- 夏~秋口以降は「冷凍食品」「飲料」が値上げの中心に 円安や物流上昇に伴う値上げも散見
- 値上げペース、前例にない規模・スピードに 年内の「再値上げ・再再値上げ」の動きも
「値上げラッシュ」が止まらない。主要メーカー105社における、2022年以降の価格改定計画(値上げ、実施済み含む)を追跡調査した結果、5月末までに累計1万789品目で値上げの計画が判明し、半年間で1万品目を超えた。このうち、約6割の6285品目では6月までに値上げが行われる。また、夏も値上げが続き、7・8月の値上げ品目数は合計3000品目を超えるほか、8月の値上げは1600品目を超え単月としては今年最多となる。9月以降も新たに1000品目超で値上げが判明しており、7月以降の値上げ品目累計(4504品目)は、今年全体のうち約4割を占める。各品目の価格改定率(各品目での最大値)は、平均で13%に達し、前月から1pt増加するなど、値上げ幅も広がった。
引き続き「食用油」と「小麦粉(製粉)」の価格急騰による影響が大きかった。加えて夏以降の値上げには原油高に伴う包装資材や容器、物流費の高騰、近時に進んだ円安による輸入コストの上昇を背景に商品価格を引き上げるケースが目立ち、酒類・飲料でそうした傾向が強くみられる。
夏~秋口以降は「冷凍食品」「飲料」が値上げの中心に 円安や物流費上昇に伴う値上げも散見
食品分野別に値上げとなった品目をみると、最も多いのは加工食品で4288品目が判明した。前月から約400品目増加し、全品目のうち唯一4000品目を超えた。また、6割超が6月までに値上げを実施するほか、値上げ率平均が前月から拡大し、平均で14%となった。小麦価格と油脂の調達価格高騰を背景にした値上げが多いなか、原油高に伴う物流コストの上昇、食肉など円安による輸入食材の上昇といった影響が広がっている。また、冷凍食品など一部の食品では、北米でのスケソウダラ漁不振によるすり身価格の上昇など、魚価上昇に伴う値上げの動きもみられた。調味料(2153品目)でも値上げ率平均は11%と前月から拡大し、品目も400品目超増加した。引き続き、菜種油など食用油の価格高騰を価格に反映する動きが続いた。
酒類・飲料は2263品目と前月から倍増し、全品目中で最も増加品目が多いほか、7月以降の値上げが8割超を占める点が特徴となる。ビール類などでは麦芽・トウモロコシ・粗粒アルコールの価格上昇も反映して、14年ぶりの値上げラッシュとなる。炭酸飲料など清涼飲料水もペットボトルや缶の原料費高騰、物流費の上昇といった負担増を背景に、価格が引き上げられるケースが目立つ。
値上げペース、前例にない規模・スピードに 年内の「再値上げ・再再値上げ」の動きも
世界的な食料品相場の上昇に加え、原油価格の高騰に伴う物流費や原材料費の値上がり、急激に進んだ円安など全方位でコスト増加が続いている。これまで、内容量を減らして値段を据え置く「ステルス値上げ」や、小幅な値上げを数回行うことでコストアップを吸収し、消費者への影響を極力抑制してきた企業でも全面的な価格改定に踏み切るケースが相次いでいる。これらの動きは、原材料価格の上昇ペースが企業努力で制御可能な範囲を超えていることの証左といえよう。
また、値上げが多く実施される夏に加え、9月以降も「値上げラッシュ」が続く可能性が出てきた。原材料以外にも原油価格の上昇から包装資材やPETボトル容器などのコスト上昇が響いており、10月にはビールや炭酸飲料などでも価格引き上げを発表するなど、原油価格の高騰による影響が各食品に今後広く波及する見通しとなる。また、食材など原材料でも食肉や魚介類など多種多品目で価格高騰が続いており、価格改定を行ったもののコスト上昇を十分に吸収できなかった企業では、年内の再値上げ・再再値上げといった動きが前例にないペースで進む可能性が高い。
[注] 品目数および値上げは、各社発表に基づく。また、年内に複数回値上げを行った品目は、それぞれ別品目としてカウントした。値上げ率は発表時点における最大値を採用した。なお、価格据え置き・内容容量減による「実質値上げ」も対象に含む