このイベントは、次世代へ豊かで美しい海を引き継ぐために、海を介して人と人とがつながる“日本財団「海と日本プロジェクト」”の一環です。
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イベント概要
■開催概要:小学生が「小さな海のごちそう調査隊」を結成し、徳島県特産のシラスの生態、伝統的漁法・漁獲量減少の理由や資源回復に向けた活動などを体感し学ぶプログラムです。普段から食卓に何気なく並んでいる”シラス”はまさに徳島県民の”小さな海のごちそう”。そんなシラスを通じて、シラスをはじめ豊富な海の幸に恵まれた徳島の海を未来に伝えるため、海の環境を守るためには、何を考えて行動すればいいのか主体的に自主性をもって調査・学習しました。
■日程 :【1日目】10月21日(土)/【2日目】10月22日(日)
■開催場所:徳島県徳島市・松茂町・南あわじ市
■参加人数:小学5・6年生 19名
■協力団体:松茂町長原漁協・マツシゲート・内海水産・徳島県水産研究課・
徳島県危機管理課・四国大学・小松島市和田島漁協
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シラス漁を間近で体感!
調査隊の最初のミッションはシラス漁。2隻の漁船で袋状になった網を曳いて魚を獲るシラス漁は、網の形が下着の「バッチ(パッチ)」に似ていることから「バッチ網漁」と呼ばれています。この呼び名は、大正時代に徳島の漁師が考案し全国に広がりました。この日は松茂町の漁師さんのバッチ網漁に同行。天気は晴れ。波も穏やかで絶好のシラス漁日和です!子供たちを乗せた船は港から15分ほどで漁場に到着。漁師さんたちの熟練の操船技術で、漁をしている船のギリギリまで近づくことができました。
子供たちは間近で見る漁の様子や、次々と水揚げされるシラスの姿に歓声をあげていました。それでも漁師さんからは「昔に比べると少ないよ」とのお話が。県によると1985年には年間で9,000トン近く獲れていた徳島県のシラスですが、現在は2,000トンから3,000トンで推移しているそうです。内海水産の内海大寿さんからシラスの獲りすぎを防ぐために「漁は午後2時まで」「日曜日は一斉休漁」など対策を行っているとのお話があり、子供たちは興味深そうに耳を傾けていました。
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加工品ができるまで
水揚げされたシラスは早速加工場へ配送。子供たちは内海水産が加工をお願いしている兵庫県南あわじ市の橋詰水産を訪れ釜揚げシラスや乾燥チリメンができる工程を見学しました。湯気が立ち上る窯でシラスを塩茹でして、茹で上がったシラスを脱水。この時点で出来上がるのが「釜揚げシラス」です。
その後、網に広げて天日で干すと「ちりめん」になります。子供たちが「一番美味しい食べ方は?」と聞くと、橋詰さんは干してあるシラスを手づかみで豪快に口へ!「これが一番うまいんだ!」と教えられ、子供たちも加工場でしか体験できない食べ方に大満足の様子でした。
また、「徳島のシラスが美味しい理由は?」と聞かれると橋詰さんは「加工会社の貢献は2割ほど。シラスが美味しいのは徳島の海のおかげ。徳島の海は栄養がたっぷりだから美味しいシラスが育つ」と話していました。チリメンには稀に他の海洋生物が混ざることがあり、子供たちは「タコ!」「カニ!」など「チリメンモンスター」を見つけては声をあげていました。
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徳島の海を体感 SUP体験!
1日目の最後は松茂町の月見ヶ丘海浜公園で8人乗りのメガSUPに挑戦。SUP初挑戦の子供たちも多く、初めは恐る恐るでしたがシラス漁師さん達の連係プレーのように仲間たちと協力し、最終的には全員が立ち上がって乗りこなすことができました。また周辺では魚が跳ねたり、子供たちも貝やヤドカリを見つけたりとシラスをはじめ様々な生き物を育む徳島の海を体感しました。
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徳島の海とシラスをもっと知ろう!
