冷房機器の使用で、WBGTが28.6℃から24.4℃と2ランク下降 サーモカメラの撮影画像でも変化が明らかに!

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一般財団法人 日本気象協会(本社:東京都豊島区、理事長:長田 太、以下「日本気象協会」)が推進する「熱中症ゼロへ」プロジェクト(以下、本プロジェクト)は、夏の室内での温度変化や冷房の効果、キッチンで火を使った場合の環境変化を調査するため、サーモカメラによる撮影、およびWBGT※の測定を行いました。
※WBGT(暑さ指数):体と外気との熱のやりとり(熱収支)に与える影響の大きい、「気温」、「湿度」、「日射・放射」、「風」の要素をもとに算出された指標です。暑さ指数(WBGT)は熱中症リスクを判断する数値として、運動時や作業時だけでなく、日常生活での指針としても活用されています。

 

【観測結果のトピック】​

  • 猛暑日において、暑さ対策をしない室内の温度は日中34.5℃を観測、WBGTは「厳重警戒」ランクと、熱中症を引き起こす危険性が高い環境に。
  • エアコン・サーキュレーターをつけて1時間後の室内のWBGTは28.6℃→24.4℃と「厳重警戒」から2ランク下がり、「注意」ランクに下降。

 

1.観測実験の概要
【目的】
熱中症は屋外だけでなく、室内にいても条件次第ではかかる可能性がある。室内における環境変化の様子を知ることで、注意すべきポイントや必要な対策を改めて確認してもらう。
【実施日時・場所・天候】
日時:2021年8月5日(木) 14:00~16:00頃
場所:東京都内 木造2階建て家屋
   和室(2階・南向き)、洋室(2階・南向き)、キッチン(2階・西向き)
天候:晴れ、最高気温 36.5℃(最寄りの観測地点八王子にて13:58観測)
【観測項目と観測内容】
◎観測項目:サーモカメラ画像、WBGT
◎観測内容:
①暑さ対策なし条件下での室内環境変化(和室・洋室)
②エアコン、サーキュレーター稼時時の室内環境変化(洋室)
③調理中の環境変化(キッチン)

2.結果暑さ対策なし条件下での室内環境変化(和室・洋室)
【観測の結果】
エアコンやサーキュレーターなどを使わず、暑さ対策を全く行わなかった14:00頃の各部屋の様子。

・室温はどちらも34.5℃を観測。
・WBGTは和室で29℃、洋室で29.4℃と、どちらも「厳重警戒」ランクに。
・日中は窓から差し込む日ざしの影響も受けて、窓際床の表面温度は2部屋共に36℃前後まで上昇。

【まとめ】
室内全体が暑くなり、洋室ではカーテン上部の隙間から熱が入り込む様子もうかがえた。室温は日当たりなどでも変化するため、過ごす部屋の窓の方角にも注意が必要。また、日が当たる窓際が熱くなることもある。
室内にいても、自分のいる環境次第では熱中症にかかる危険性がある。温湿度計や熱中症計などの温度やWBGTを測れるアイテムを置き、客観的に周りの環境を確認できるようにすることが大切。

3.結果エアコン、サーキュレーター稼時時の室内環境変化(洋室)
【観測の結果】
15:00~16:00にかけて、洋室のみエアコン、サーキュレーターの順で機器を稼働させ、暑さ対策を行っていない和室とWBGTを比較した。WBGTの変化と洋室におけるサーモカメラ画像は次の通り。

 

​15:00頃

【初期状態】
WBGTは、洋室28.6℃、和室29.2℃と「厳重警戒」ランク

 

 

​15:20頃

【エアコン入から20分後】
部屋の下部分から冷え始め、壁や床も徐々に温度が低くなる

 

 

​​15:30頃

【エアコン入から30分、サーキュレーター入から10分後】
サーキュレーターを稼働させ、部屋の空気を循環

 

 16:00頃

【エアコン入から60分、サーキュレーター入から40分後】
エアコンの設定温度28℃に近しい値まで、部屋全体の表面温度が下がっていく

 

