日本は「世界でも強靭性(レジリエンス)が高い国」の一つに、一方で他者・隣人や政府への信頼が薄いという結果も

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安全に関する世界的な慈善団体であるロイドレジスター財団の最新の報告書によると、日本は災害に対する強靭性が世界の上位20%に入ることが明らかになった一方、地域社会の支援レベルが低いと感じている人が多いことも浮き彫りになりました。
この調査結果は、ギャラップ社の協力のもと、ロイド レジスター財団が実施した「世界危機管理世論調査」の最新の報告書によるもので、121カ国、12万5000人以上のデータをもとに、国民が災害発生時に自分たちのコミュニティや自国のインフラ、政府の対応についてどのように感じているかについて明らかにしたものです。
‘A Resilient World? Understanding vulnerability in a changing climate.’ [ https://wrp.lrfoundation.org.uk/ ]

2021年に収集されたデータによれば、日本の回答者の約半数(48%)は、隣人が自分の安否について気にかけていないと考えており、これは世界平均(32%)を16%ポイントも上回るという衝撃的な結果となりました。また、過去1ヶ月以内に見知らぬ人を個人的に助けたことがあると回答した人の割合は20%と、世界平均(32%)を大きく下回っており、どちらの指標においても日本は世界最下位となっています。

この結果は、新型コロナウイルス感染症感染拡大以降、自殺者が増加したことを含め、日本における孤独の影響について報告された公式データと関連付けることにより明らかになったものです{1}。これを受け、日本では孤独・ 孤立対策担当大臣を指名して、政府一丸となって孤独・孤立対策に取り組んでいます{2}。

また、51%の回答者は、政府が国民の社会福祉について「全く」気に掛けていないと感じており、これは世界平均の37%を大きく上回っています。

一方、日本の回答者は、個人の強靭性(レジリエンス)(世論調査のレジリエンス・インデックスを算出するための4つの側面の1つ)に強さを発揮、世界平均(0.46)を約40%も上回る0.63であった他、家庭の強靭性(レジリエンス)も世界平均0.54に対して日本の回答者は0.64と強さを示しています。個人の強靭性(レジリエンス)は、行為主体性、自己効力感および教育達成度を測定する2つの調査項目を分析することにより算出、また家庭の強靭性(レジリエンス)は、金融資産、計画性、通信へのアクセスに着目しています。

ロイドレジスター財団のエビデンス&インサイト担当ディレクター、サラ・カンバーズ博士は、次のように述べています。
「世界危機管理世論調査は、世界中の人々の生活に最も影響を及ぼしているのはどのようなリスクなのか、政策立案者の洞察を促進することを目的としています。私たちの調査結果は、自然災害やその他の災害の原因となりうるものに直面したときに、地域社会と協力して人々を支援するのに役立ちます。

最新の調査では、日本国民は、隣人からの支援等に対する信頼度が著しく低い一方で、個人や家庭の強靭性(レジリエンス)への依存度が高いことが示されています。政策立案者が地域社会の支援強化に一層力を入れることができれば、全体としてさらに高いレベルの強靭性(レジリエンス)を促進することができるでしょう。」

本報告書は、以下よりダウンロードいただけます。
[ https://wrp.lrfoundation.org.uk/2021-report-a-resilient-world-understanding-vulnerability-in-a-changing-climate/ ]
日本の調査結果
[ https://wrp.lrfoundation.org.uk/country-results-2021-resilience/world_risk_poll_results_2021_resilience_japan.pdf ]
調査実施国別データの調査結果
https://wrp.lrfoundation.org.uk/data-resources/a-world-of-risk-country-overviews-2021/ ]

ロイドレジスター財団は、リスクを低減し回復力を向上させるために、世界危機管理世論調査のデータを用いた、さらなる研究や介入を行うための資金を提供しています。

詳しくは世界危機管理世論調査のウェブサイトをご覧ください。
https://wrp.lrfoundation.org.uk/news-and-press/ ]

[1] Fujii, R., Konno, Y., Tateishi, S., Hino, A., Tsuji, M., Ikegami, K., Nagata, M., Yoshimura, R., Matsuda, S., & Fujino, Y. (2021). Association between time spent with family and loneliness among Japanese workers during the C-19 pandemic: A cross-sectional study. Frontiers in Psychiatry, 12, 786400.
[ https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8692760/ ]
[2] Mitsunori, I. (2021, December 27). A society with no one to turn to. Nippon.
[ https://www.nippon.com/en/in-depth/d00763/ ]

編集後記
世界危機管理世論調査について
ロイドレジスター財団の「世界危機管理世論調査」は、人々の安全に対するリスクについての心配や被害に関する初めての世界的調査です。
今回の調査は、2021年にギャラップ社が世界121カ国で実施した約12万5000件のインタビューに基づく世論調査の第2版です。これは、新型コロナウイルス感染に伴う制約により、調査対象国は、2019年世論調査の142カ国から減少しています(2021年世論調査対象国の全リストは、報告書の付録3をご参照ください)。また、可能な場合は電話による聞き取り調査を実施しました。
データには、安全やリスクに関する公式データが皆無、もしくはほとんど存在しない場所も含まれているため、世界各地の安全に関する課題の性質や規模を体験者の生の声として定義付けするユニークな資料となっています。
本データは、政府、規制当局、企業、NGO、国際機関が、地域社会と連携し、人々をより安全にするための情報提供、政策策定、介入のために活用することが可能であり、またそうすべきである。

世界危機管理世論調査の詳細については、以下のページをご覧ください。
https://wrp.lrfoundation.org.uk/ ]

レジリエンス・インデックスについて
世界危機管理世論調査は、個人、家庭、地域社会、社会レベルの様々な要因に基づき、国や人口構成別に人々がショックに対しどの程度対処できるかを0から1までのスコアで示したものです。また、4つのレジリエンス領域(個人、家庭、地域、社会)において、強靭性(レジリエンス)の高さを各国別に示しています。2022年9月14日より、世界危機管理世論調査のウェブサイトにて、ビジュアル化した指数の詳細を公開しています。

ロイドレジスター財団について
ロイドレジスター財団は、研究、革新、教育の促進を通じ、より安全な世界を築くことを目的とする政治的・財政的に独立した世界的な慈善団体です。「世界危機管理世論調査」を活用し、世界的に最も差し迫った安全上の課題に焦点を当て、安全に影響を与える複雑な要因を理解するための最良の証拠と洞察を確立する活動を行っています。

ロイドレジスター財団については以下のサイトをご覧ください。
https://www.lrfoundation.org.uk/ ]

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