
株式会社帝国データバンクは、2025年に発生した上場企業倒産の動向について調査を行った。
SUMMARY
2025年の上場企業倒産(12月29日16時30分現在)は、(株)オルツ(東証グロース)の1社となり、2022年以降4年連続で年間発生件数が1社となった。コロナ禍以降、コンプライアンス違反に起因した倒産が断続的に発生しており、当該企業が発信する情報開示のみならず、定性情報にも重点を置いた情報収集と対策が求められる。
上場企業の倒産、4年連続で1社
2025年の上場企業倒産(12月29日16時30分現在)は、(株)オルツ(東証グロース)の1社となった。コロナ禍以降(2020年以降)で6社目となる。

上場企業倒産は、リーマン・ショックが起きた2008年に過去最多となる33社となった。しかしその後は、アベノミクス効果や私的整理メニューの拡充、近年は総じて業績が好調に推移したことなどで、25年は22年、23年、24年に続き4年連続で1社となった。
ただし、近年の上場企業倒産を振り返ると、2020年は金融商品取引法違反の嫌疑で強制調査が入った(株)Nuts(ジャスダック)、2022年はインサイダー取引や金融商品取引法違反で関係者が逮捕されたテラ(株)(東証スタンダード)、2023年は雇用調整助成金の不正受給の発覚、元会長、前社長が金融商品取引法違反の疑いで逮捕された(株)プロルート丸光(東証スタンダード)、そして循環取引で売り上げの過大計上を行っていた2025年の(株)オルツと、コンプライアンス違反を起因した倒産が断続的に発生している。
売上高の9割が過大計上、株式上場後わずか9カ月で倒産
(株)オルツは、2014年(平成26年)11月に設立され、高精度自動文字起こしソリューション「AI GIJIROKU」などの開発・販売を手がけていた。「AI GIJIROKU」は、生成AIを利用した高精度の音声認識と日本語最高精度のLLM(大規模言語モデル)を組み合わせて2020年1月にリリースされた。リアルタイムで社内会議のテキスト化・要約ができるほか、30カ国語に対応、業界別専門用語の認識機能も強化され、これまで調達した資金は累計100億円、導入企業数は9000社を突破したなどと公表していた。
2024年10月に東証グロースに株式上場を果たし、上場後初の連結決算となる2024年12月期は年収入高約60億5700万円を計上したが、開発業務の外注費やサービス開発・人材投資などの費用が嵩み赤字決算となっていた。
こうしたなか、2025年4月に「AI GIJIROKU」の有料アカウントに関して、一部の販売パートナーから受注した売り上げについて、実際に利用されていないなど売り上げが過大に計上されている可能性が認められたとして、第三者委員会の設置および2025年12月期第1四半期決算の発表を延期。さらに6月には、実態のない架空取引を繰り返す循環取引で売り上げを水増しして有価証券報告書などに虚偽記載をした疑い(金融商品取引法違反の疑い)で、証券取引等監視委員会が当社の本社や関係先を強制調査していたことが報じられた。また、7月には2024年12月期までの4期分の売上高について、最大9割が循環取引による過大計上だったと第三者委員会に認定された。同月には当社の株式が東証の監理銘柄(審査中)に指定され、代表も辞任するなど動向が注目されるなか、事業価値の毀損と財務状態の悪化が深刻となるおそれがあることから、7月30日に東京地裁へ民事再生法の適用を申請した。
負債は約16億636万円(確定再生債権額)。



