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1.人事・評価・処遇制度の抜本的な見直しを実施済・実施予定の企業は約7割
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2.「ジョブ型」導入状況は「導入はしていないものの慎重に検討中」が多数
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3.「ジョブ型」導入の主な目的は「職務・成果の明確化と適正な処遇の実現」
大企業では労働市場のグローバル化への対応も要因となっている
■「当面する企業経営課題に関する調査 日本企業の経営課題 -組織・人事編-」概要
調査時期 |
2023年1月17日~2月10日 |
調査対象 |
JMAの法人会員ならびに評議員会社、およびサンプル抽出した全国主要企業(計4,000社)の人事部門の責任者 |
調査方法 |
郵送調査法(質問票を郵送配布し、インターネットにより回答) |
回答数・回答率 |
回答数596社・回答率14.9% (回答企業の概要は6ページに記載) |
1.人事・評価・処遇制度の抜本的な見直しを実施済・実施予定の企業は約7割
○ 人事・評価・処遇制度の抜本的な見直しの実施状況について尋ねたところ、「抜本的な見直しを実施済・実施中」は37.9%、「1~2年以内に実施予定」は32.4%と、合計で約7割の企業が、抜本的な見直しを実施、もしくは実施を予定していました。【図1】
○ 従業員規模別でみると、大企業・中堅企業は「見直し実施・実施予定」の割合が全体より高く、75%にのぼりました。大企業・中堅企業を中心に、人事・評価・処遇制度の見直しが進んでいることがわかります。
【図1】 人事・評価・処遇制度の抜本的な見直しの状況
2.「ジョブ型」導入状況は「導入はしていないものの慎重に検討中」が多数
○次に、人事・評価・処遇制度の見直しを実施済もしくは実施の可能性がある企業(n=571)に「ジョブ型」の人事・評価・処遇制度の導入・検討状況について尋ねたところ、全社・一部を問わず何らかの形で導入している企業は2割超でした。【図2】
○従業員規模別でみると、大企業は導入済の割合が高く、上記回答企業のうち約3割で導入がなされていました。中堅企業では「導入の予定はない」、中小企業は「検討していない」の割合が全体より高く、規模別で導入・検討状況に違いがみられました。
○ただし、いずれの規模でも最も割合が高かったのは、「導入はしていないものの慎重に検討中」(42.4%)で、大企業、中堅企業、中小企業いずれもこの選択肢の割合が最も高いという結果となりました。
【図2】 「ジョブ型」の人事・評価・処遇制度の導入の状況・検討の有無
3.「ジョブ型」導入の主な目的は「職務・成果の明確化と適正な処遇の実現」
大企業では労働市場のグローバル化への対応も要因となっている
○「ジョブ型」人事制度を導入している企業(n=126)に対して、導入の目的を尋ねたところ、「役割・職務・成果を明確にし、それらに応じた処遇を実現するため」が74.6%と最も高く、次いで「専門性の高い人材を育成・活用するため」(40.5%)、「社員のキャリア自律意識を高めるため」(37.3%)の順となりました。【図3-1】
○従業員規模別でみると、大企業は「事業構造やビジネスモデルの変化に対応するため」「外部労働市場を見据えた処遇を実現するため(グローバル標準の人事の実現を含む)」が全体より10ポイント以上高く、事業環境の変化、特に事業のグローバル化が「ジョブ型」導入の大きな要因となっていることが推察されます。
○一方、「ジョブ型」の人事・評価・処遇制度を検討中・導入の予定はない企業(n=379)に対してもその理由を尋ねたところ、最も高かったのは、「十分な検討が行われていないため」(56.2%)でした。【図3-2】 「ジョブ型」導入には、対象職種・職層の検討や設定、職務記述書の作成、旧来の雇用システムからどのように切り替えを行うか等、考慮・対応すべき要素が多くあるため、検討途上である企業が多いことが想像されます。
○その他には、「ジョブ型」よりもやや柔軟に運用できる役割等級制度のような制度が妥当と考えたため」(44.9%)、「異動などの人材配置において柔軟に運用することが難しいため」(43.8%)、「社員に対して職務を限定せず多様な経験を積ませることを重視しているため」(39.1%)が理由として挙がりました。
【図3-1】 「ジョブ型」の人事・評価・処遇制度の導入目的
【図3-2】 「ジョブ型」の人事・評価・処遇制度を検討中・導入の予定はない理由
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調査結果を受けてのコメント
○今回は、企業の人事部門の責任者を対象に実施した「当面する企業経営課題に関する調査 -組織・人事編2023-」の調査結果として、日本企業にも導入が広がっている「ジョブ型」の人事・評価・処遇制度に関する調査結果をご紹介しています。
○まず、人事・評価・処遇制度の抜本的な見直し状況をみると、約7割の企業が抜本的な見直しを実施、もしくは実施を予定していました。働き方の変化やビジネスの専門性の高まりにより、従来の人事制度では成果を正当に評価できない、必要な人材の確保が難しいといった課題が生じ、見直しを迫られていることが想像されます。
○旧来の日本型雇用である「メンバーシップ型」に代わり注目されている「ジョブ型」雇用制度ですが、未導入かつ検討中の企業が多数という結果でした。その理由としては、そもそもジョブ型について十分な検討が行われていない企業も多いのですが、それ以外に、「ジョブ型よりも運用が柔軟な役割等級制度が妥当」、「ジョブ型は異動などの人材配置において運用が困難」といったことが挙げられていました。すなわち、目下の仕事や制度、組織が、ジョブ型にマッチしにくいと考える企業が一定数存在することが示唆されました。現時点で今後ジョブ型の導入が進むかどうかを見通すことは困難ですが、グローバル化を志向し、グローバル共通の人事制度や専門人材の確保に向き合う企業では、ジョブ型の導入を前向きに検討することが想像されます。
○ジョブ型・メンバーシップ型どちらにもメリット・デメリットはありますが、自社にとってジョブ型が必要か、フィットするかを検討することが、自社の企業価値・提供価値の再定義や求める人材の問い直しにつながると考えられます。
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回答企業の概要
■本社所在地
■業種
■従業員数
■売上高
◆詳細プレスリリースはこちらからダウンロード可能です。
https://prtimes.jp/a/?f=d16501-90-8217b1ce2500477dbdfb7231f9561727.pdf