『パーソナリティのHファクター』書影
- パーソナリティ（性格）の働きや仕組み，成り立ちを探るパーソナリティ心理学
自分を生まれながらのリーダーだと信じて疑わない人，どんな危険があろうともすべてを勝ち取りにいく人，真面目で誠実な犯罪者など，人の数だけ様々な性格はありますが，どのようにしてこうした特徴はあらわれるのでしょうか。
パーソナリティ（性格）の働きや仕組みを扱うパーソナリティ心理学では，性格の特性を5つの因子の組み合わせによって表現する「ビッグ・ファイブ」理論がこれまでの主流であり，パーソナリティの違いを明らかにすると期待され多くの研究者の注目を集めていました。しかし，上であげたような5因子だけでは捉えきれない人の複雑なパーソナリティの部分もあり，完全なものではありませんでした。
本書『パーソナリティーのHファクター』は5因子モデルに「Hファクター（H因子）」を加えた6因子からなる「HEXACOモデル」で人の性格や行動，傾向などに迫った一冊です。
パーソナリティの6因子とその表現用語（第2章：見逃されてきたパーソナリティ次元より）
- 劇的（有害）な結果をもたらすHファクターの低さ
本書のメインテーマでもあり，ビッグ・ファイブにはなかった性格の因子であるHファクターは「正直さ-謙虚さ（Honesty-Humility）」を表しますが，なぜHファクターが重要なのでしょうか。
それはHファクターが友人や恋愛パートナーの選択、性的行動、お金や権力に対する考え方、政治的・宗教的な見解など、人生の多くの側面に強い影響を与え，またHファクターは他の5つの因子と組み合わさることで，大きく異なる様相を示すからだと著者であるK・リーとM・C・アシュトンは述べています（第4章：低いH因子の人たちのフィールドガイドより）。
各因子の高低による特徴（第3章：HEXACO パーソナリティの六つの次元より）
例えば，自己愛が暴走したナルシストなリーダーは低い正直さ-謙虚さ（H因子）と高い外向性（X因子）との組み合わせで考えられ，高い魅力やカリスマ性，人の支配を望んでいるなどの特徴が説明されます。リスクを恐れず勝負に出るギャンブラーや真面目で誠実な犯罪者などの特徴も，他の因子とHファクターの組み合わせが関わっていると著者らは述べています（第4章：低いH因子の人たちのフィールドガイドより）。
- 日常にあらわれる「Hファクター」
新しい出会いやビジネス，採用面接，時にはスポーツなど日常的な場面において相手の性格や行動を見分けようとしたり，探ったりすることはよくあるかもしれません。Hファクターが低い人々は，自己中心的であったり，貪欲で他人を支配しようとしたりしますが，それを事前に見分けることはできるのでしょうか。
また，Hファクターの特徴的な傾向・行動は政治や宗教，お金，権力，情事などにもあらわれます。たとえば，宗教の教えを守ることや，見栄を張って人よりも高いものを買ったり，偽りの愛情を利用して性的満足を得ようとするなど，Hファクターが多くの場面に関わっています。
そのほかにも，Hファクターが高い人たちは害をもたらすことがないのか，Hファクターが低い人とどのように付き合えばよいのか，そしてHファクターの特徴を知ったとき，私たちはどのように生活を改善していくことができるのかといった内容の一冊となっています。
【目次】
1章 H因子の発見
2章 見逃されてきたパーソナリティ次元
3章 HEXACOパーソナリティの六つの次元
4章 低いH因子の人たちのフィールドガイド
5章 H因子の高さを見分けることはできるのか？
6章 H因子の高い人たちは寄り集まるのか？
7章 政治
8章 宗教
9章 お金、権力、セックス
10章 H因子の低い人たちの見分け方 ── そしてつき合い方
エピローグ ── H因子の高い人になる
- 著者・監訳者・訳者
【著者】
■K・リー(Kibeom Lee) カルガリー大学 教授
■M・C・アシュトン(Michael C. Ashton) ブロック大学 教授
【監訳者】
■小塩真司(おしお あつし)
早稲田大学文学学術院 教授 2000年,名古屋大学大学院教育学研究科博士後期課程修了。博士(教育心理学)。著書は『非認知能力』(編著,北大路書房),『性格とは何か』(中公新書),『パーソナリティ心理学』(サイエンス社)など。
Twitter：https://twitter.com/oshio_at
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【訳者】
■三枝高大(みえだ たかひろ)【3章,8章,10章】
福島県立医科大学保健科学部診療放射線科学科 助教 2022年,早稲田大学大学院文学研究科心理学コース博士後期課程修了。博士(文学)。論文は「Dichotomous Thinking and Personality Traits: From the Viewpoints of the Big Five and HEXACO」 (共著,Japanese Psychological Research)など。
■橋本泰央(はしもと やすひろ)【1章,2章】帝京短期大学ライフケア学科 准教授 2020年,早稲田大学大学院文学研究科心理学コース博士後期課程修了。博士(文学)。著訳書は『カルドゥッチのパーソナリティ心理学』(分担訳,福村出版),『円環モデルからみたパーソナリティと感情の心理学』(共訳,福村出版)など。
■下司忠大(しもつかさ ただひろ)【4章,9章】立正大学心理学部対人・社会心理学科 専任講師 2020年,早稲田大学大学院文学研究科心理学コース博士後期課程修了。博士(文学)。著訳書は『たのしいベイズモデリング』(分担執筆,北大路書房),『パーソナリティのダークサイド』(監訳,福村出版)など。
■吉野伸哉(よしの しんや)【5章,6章,7章】早稲田大学文学学術院 助手 早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程所属。2022年に博士号取得の見込み。論文は,「日本におけるBig Fiveパーソナリティの地域差の検討」(共著,環境心理学研究)など。
- 書誌情報
『パーソナリティのHファクター』帯無書影
【書名】パーソナリティのHファクター：自己中心的で，欺瞞的で，貪欲な人たち
【定 価】2,640円（本体2,400円+税10％）
【判 型】四六判 208頁
【出版社】株式会社北大路書房
【発売日】2022年07月15日
【コード】ISBN：978-4-7628-3197-3 ，C1011
【概要】自分を利するために計算高く他人を操る，特別な地位や権利を得るに値すると自惚れている…「Hファクターの低い人々」は誠実な人を困惑させ，正直な人から時に搾取する。パーソナリティのHEXACOモデルを発案した心理学者たちが，彼らに特徴的な性格傾向や行動様式をふまえて，見分け方や上手なつき合い方をアドバイス。
【原書】Lee, K., & Ashton, M. C. (2012). The H factor of personality: Why some people are manipulative, self-entitled, materialistic, and exploitive—and why it matters for everyone. Wilfrid Laurier University Press.
【リンク】
https://www.kitaohji.com/book/b607791.html
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