<カプセルの再生>
取り外したカプセルを再生する計画は、2020年夏から進められてきました。本来はカプセルを交換することでメタボリズムの実現を目指していましたが、建物の老朽化や資金的な問題、最終的にはコロナの追い打ちにより断念。何とかして歴史的建築物の一部でも後世に残したいとの思いから、管理組合と協力して建物所有者と交渉を続けてきました。解体前に写真や映像で建物の記録を残すことも、当時のオーナーの協力により実現しました。
解体前の2022年4月に、再生するカプセルの内装を生け捕りして倉庫に保管しました。その後カプセル内のアスベストを専門業者が除去し、カプセルそのものはスケルトンの状態で再生工場まで運搬されました。搬送は7月後半から始まり、再生される23カプセルすべてを運び終えたのは8月31日でした。カプセルの劣化具合は思った以上にひどく、先行して運ばれたカプセルから外装を補修し、スケルトン状態に先に生け捕りした内装パーツを取り付けていきます。新品のカプセルを1から作るよりも時間と費用のかかる作業です。
<カプセルの活用方法>
カプセルは2つの目的で再生します。1つは美術館等での展示です。黒川紀章建築都市設計事務監修の下、解体前に救出した棚や照明、オーディオ、ユニットバスなどの内装を組み込み、50年前の竣工当時のカプセルを作り上げます。解体時には破損してほとんど存在しなかった丸窓のブラインドや、マットレスの形状が特徴的なベッドなども再現することで、当時の中銀カプセルタワービルを体感していただきます。
もう1つは宿泊施設や商業施設での活用です。カプセルの外装のみを竣工当時の状況に再生し、内装はパートナー企業、団体で自由にカスタマイズしていただきます。解体前の中銀カプセルタワービルはリノベーションされたカプセルが多く存在しました。和室やアンティーク仕様など、丸窓以外はオリジナルの内装を想起することができないカプセルもありました。それを面白がり、リノベーションを目的で購入される方もいらっしゃいました。新たな用途にも積極的に取り組んでいただきたいと思います。
<パートナー企業、団体の募集>
カプセル譲渡についての問い合わせは多く寄せられています。展示用カプセルは特に海外の著名美術館からの問い合わせが多く、アメリカ、ヨーロッパ、アジアとバランスよく配置したいと考えています。新たな活用についても宿泊施設や商業施設、店舗、学校、デザイン会社等からお声掛けをいただいています。2022年12月から順次完成したものが出庫されますが、まだ若干余裕がありますので、活動趣旨に賛同いただける方は使用目的をお知らせください。カプセルそのものは無償で譲渡いたしますが、再生にかかる修繕費用の一部と、設置場所までの運搬費用をご負担いただきます。詳細は保存・再生プロジェクトか黒川紀章建築都市設計事務所までお問い合わせください。
<中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクトについて>
2014年に保存を望むオーナーと住人を中心に結成。2015年11月『中銀カプセルタワービル 銀座の白い箱舟』(青月社)、2020年12月『中銀カプセルスタイル:20人の物語で見る誰も知らないカプセルタワー』(草思社)、2022年3月『中銀カプセルタワービル 最後の記録』(草思社)を出版。管理組合と協力体制を構築することで、見学会の開催や、取材、撮影のお手伝い、またコミュニティーの形成にも力を注いできました。
公式ウェブサイト:https://www.nakagincapsuletower.com/
Facebook:https://www.facebook.com/NakaginCapsuleTower
instagram:https://www.instagram.com/nakagin_capsule_tower/
Twitter:https://twitter.com/nakagincapsule
<株式会社 黒川紀章建築都市設計事務所について>
黒川紀章は、1960年弱冠26歳で建築の理論運動メタボリズムを提唱し、機械の時代から生命の時代への変革を主張してきました。設計活動は世界20ヵ国におよび、世界各地で完成した作品は高い評価を得ており、フランス建築アカデミーのゴールドメダル等を多数受賞しました。2007年に黒川紀章が他界した後、黒川紀章建築都市設計事務所は創立者黒川紀章によって構築されたブランドを継承し、国内外で設計活動を行っています。近年では、広島現代美術館改修(2022年竣工予定)、福井県恐竜博物館増築改修(2023年竣工予定)、在東京インドネシア共和国大使館(2024年竣工予定)等も手掛けています。
公式ウェブサイト:https://www.kisho.co.jp/j_index.html
<株式会社 三越伊勢丹プロパティ・デザインについて>
日本有数のホテルやラグジュアリーブランドの内装を手掛け、100年以上の歴史の中で諸官庁の家具などを製作している自社木工家具工場「三越製作所」を持つ三越伊勢丹グループ会社。
公式ウェブサイト:https://www.impd.co.jp/index.html