このイベントは、次世代へ豊かで美しい海を引き継ぐために、海を介して人と人とがつながる“日本財団「海と日本プロジェクト」”の一環です。
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「海と旅モニターツアー in 道南」概要
場 所:北海道 森町 掛澗(かかりま)漁港
北海道 七飯町 大沼流山牧場 パド・ミュゼ
北海道 八雲町 落部(おとしべ)漁業協同組合
北海道 函館市 函館山展望台・Pres de La Mer
日 時:9月9日(土)8:15~22:00
内 容:【森町】磯焼け観察とウニ獲り体験
【七飯町】地元産鮮魚のさばきとウニの殻むき体験・昼食
【八雲町】ウニの養殖かごと磯焼けへの取り組み視察
【函館市】函館山山頂観光
【函館市】Pres de La Merにて夕食
参加者:観光・旅行、水産、社会問題の解決に興味のある20代の大学生・社会人
観光・旅行、水産、食の有識者
計9名
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【森町】磯焼け観察とウニ獲り体験
関東圏に台風も接近し、前日まで開催も危ぶまれた今回のモニターツアー。なんとか天候も回復し、晴天とまではいかないものの過ごしやすい気温の中、9名の参加者が函館駅に集合しました。モニターツアーの開始にあたり、一般社団法人Blue Commons Japanの國分晋吾さんがツアーの趣旨と最初に向かう森町・掛澗漁港での磯焼け問題について説明。森町・掛澗漁港周辺では、ウニが昆布などの海藻を食べつくし、岩場がむき出しの状態となってしまう「磯焼け」が進行しています。海藻が形成する藻場は、多様な生物の産卵・生育の場となっており、海洋生物の多様性を育む重要なフィールドです。國分さんからは「今回のツアーを通して、磯焼けという海の社会課題をどうやって認知拡大し、解決に向けてどうアクションすべきか、参加者の皆さんと考えたい」と呼びかけました。
森町・掛澗漁港に到着した参加者は、まず地元の漁師 坂本晃太さんから、磯焼けの現状を聞いた後、漁船に乗船。磯焼けの現場へと向かいます。現場では、実際にタモでウニを捕る体験も行われました。参加者からは「海の底をのぞくとウニしかおらず、磯焼けの深刻さがわかった」「そこに見えているウニだけど、捕るのは難しかった。ウニの駆除には専門技能がいるのだなと思った」などの感想が聞かれました。
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【七飯町】地元産鮮魚のさばきとウニの殻むき体験・昼食
続いて参加者は、 七飯町にある大沼流山牧場 パド・ミュゼに向かいました。パド・ミュゼでは、参加者が2班に分かれ、地元産鮮魚のさばきとウニの殻むきにそれぞれ挑戦。地元産鮮魚のさばきは、一般社団法人海のごちそう推進機構の岸田結花さんが、ウニの殻むきは、岩手県でウニの畜養などを行う株式会社北三陸ファクトリーの渋谷風雅さんがそれぞれ講師として教えました。
初めて魚をさばいたという参加者は、近年北海道で漁獲量が上がっているブリの幼魚である”フクラギ”をさばきました。「初めてお魚をさばいてみたけど、難しかった。魚をさばくのはいつでもできる体験のはずなのに、今では特別な体験になってしまっているのが感慨深かった」と話しました。
ウニの殻むきに挑戦した参加者は、ウニの処理に悪戦苦闘。「ウニを開いてみると消化中の昆布が出てきて、磯焼けの原因になっているのがよくわかった。殻を割ったら食べられるものだと思っていたが、昆布の食ベカスや内臓、欠けてしまったトゲをピンセットでとるなど手間暇がかかるのがわかり、生産者の方の苦労を知った」と教えてくれました。
さばいたり、剥いたりした魚介類は、ご飯に乗せ、北海道の海や藻場に感謝して海鮮丼にしていただきました。参加者は一様に「自分で調理すると特別おいしい」と顔をほころばせながら海鮮丼を食べていました。
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【八雲町】ウニの畜養かごと磯焼けへの取り組み視察
昼食後、八雲町の落部漁業協同組合に向かいました。落部漁業協同組合では、八雲町の支援のもとダイバーが海に潜り、ウニの駆除に取り組んでいます。駆除したウニを廃棄するのではなく、北海道大学、株式会社北三陸ファクトリーと協力し畜養も開始。畜養したウニは、株式会社北三陸ファクトリーのもと「ウニバター」として流通・販売されています。
