【速報】酒税改正後のビール類の情勢変化、ビールは変化なしも新ジャンルには打撃の前週比60%減

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●2023年10月の酒税改正で、ビールは350mlあたり約6.7円の減税、新ジャンルは350mlあたり約9.2円の増税となった。
●ビールの平均購入単価は約11円の値下がり*となったが、9月最終週と10月初週の売上金額を比較すると+1.8%ほどと変化は見られなかった。
●新ジャンルの平均購入単価は約13円の値上がり*となり、9月最終週と10月初週の売上金額を比較するとマイナス約60%と大きく落ち込んでいる。この下がり幅は、2022年10月の値上げ時よりも大きい。
*2023年9月の平均購入単価と2023年10月の平均購入単価の差

【消費低迷下での酒税改正、ビール類への影響は?】

2023年10月、酒税法の改正によって、ビールカテゴリ内では値下げになるビールと値上げになる新ジャンルの売り上げ動向が注目を集めています。折しも現在は、あらゆるものの値上げにより消費低迷が叫ばれる状況。価格の変動はこの市場にどのような影響を与えたのでしょうか。
カタリナ消費者総研では、酒税改正1か月後のビールカテゴリの状況をまとめました。

・今回利用したデータについて
当レポートは、カタリナが扱う年間売上10兆円規模の実購買データをもとに作成しています。これは日本のGMS・SMの年間売上の実に6割をカバーする規模であり、これをベースとした当レポート内の各種数値は推計を含んでいない、実態をそのままにお伝えするものです。

データ抽出期間:2022/08/01~2023/10/22
対象店舗:上記64週間全てにわたってアルコールの取り扱いあるカタリナネットワークの店舗(約4200店舗)
対象ユーザー:上記店舗で買い物をした人

■ビール市場:減税の恩恵は売り上げに反映されず…?
ビールカテゴリは今年2023年10月の酒税改正による減税の前、昨年2022年10月に14年ぶりの卸売り価格の値上げがありました。以下は、その時と今回の酒税改正の際のカタリナネットワーク内における平均購入単価の変化の表です。

●国産ビールカテゴリ 平均購入単価(350ml単缶価格)

2022年は約7円年の値上げ、2023年の酒税の減税では約11円の値下げとなっているビールカテゴリ。売り上げはどのように変化したのでしょうか。売り上げの推移を確認してみましょう。

●国産ビールカテゴリ 週別売上金額(単位:百万円)

こちらは2022年と2023年の国産ビールカテゴリの週別の売上金額の推移を比較したグラフです。両年ともに、グラフ冒頭部分の8月は猛暑の影響やお盆などの帰省に加え、各地での夏祭りや花火大会の再開でビールの需要は高まっていました。

まずは2022年(オレンジの折れ線)を見てみましょう。2022年10月の値上げ直前、9月には買い溜めが発生して売上金額が増加し、その反動で10月に買い控えが発生。売上金額は減少しています。

それでは2023年の売上の変化(青の折れ線)を見てみましょう。10月(グラフ中の赤い点線部分)より、ビールは350mlあたり約6.7円の減税が実施され、平均購入単価は約11円下がっていましたが、消費者の反応は思いのほか冷静で、減税前の週と減税後の週とで売上金額を比較しても、1.8%ほどの上昇しか見られません。

2022年の値上げ時には買い溜め需要が発生したのに対し、今回の減税(値下げ)時にはこれといった需要の盛り上がりを見出すことはできませんでした。

このあとの項でお伝えしますが、ビールは値下げされ、新ジャンルは値上げされています。このことから、ビールと新ジャンルの価格差が縮まり、新ジャンルの選好ユーザーがいくらかビールへのカテゴリスイッチを起こす可能性が考えられましたが、今回の売上推移からはその傾向は発見できませんでした。この程度の価格差縮小においては、ビール類の勢力図が塗り替わるようなことは起こっていないといえます。
経済低迷下での家計圧迫が、値下げに対する好反応を鈍らせている可能性もあります。昨年の値上げ時の買い溜めや買い控えとは異なり、今年は売上の大きな変動は見られませんでした。不安定な経済情勢が消費者の購買行動に慎重さをもたらしているのかもしれません。

