日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社(本社:東京都品川区、代表取締役 医薬事業ユニット統括社長:ヤンシュテファン・シェルド、以下「日本ベーリンガーインゲルハイム」)は、汎発型膿疱性乾癬(のうほうせいかんせん、GPP:[Generalized Pustular Psoriasis])*の確定診断を受けたことのある患者さん(以下、患者さん)と膿疱性乾癬患者さんを診察している皮膚科医(以下、医師)を対象に、日本における膿疱性乾癬(GPP)の疾病負荷と治療に関する患者・皮膚科医間の認識ギャップ について調査研究を行い(以下、本調査研究)、結果が「Future Rare Diseases」に掲載されたことをお知らせいたします。
最も辛かった症状として、患者さんは、「皮膚症状」と回答した人が83%だったのに対し、医師が第一に取り除くべきだと考える症状は「全身症状」と、認識に違いがありました。特に、患者さんは第一に「膿疱」や「皮疹/皮膚のただれ、じゅくじゅくした状態」を取り除きたいと考える中、医師は皮膚症状に加えて「発熱や悪寒」などの全身症状を取り除くべきと考えていました。
また、目指している皮膚の状態について、患者さんの84%と医師の83%は、「皮膚症状が綺麗になること」を重視しており、「完全に綺麗な皮膚」を目指す患者さんは56%であったのに対し、医師は41%と違いがわかりました。
さらに、医師が患者さんに伝えていると報告した内容と、患者さんが説明を受けたとされる内容には相違があることがわかりました。
<研究アドバイザーおよび論文共著者のコメント>
本調査研究の研究アドバイザーおよび論文の共著者である帝京大学医学部 皮膚科学講座・教授 多田 弥生先生は「膿疱性乾癬(GPP)患者さんの治療においては全身症状のコントロールに目が向きますが、改めて結果を見ると、患者さんは特に皮膚症状を気にしているということを再認識しました。医師としては、全身症状の管理を行いながら、治療について患者さんと十分にコミュニケーションをとって、皮膚症状をコントロールしていくことが大切だと考えます。また、疾患や治療の説明にあたっては、繰り返し伝えること、患者さんの理解度を確認しながら治療方針の合意を得ていくことも重要です」と述べました。
<患者さん・医師への取り組みについて>
調査研究結果を踏まえ、日本ベーリンガーインゲルハイムは、現在展開している患者さんと医師、そして患者さん同士のコミュニケーションを効率的にサポートするためのサービス(アプリ)『GPPひろば』が、治療方針の共同意思決定のサポートとなればと考えています。
https://www.gpphiroba.jp/announcement.html
さらに、弊社が掲げる“Patient Centricity”の取り組みの一つとして、患者さんの声が起点となる、啓発プロジェクト『Illuminate Tomorrow』も本格始動しました。
https://illuminate-tomorrow.com/
日本ベーリンガーインゲルハイムは、乾癬患者さんが抱える多様な悩みを医師や周囲に相談できる環境づくりをサポートし、患者さんの生活の質の改善を後押しします。
<研究概要>
調査研究期間:医師調査:2022年4/22~4/28、患者調査:2022年4/8~6/10
調査研究方法:Webアンケート形式の質問票を用いてGPP患者と皮膚科医を対象に非介入横断研究を実施した(患者向け設問:51問、皮膚科医向け設問44問)。患者本人が回答困難な場合は、家族または介護者が調査票入力を支援することが認められた。
対象者:
1. 膿疱性乾癬患者さん46例
条件:皮膚科医によりGPPと診断あり
性別:不問 年齢:18歳以上
地域:全国
2. 皮膚科医66例
条件:日本皮膚科学会承認の生物学的製剤使用認定施設で現在1名以上のGPP患者の診療にあたっている
性別:不問
地域:全国
調査研究協力:株式会社インテージヘルスケア
調査研究依頼元:日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社
