2022年5月に経済産業省が発表した「人材版伊藤レポート2.0」や、2022年8月に内閣官房が公開した「人的資本可視化指針」などをきっかけに、多くの日本企業が「人的資本経営」への取り組みを加速しています。
コーチング研究所では、企業の経営層、管理職層、一般社員層を含むビジネスパーソンを対象に、自社の人的資本経営に関する取り組みに関するアンケートを実施しました。
本調査に関する詳細な内容は、コーチング研究所が発行するレポート「人的資本経営における経営陣と現場のギャップ」でご覧いただけます。
レポートをご希望の方は、下記URLからダウンロードいただきますようお願い申し上げます。
●ダウンロードページURL : https://biz.coacha.com/download/cri-research-report05.html
調査トピックス
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人材戦略の取り組みについて「成果が出ている」と回答したビジネスパーソンは20%以下
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経営層の4人に1人が「人材戦略に取り組んでおり、成果が出ている」と回答した一方、一般社員層で同回答をしたのは10人に1人程度
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経営層が考える企業価値向上に必要な項目は、「動的な人材ポートフォリオの策定と運用による適材適所の人材配置」や「多様な専門性や経験を持った人材を活かすダイバーシティの実現」とした一方、4人に1人の一般社員層が「企業価値向上に必要な項目はない」と回答
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ビジネスパーソンが考える企業文化定着の阻害要因は、「経営陣」「社員」「意識」「慣習」
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ビジネスパーソンの約80%が「経営陣がリーダーシップを変えていく必要がある」と回答
■調査サマリ
・人的資本経営に求められる5つの要素に関する自社の取り組み状況
人材戦略の取り組みについて「成果が出ている」と回答したビジネスパーソンは20%以下
人材版伊藤レポートにおいて人的資本経営を実現する人材戦略の共通要素として挙げられている下記の5項目について、自社の取り組み状況を聞きました(図1)。
5つ全ての項目について約半数のビジネスパーソンが「取り組んでいる」と回答した一方、「成果が出ている」と回答した人は、全体の約14〜17%にとどまる結果となりました。また、経営層の25%前後が各項目において「人材戦略に取り組んでおり、成果が出ている」と回答した一方、同回答をした一般社員層の割合は10%前後となり、経営層と一般社員層の間で人材戦略の取り組み状況の認識にギャップがあることが分かります。
【人的資本経営を実現する5項目】
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動的な人材ポートフォリオの策定と運用による適材適所の人材配置
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多様な専門性や経験をもった人材を活かすダイバーシティの実現
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生産性向上やイノベーション創出に向けたリスキル・学び直しの機会創出
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従業員のエンゲージメント向上
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時間や場所にとらわれない働き方を実現する環境づくり
・企業価値の向上に向けて重要と考える人的資本経営における項目
4人に1人の一般社員層が「企業価値向上に必要な項目はない」と回答
企業価値の向上に向けて、特にどの項目が自社にとって重要と考えられるか聞いたところ、経営層および管理職層と一般社員層では、必要だと考える項目に違いがあることが明らかになりました(図2)。
経営層や管理職層は「動的な人材ポートフォリオの策定と運用による適材適所の人材配置」や「多様な専門性や経験を持った人材を活かすダイバーシティの実現」を選択する傾向があるのに対し、一般社員層は他の層と比較して「時間や場所にとらわれない働き方を実現する環境づくり」を選択する人が多い結果となりました。また、一般社員層の約25%が「どの項目も必要だと思わない」と回答しています。
・人材戦略を企業文化へ定着させる際の阻害要因
ビジネスパーソンが考える企業文化定着の阻害要因は、「経営陣」「社員」「意識」「慣習」
次に、自社において人的資本経営を実現する人材戦略を企業文化に定着させる際の阻害要因となり得るものについて、自由記述で回答を収集しました(図3)。頻出度が特に高かった「経営陣」に次いで、「社員」「意識」「慣習」が並ぶ結果となりました。
・経営陣に求められるリーダーシップ
ビジネスパーソンの約80%が「経営陣がリーダーシップを変えていく必要がある」と回答
人的資本経営を推進する経営陣のリーダーシップについては、その変化の必要性有無と、どのようなリーダーシップを発揮していく必要があるかの2点を聞きました。
全ビジネスパーソンの80%程度が「経営陣は、これまで発揮してきたリーダーシップを変えていく必要がある」と回答し(図4)、経営陣が発揮すべきリーダーシップに対する自由回答には「部下」「目標」「現場」「明確」という単語が多く記載される結果となりました(図5)。
また、下記の自由回答の内容要旨からは、社員が経営陣から目標や指示を押しつけられていると感じており、一方通行のコミュニケーションを変えてほしいという要望があることがうかがえます。
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社員が同じ方向を向いておらず、会社の目標を理解していない
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主体性や当事者意識に欠け、前例を踏襲することや指示を待つことが根付いてしまっている
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過去の成功にとらわれていて、変化に対する抵抗がある
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経営陣の既成概念や古い考え方を現場は強要されていると感じている
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経営陣と社員の間には距離があり、社員は経営陣のトップダウンに納得できない
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一方向のコミュニケーションではなく、部下の意見を取り入れることや、現場をもっと理解してほしい
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できるだけ具体的な形で目標や方向性を提示してほしいが、社員の自主性も尊重してほしい
<調査概要>
調査方法:インターネットリサーチ
調査時期:2022年12月20日~12月22日
調査対象:社員数50名以上の企業に属する会社員・経営者
有効回答者数:651名
■コーチング研究所とは
コーチング研究所は、株式会社コーチ・エィの研究開発部門です。コーチ・エィが長年培ってきた「組織開発に向けたコーチング」の豊富な経験とリサーチ実績をもとに、人と組織の状態を可視化し、コーチングの可能性を科学的な視点から読み解く活動をしています。また、コーチング研究所のリサーチデータは新商品の開発や既存のサービスの品質向上に活用されています。
コーチング研究所 : https://www.coacha.com/cri/
■株式会社コーチ・エィ
コーチ・エィは、1997年創業(当時はコーチ・トゥエンティワン)のエグゼクティブ・コーチング・ファームです。「人は関わりの中に存在する」という考え方のもと、個人の成長支援にとどまらず、個人を取り巻く関係性に焦点をあて、システミック・コーチング™というアプローチで、組織全体の成長を支援する対話型組織開発を推進しています。創業以来、多数のコーチング関連書籍を出版し、日本におけるコーチングの普及・拡大に貢献してきました。
東京、ニューヨーク、上海、香港、バンコクに拠点を構え、5つの言語(日本語、英語、北京語、広東語、タイ語)でグローバルに事業を展開しています。コーチング研究所(CRI)という専門のリサーチ部門を備え、豊富なコーチング実績の分析データをもとに、エビデンスに基づいたコーチングを提供しています。
コーチ・エィ コーポレートサイト: https://www.coacha.com/
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