ふるさと納税の主役は制度が作られた理由からも、「村」「町」「市」になるのは当然と考えます。しかし、制度は自治体に平等に与えられていますので、この1、2年は「区」「都道府県」も段階的に取組みを強化してます。これまであまり注目もされていなかったため、この機会に「区」「都道府県」も分析することに致しました。
『令和3年度ふるさと納税寄付額を「市」「区」「都道府県」別に分析』の主な結果
■1位から30位(市の部)
市の部は全体の順位とあまり変わらず、また総務省や各メディアもこれまでに取り上げていますので、2位の宮崎県都城市に着目します。平成27年度、平成28年度、令和2年度と3回も日本一になっており、その他の年度も一桁の順位と、ふるさと納税を代表する自治体の一つです。自治体ブランド向上と市内事業者支援を戦略として掲げ、ふるさと納税制度を戦略実現のために活用しています。自治体の認知とブランド向上のため、当初はかなり思い切った還元率を設定し、法律で規制される前から返礼品を市内生産品に限定していました。市内事業者を支援する姿勢により、彼らとの信頼関係やコミュニケーションが非常に強いという特徴が都城市にはあリます。このように、都城市のふるさと納税に対する姿勢は評価できる点が多くあります。
■1位から23位(区の部)
1位の墨田区は都内にありながらも伝統工芸品などの地域産品が豊かであり、区としては早めにふるさと納税の取組みを強化した自治体です。寄付の使い道は非常に具体的になっており、ふるさと納税のあるべき姿とも言えます。2位の渋谷区も都会ならではのレストラン、宿泊、体験サービスなどバラエティ豊かな返礼品を用意しています。
■1位から47位(都道府県の部)
市町村と地域産品にて競合することもあり、都道府県が取組みを強化することは難しい問題もあります。山形県の市町村はふるさと納税の取組みは他県よりも早く、平均寄付額も毎年上位になっています。山形県自身も魅力的な
果物を中心とした返礼品を幅広く取り揃えることができており、その数は2,000種類を超えています。
■行政区分毎ふるさと納税寄付額
「町」「村」の成長率を「区」「市」が上回っています。また、都道府県は前年を下回っていますが、寄付件数は増加しています。
今回の分析を通じて
上位の自治体が固まってきていることと、「町」「村」の伸び率が全体より若干低いことが気になりました。上位の自治体はプロモーションで豊富に予算が確保できるため、更に上位を目指す動きができます。しかし、それ以外の自治体ではプロモーション予算等も確保しにくく、返礼品提供事業者や中間事業者も協力度合いが低くなり、上位に追いつくことは大変難しくなっています。ふるさと納税制度の重要課題の一つと捉えています。
社名:株式会社ふるさと納税総合研究所
本社所在地:大阪府大阪市
代表取締役:西田 匡志(中小企業診断士、総合旅行業務取扱管理者)
事業内容: ふるさと納税市場における調査、研究、コンサルティング、ソリューション提供等
HP:https://fstx-ri.co.jp/