・暑さ対策をしなかった和室では、観測終了の16:00でWBGTが28.9℃と、開始前の値とほとんど変わらず1時間を通して厳重警戒となった。
・和室に比べ、同じ南向き・2階でも、対策を行った洋室ではWBGTが24.4℃と「厳重警戒」から2ランク下がり、「注意」ランクまで落ち着いた。

【まとめ】
冷房機器を使用して、室温を適度に下げることが大切。冷えなどが気になる場合は、エアコンの設定を変更する、過ごす場所を変える、部屋の温度が均一になるように工夫して、熱中症になりにくい環境を維持する必要がある。
間取りや家具の配置、日当たりなどによっては部屋の温度にムラが生まれ、必ずしも「エアコンの設定温度」=「室内温度」とはならないことにも注意。部屋の温度が均一になるようにサーキュレーターや扇風機を併せて活用する。

4.結果:調理中の環境変化(キッチン)
【観測の結果】
高温多湿になりやすいキッチンも熱中症に特に注意が必要な場所の一つ。西日の入りこむ夕方16:00頃、3口コンロ全てで鍋の水を沸騰させた際の温度変化の様子を撮影した。
※16:25の段階では、普段の調理工程を再現し、鍋のふたも開け、換気扇も回している状態

 

・鍋に火をかけた後から、キッチン内でのWBGTは上昇。観測時間内での最高は、16:23、16:24時点の28.6℃で「厳重警戒」ランク。
・画像右側の窓から西日も入り込み、キッチン全体が暑くなっている。

【まとめ】
キッチンで火を使って調理すると、熱とともに蒸気による湿気が発生して、高温多湿の環境が生まれるため注意が必要。夏場はできるだけ火を使わない調理方法に切り替えるなど工夫した方が良い。
(参考:手軽でおいしい!火を使わない暑さ対策レシピhttps://www.netsuzero.jp/dietitian/recipe02
キッチンの他にも冷房の効いていない場所(洗面所、お風呂、トイレなど)は高温多湿になりやすいので注意。

 

5.熱ゼロ研究レポートについて
熱中症は日ざしのある屋内だけではなく、環境・からだ・行動などの条件によっては室内でも発生します。室内での熱中症は、室温や湿度の上昇など環境要因で起こるほか、屋外での活動後に室内で適切に体を冷やすことができず熱中症になる場合や、夜間に冷房を使用しないことで屋外の気温が下がっても室温が上がり、寝ている間に熱中症になる場合もあります。
特に高齢者の方は温度に対する感覚が弱くなるため、室内でも熱中症にかかりやすいといわれています。本観測は、夏場の室内環境の変化について、視覚的・客観的に暑さへの気づきを促すと共に、適切な冷房の使用を呼びかける目的で実施しました。本格的な暑さを迎える前に、家族などと熱中症や冷房の使用について確認することが大切です。

本観測の詳細はプロジェクト公式サイト「熱ゼロ研究レポート」にて、2022年6月13日(月)に公開している「真夏の室内環境変化に関する観測調査」から確認することができます。
https://www.netsuzero.jp/netsu-lab/lab12

「熱中症ゼロへ」プロジェクトとは
熱中症にかかる方を減らし、亡くなってしまう方をゼロにすることを目指して、一般財団法人 日本気象協会が推進するプロジェクトです。2013年夏のプロジェクト発足以来、熱中症の発生に大きな影響を与える気象情報の発信を核に、熱中症に関する正しい知識と対策をより多くの方に知ってもらう活動を展開してきました。活動10年目となる2022年は、「気候変動の適応策としての熱中症対策」をテーマに活動を実施していきます。

一般財団法人 日本気象協会について
1950年に誕生した日本気象協会は、天気予報に代表される気象予測事業に加え、再生可能エネルギー、環境アセスメント、大気解析事業、防災・減災・安全管理に関する事業など、気象に関するコンサルティング事業を通じ、公共に資する企業活動を展開しています。

・「熱中症ゼロへ」のロゴマークは日本気象協会の登録商標です。

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