■新ジャンル:増税がカテゴリの低迷に追い打ちをかけるかたちに
ビールカテゴリと同様、新ジャンルカテゴリも昨年2022年10月に卸売り価格の値上げがあり、今年2023年10月の酒税改正がありました。下記の表を見ていただければわかるように、ビールとは違いどちらも値上げです。

●新ジャンルカテゴリ 平均購入単価(350ml単缶価格)

2022年は約7年の値上げ、2023年の酒税の増税では約13円の値上げとなっています。
それでは売上の変化を見てみましょう。

●新ジャンルカテゴリ 週別売上金額(単位:百万円)

2022年と2023年それぞれの、新ジャンルカテゴリの週別の売上金額の推移を示したグラフです。注目すべきは、赤の点線で示している増税の行われた10月1日付近の動き。平均購入単価の上昇は2022年(7円の上昇)よりも2023年(13円の上昇)の方が大きいにも関わらず、9月の買い溜めは昨年の方が大きく、その反動の買い控えは今年の方が強くなっています。

昨年に続く価格上昇が、消費者の購入意欲を下げてしまっている状況です。また、2023年は買い控え後の需要の戻りが鈍く、売り上げが低いまま推移しています。不安定な経済情勢下では、消費者はより価格に敏感になり、特に価格が上昇する商品に対しては消費を控える傾向が強まります。

●購入本数と購入人数の減少
新ジャンルで起こっていることをより詳しく見るために、1000会計あたりの購入本数*とバスケット数(会計数)の変化を見てみましょう。バスケット数(会計数)はのべの購入人数と置き換えることが可能です。

左軸:1000会計あたりの購入本数(本) 右軸:バスケット数(会計数 単位:千)

新ジャンルの購入本数は7月末から9月初め週にかけてフラットな推移でしたが、9月25週には前週の160本から230本に一気に増加しています。また、バスケット数(≒購入人数)は、9月25週には若干上昇していますがほぼフラットで推移しています。

バスケット数が伸びていないということは、新ジャンルカテゴリを購入している人数に変化がないことを示しています。その状況下で購入本数が伸びているということは、もともと新ジャンルカテゴリ購入者の一回の買い物で購入している商品の本数が増えていることを示します。
このことから、特定の人(新ジャンルが好きな人)が9月25日週の買い溜めを起こしたことがわかります。

そして、10月に入り、購入本数は9月と比較して約5割減、バスケット数(≒購入人数)は約3割減と本数だけでなく、購入人数も減少しています。

■新ジャンルがどこまで戻すか、年末年始に注視
あらゆるものの価格が上がっているなか、おサイフの大きさが変化していない現在の状況では、消費者はいままでよりも厳しく購入品目の優先順位をつけて買い物をしなければなりません。それはビール市場も例外ではありません。ビールカテゴリは減税により平均購入単価は下がっていますが、それにより消費を底上げるまでのパワーは見て取れませんでした。また、新ジャンルは、より価格コンシャスな消費者が好むカテゴリでもあるため、昨年に続いての今回の値上げは、購入本数、購入人数ともに減少という結果となっている可能性があります。

今回の結果は酒税改正後の1か月での結果です。今後、需要期である年末年始にどんな変化が起こるのかを確認することが重要に思われます。特に新ジャンルカテゴリは、このまま低位で推移するのか、元の水準まで戻すのかが注視ポイントとなります。

カタリナ消費者総研では引き続き、このジャンルに注目し、続報する予定です。

カタリナ消費者総研の他レポートについて
カタリナ消費者総研の過去のレポートは下記URLからご覧いただけます。
https://jp.catalina.com/knowledge/

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