なぜ今、若い世代のためのリトリートなのか
気候変動、経済格差、資源の枯渇、疫病の蔓延と混乱、各国間の軋轢と戦争など、世界規模での危機的状況が深刻化している。ともすれば私たちは、政治経済の構造改革や科学技術の発展によって、世界の問題は解決できるものだと思いがちだ。近現代の文明の歴史はそのように築かれ、これからも引き続き外側の変革はなされていく。しかし、問題の根源にある人間の内面の働きを知ることを、現代の課題はますます必要としている。
どれだけ外側の世界が変わっても変わることのない、名前と形を変えて繰り返されてきた人間の心の営みの変遷に目を向けるとき、問題の解決に至る一歩を、私たちは自らの中に見出していけるかもしれない。
このような時代の節目に、古今東西で人びとはリトリートを行ってきた。リトリートとは、人里離れた奥深い自然環境で過ごす、自分自身の中に深く潜っていく時間。幾千年の時の流れを感じるブナの原生林を歩き、ヨガや瞑想などの観想的な実践を通して、世界に関する知的な理解の土台となる身体的な智慧を養う。
自然の智慧を体現する達人や修行者のゲスト講師、多様な探求と実践の背景を持つファシリテーターと共に、これからの時代の世界観と価値観を模索する若い世代が探求の場を共創していく。
KOTOWARI Summer Retreat
一般社団法人KOTOWARIが毎年夏に主催する夏の宿泊型プログラムは今年で3回目となる。これまで『人新世の資本論』を著した斎藤幸平氏や『カナルタ』の太田光海氏、環境活動家の辻信一氏などの哲学者、芸術家、活動家たちをゲストに呼び、国内外から集まった高校生、大学生、大学院生たちが、持続可能な世界のその先を見ていくための探求をしてきた。
西洋文明の枠組みを批判的に捉え直し、日本や東洋の世界観が持っていた直観的、統合的な在り方に未来のヒントを探っていく。今年のプログラムでは、知的な理解に留まらず、身体的な智慧を養うことを目的に、禅寺の修行僧たちや羽黒の山伏たち、農的な在り方を探求する哲学者などをゲストに招く。また、言語学者や心理学者、ウェルネス業界の起業家なども参画している。
例年のテーマである環境問題は人間と社会、自然環境が複雑に絡み合って生じており、多角的な視点で考えなければならない。それはまさにリベラルアーツ思考であり、参加者は経済や環境、人間について多層的な理解を身につけていく。加えて、毎日の瞑想やヨガを通した実践的な学びが、現代的な頭を中心とした知識の盲点を補う。
リベラルアーツでは、人々の価値観や世界観が歴史や文化の潮流の中で形成されることを理解し、自身の前提や常識を相対化し、批判的な思考を通じて再評価する。その一方で、東洋の修行の道には人間的な思考の枠から離れた原理原則や本質(KOTOWARI=理)へと至る道筋が存在している。KOTOWARIでは、この西洋の理と東洋の理が交わる領域で現代の理を追求することを目指している。
プログラム中盤にはブナの原生林でワークを行い、身体感覚を通して自然のありようを認識し、世界に対する先入観や自分自身に対する固定観念を外していく。そして最終日には、一人ひとりがサマースクールでの学びを統合した「物語」を描き、自身の内面から社会と自然とのつながりを見出す価値観、世界観を醸成する。
[日時] 2023年8月16日(水)~ 20日(日)
[場所] 会津山村道場
[参加対象] 15歳 〜 25歳 (学校に所属している必要はありません)
[定員] 25人
[参加費] 無料 (会場最寄駅までの行き帰りの交通費のみ自己負担)
[申込締切] 2023年7月21日 (金)
[申込方法] https://kotowari.co/kotowari-summer-retreat-2023/ より応募
一般社団法人KOTOWARI
一般社団法人KOTOWARIは、一橋大学名誉教授の野中郁次郎氏やハーバード大学ビジネススクール教授の竹内弘高氏を理事に迎え、2021年から福島県奥会津で若者向けの教育プログラムを提供している。主宰の青木光太郎はアメリカのリベラルアーツ大学を卒業後、ヒマラヤ山脈でのヨガ・瞑想修行などを経て帰国し、一般社団法人KOTOWARIを設立。以来、リベラルアーツ教育とヒマラヤでの経験を土台とした、深い内省と自然の原体験を組み合わせた教育の場づくりに努めている。