IoTボルトを用いた長大吊橋モニタリングシステム運用開始

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 IHIと株式会社IHIインフラシステム(所在地:大阪府堺市,社長:上田 和哉,以下「IIS」)は,高度接合技術などの開発を手がける株式会社NejiLaw(所在地:東京都文京区本郷,社長:道脇 裕,以下「NejiLaw」)と共同で,NejiLaw開発の「smartNeji」を用いた世界初となる長大吊橋モニタリングシステムの運用を開始しました。
 IHI,IIS,NejiLawは,このシステムを活用して橋梁をはじめとする社会インフラの効率的かつ定量的なモニタリングを推進し,国土強靭化と持続可能社会の実現を目指します。
 smartNeji(スマートネジ)は,NejiLawの緩まないネジ「L/R neji」(※1)に締付力や加速度を検知する各種センサと通信モジュールを搭載したマルチセンシングIoTデバイス(ボルト)(※2)です。
 今回運用を開始したシステムは,間もなく開通50年を迎える関門橋(※3)において,床組み固定装置に使用されていたボルトをsmartNejiに差し替え,ボルトの締付力をモニタリングするものです。
 床組み固定装置は,摩擦力を利用して地震時の吊橋の挙動を制御し,吊橋全体の損傷を抑制する機能を持ちます。このときの摩擦力が締付力と比例関係にあることから,締付けボルトにsmartNejiを用いて締付力を精確に検出することで設計どおりの摩擦力を得て,床組み固定装置の信頼性を高めることができます。また,将来的に締付力が変化した場合にも自動で検出することが可能で,日常点検の効率化が図られます。さらに、地震発生時にはその前後のモニタリングデータから地震による橋の挙動および損傷度合いを即座に推定することもできます。 

床組み固定装置(※4)とsmartNeji(矢印)床組み固定装置(※4)とsmartNeji(矢印)

 

smartNejiからのデータ受信設備smartNejiからのデータ受信設備

 今回のモニタリングシステムは,smartNejiの有用性を実橋で確認するために,西日本高速道路株式会社のご協力のもと,IHI,IIS,NejiLawが共同で,関門橋の一部である床組み固定装置を対象に運用していきます。将来的には,マルチセンシングIoTデバイスとしてのsmartNejiの性能を活かし,点検困難かつ振動を受けやすい部位にあって,締付力の管理が重要になるボルト全般に適用範囲を広げ,国内外の長大吊橋における総合モニタリングシステムへと発展させていくことを目指します。

 現在,国内では社会インフラの老朽化と労働人口の減少が同時に進行し,インフラを効率的に維持管理する手法の確立が喫緊の課題となっています。一方,橋梁をはじめとする社会インフラは,モニタリングを通じた適切な維持管理を行うことで,耐用年数を大幅に延ばすことが可能です。

 IHIとIISは,最新技術で社会インフラを効率的かつ定量的にモニタリングするシステムを構築し,インフラの適切な維持管理を積極的に支援していくことで,持続可能社会の実現に貢献していきます。
 

smartNejiの性能検証試験
smartNejiで検出した軸力データが軸力計の値に一致していることを確認し,smartNejiの精確性を検証したうえでモニタリングを開始しています。

※1)緩まないネジ:NejiLawの「L/R neji」は,ボルトに右ネジと左ネジの両方を合わせたような特殊な溝を
   つけ,ここに右回りナットと左回りナットをかけることで絶対に緩むことがない構造を実現。smartNejiも
   このL/R nejiと同じ構造を採用している。(L/R nejiの詳細:http://www.nejilaw.com/product.html
※2)マルチセンシングIoTデバイス(ボルト):ボルトの軸部で締付力を直接計測するとともに,ボルト頭部に
   は3方向の加速度を検知できる3D加速度センサや温度センサなどの各種センサと通信モジュールを搭載
   している。(smartNeji詳細:http://www.nejilaw.com/special_smartNeji.html
※3)関門橋:山口県下関市と福岡県北九州市門司区の間の関門海峡に架かる全長1,068m,中央径間712mの
   吊橋(道路橋)。1973年(昭和48年)に開通。IHIも北九州側の主塔の製作・架設工事に携わった。
※4)床組み固定装置:西日本高速道路株式会社とIISが2022年に特許共同出願(特願2022-014696号)。

開通当時の関門橋開通当時の関門橋

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