2日目は、前日学んだことを更に深掘りする座学からスタート!まず、県水産研究課の石川陽子先生から徳島の海洋環境について詳しく話を聞きました。さかなクンに憧れているという石川先生はおさかな帽子で登場。紀伊水道を中心に徳島周辺の海の特徴や最近の環境変化などについて解説しました。
石川先生から「徳島の海は吉野川などたくさんの河川が流れ込んでいるためプランクトンや栄養分が豊富」という話があり、シラスをはじめたくさんの生き物が生息する”豊かな漁場”であることを説明。その一方で近年は温暖化によって獲れる魚の種類が変わってきていて、特に海藻を食べてしまう「アイゴ」やシラスを狙って群がる「クロサバフグ」など”困った魚”が増えていることにも触れました。子どもたちは、メモを取ったり講師からのクイズに答えたりしながら、興味深そうに耳を傾けていました。
続いて県内一のシラスの産地、小松島市和田島町の和田島漁協・今治清孝組合長から徳島のシラスの特徴について説明がありました。今治組合長は改めてバッチ網漁の歴史について語った後、徳島のシラスは栄養豊富な海で育っているため脂乗りが良く、非常に質が良いと話しました。
また、漁協としての資源確保の取り組みとして松茂町の長原漁協と同じく漁の時間制限や、休漁日を設けているほか網の改良にも取り組んだことを子供たちに説明しました。この日は実際に網の切れ端を子供たちに配り、「昔の網は網目が小さかったが、今は網目を大きくし小さすぎるシラスは獲らないようにしている」と話すと、子どもたちは真剣な眼差しで網目の大きさについて考えました。
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シラスを使った海プロオリジナルメニューを開発
料理研究家・武岡泰子先生の協力のもと「海と日本プロジェクトオリジナルメニュー」作りにも挑戦しました。この日作ったのは「ガパオライス」「ハンバーグ」「うどん」の3品。
もちろんすべての料理に徳島のシラスをふんだんに使用されており、うどんはシラスを練りこんで麺から作るこだわりぶり。普段何気なく食べているシラスの新たな活用方法を見出そうと子供たちも一生懸命料理に取り組みました。全員で試食してどの料理が”オリジナルメニュー”に相応しいか、子供たちの投票の結果は「ガパオライス」が8票を集め1位に。このシラスたっぷりのガパオライスは海と日本プロジェクトのオリジナルメニューとして11月12日(日)に松茂町の交流拠点施設「マツシゲート」で開催されるマルシェで限定販売されます。
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川と海のつながりを学ぶ水質調査
続いて、調査隊は海から遠く離れた園瀬川の上流へ。ここで行うのはシラスが獲れる紀伊水道に流れ込む川で水質調査を行います。徳島県環境管理課の水質調査の専門家指導のもと子供たちは川で水をくみ上げ、水の汚れや含まれる栄養塩濃度等を調査しました。試薬などを使った本格的な調査に調査隊の子どもたちの顔は真剣そのもので、この他、河口付近でも同様に水質調査を行った結果、上流域の水は栄養が少なく、下流になると周辺から流れ込む雨水や生活水等の影響で栄養が増えることなどがわかりました。その水が海へと流れるとシラスの餌となる動植物プランクトンの栄養素となりシラスの餌となります。この結果に調査隊の子どもたちは川と海との意外な関係に驚いていました。
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調査のまとめ
様々な体験や学習を通して、徳島のシラスについて学んだ子供たち。減少傾向にある徳島のシラスを未来へ繋ぐため、自分たちが何ができるのかを考え「海を豊かにする」「川にごみを流さない」など様々な意見が出ました。そして子ども達の意見を提言としてまとめ、この学んできた徳島のシラスのことをより多くの人たちに伝えるためのランチョンマットの制作も行いました。
今回の調査は、徳島のシラスを深く学び、シラスを通して徳島の海の様々な問題があることなど多くの事を学んだ2日間となりました。
<団体概要>
団体名称:一般社団法人 海と日本プロジェクトinとくしま
URL :https://tokushima.uminohi.jp/
活動内容:徳島県内における海と日本プロジェクト事業
日本財団「海と日本プロジェクト」
さまざまなかたちで日本人の暮らしを支え、時に心の安らぎやワクワク、ひらめきを与えてくれる海。そんな海で進行している環境の悪化などの現状を、子どもたちをはじめ全国の人が「自分ごと」としてとらえ、海を未来へ引き継ぐアクションの輪を広げていくため、オールジャパンで推進するプロジェクトです。