を強調した。
「築地青空三代目銀座三越店」の木村氏は、豊洲で仕入れた本マグロ(中トロ・赤身)と、三重県で水揚げされたカンパチの刺し身を振る舞った。すし職人歴35年の木村氏は、「おいしいものは万国共通」だとして、今回のような食を通じた交流機会が広がれば、と期待する。
今回のイベントでは海鮮料理の他、「餃子とすしの出会い」や「遼寧料理特別セッション試食会」などをテーマに、日中の料理人が美食を披露する。