取り組みを説明してくれた落部漁協協同組合の鎌田和弘 専務理事は「海の変化は顕著になっている、効率的にウニを駆除すること、駆除したウニを活用して収入にすること。課題は多いが取り組んでいかなければならない」と話してくれました。同じく取り組みを説明してくれた株式会社北三陸ファクトリーの渋谷風雅さんは「藻場がなくなるというのは全世界で起きている。落部漁協さんのように地元の漁師や関係者と協力したい」と語りました。
質疑応答の時間には「磯焼けの海を普通の海に戻すにはどういったステップが必要なのか」「駆除するダイバーさんはどういった方なのか」「ウニの殻を廃棄せず、利用する計画はないのか」など突っ込んだ質問も寄せられ、参加者も強く興味を持った様子でした。
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【函館市】函館山山頂観光
参加者は、函館を代表する観光地「函館山山頂」へ。上から街と海を一望することで豊かな海が育んだ函館に思いをはせました。一般社団法人Blue Commons Japanの國分晋吾さんは「函館はイカが多く獲れており、イカの街と呼ばれてきた。今は、これまで獲れなかったブリなどの魚も漁獲されるようになった。そうした海の変化がこの街の課題になっている。そういったことも景色から考えてもらえれば嬉しい」と話しました。
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【函館市】Pres de La Merにて夕食
函館の貸別荘「Pres de La Mer」に向かった参加者。最後に磯焼けの認知拡大・解決に向けたアイデア出しを兼ねた懇親会を行いました。会場には、一般社団法人Blue Commons Japanが取り組むブリの地域課題解決のための商品「ブリたれかつ」「函館ブリ塩ラーメン」も用意され、海の課題について語り合いながらの会となりました。
参加者からは「磯焼けという名前をもっと身近なものにできないか」「逆に磯焼けが全く起きていない場所の調査をしてみてはどうか」「ウニ×テクノロジーで『海のお掃除ロボットUnb(ユンバ)』を開発してみてはどうか」など自由で闊達なアイデアが飛び出しました。モニターツアーに同行した一般社団法人Blue Commons Japanの高木桂佑さんは「水産だけでなく、観光やメディアなど多様な分野に精通する関係者に会えたのは、とても価値があった。人に説明したり、質問を受けることで課題に対しての理解を深め、課題解決の発想を膨らませることができるツアーだった」と話していました。
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参加者からの声
20代男性「こうした課題をテーマにしたイベントのお手伝いがしたいと思いました。広報PRの専門スキルや地域の問題への感性を活かして何か事業をしたい」
20代女性「海の環境の変化が激しいため、もっと現場に行かなければならないと思いました。現場に行って漁師と話す機会を増やしたい」
20代男性「地元に釣り好きがたくさんいるので、海の現状を聞きに行きたいと思いました」
20代女性「まずは日常でできることとして、海鮮をおいしく食べることから始めたいと思っています。実は一人暮らしをしてから魚を食べる機会が少ないなと。お魚高いな、捨てる時臭いなと思っていつも敬遠してしまうのですが、今回の旅でウニやブリを消費することが社会課題の解決ないしは、漁師さんのためにもなると気づけたので、魚を食卓に並べることを少し意識してみようと思います」
<団体概要>
団体名称:一般社団法人 海と食文化フォーラム
活動内容:海の問題解決に向けたアクションの輪を広げることを目的として、食文化を切り口にした海洋教育を中心に、海と人とのかかわりについて学び、海洋がもたらす恩恵や未来、さらに海洋の課題について理解を深めるために様々な事業を行います。
日本財団「海と日本プロジェクト」
さまざまなかたちで日本人の暮らしを支え、時に心の安らぎやワクワク、ひらめきを与えてくれる海。そんな海で進行している環境の悪化などの現状を、子どもたちをはじめ全国の人が「自分ごと」としてとらえ、海を未来へ引き継ぐアクションの輪を広げていくため、オールジャパンで推進するプロジェクトです。