論文は以下のURLよりご覧になれます。
Patient–dermatologist gap in perception of disease burden and treatment of generalized pustular psoriasis in Japan | Future Rare Diseases (futuremedicine.com)
<主な調査結果>
■診断時の症状
最も辛かった症状として、患者さんは、「皮膚症状」と回答した人が83%だったのに対し、医師が第一に取り除くべきだと考える症状は「全身症状」と、認識に違いあり。
患者さんが診断時に最も辛かった症状として、膿疱(33%)や皮疹(28%)など、「皮膚症状」という回答が83%でした。一方、医師が第一に取り除くべきだと考える症状は、「全身症状」が58%(発熱や悪寒(52%)、全身の倦怠感(6%))と最も多くみられました。<図1>
特に、患者さんは第一に「膿疱」や「皮疹/皮膚のただれ、じゅくじゅくした状態」を取り除くべきと考える中、医師は第一に「発熱や悪寒」と考えていました。<図2>
<図1>
<図2>
【患者さんへの設問内容】
確定診断時の膿疱性乾癬の症状や状態として最もつらかった(最も取り除いて欲しかった)症状や状態。
【医師への設問内容】
汎発型膿疱性乾癬の急性期の治療において、心血管系・呼吸器系のプライマリーケア以外に第一に取り除くべきと考えられる症状や状態。
■目指している皮膚の状態
医師・患者さんともに8割強は「皮膚症状が綺麗になること」を重視。一方、最も期待する(目指している)皮膚の状態には認識の違いあり。
皮膚症状に関して、医師の83%と患者さんの84%が、「皮膚症状が綺麗になること(「完全に綺麗な皮膚」+「膿疱・紅斑・鱗屑がほぼない」+「膿疱はほぼない」)を重視していました。
内訳をみると、患者さんが期待する状態として最も多かったのは「完全に綺麗な皮膚」(56%)に対し、医師が目指している状態は「膿疱・紅斑・鱗屑がほぼない状態」(42%)、「完全に綺麗な皮膚」(41%)でした。<図3>
<図3>
【患者さんへの設問内容】
膿疱性乾癬の皮膚の症状について、最終的にどのような状態になることを期待していたか。
【医師への設問内容】
汎発型膿疱性乾癬の皮膚の症状について、最終的にどのような状態になることを目指しているか。
■医師からの説明:治療について
「治療薬・治療方法」や「治療の目標を共有した上での現状の説明」について、医師と患者さんに乖離あり。
「治療薬・治療方法」は、医師は91%が説明している回答したのに対し、患者さんは67%でした。また、「治療の目標を共有した上での現状の説明」は、医師は53%が説明していると回答したのに対し、患者さんは35%という結果でした。<図4>
<図4>
【患者さんへの設問内容】
膿疱性乾癬の治療や治療の経過について医師から説明があった事項。
【医師への設問内容】
汎発型膿疱性乾癬の治療や治療の経過について患者さんに説明する事項
* 【膿疱性乾癬[GPP:Generalized Pustular Psoriasis]について】
GPPは、生命を脅かすおそれのある希少な難治性皮膚疾患であり、尋常性乾癬とは臨床的に区別されます[1,2]。GPPは、好中球(白血球の一種)が皮膚に集積することによって引き起こされ、痛みを伴う無菌性膿疱が全身に多発します[1]。臨床経過には幅があり、急性症状の再発を繰り返す患者さんもいれば、症状が遷延して断続的に症状の悪化が起こる患者さんもいます[1]。GPPの急性症状の重症度は人によって異なりますが、治療せずに放置すると、心不全、腎不全、敗血症や多臓器不全などを引き起こす可能性があり、場合によっては命にかかわります。この慢性かつ全身性の疾患は、患者さんのクオリティオブライフに重大な影響を及ぼし、医療にとって負担となります[3]。GPPは、地域によって罹患率に差があり、男性よりも女性の方が、罹患率が高い傾向にあります[2,4,5,6]。許容できる安全性プロファイルを持ち、GPPの急性症状を迅速かつ完全に解消し、再発を防止する治療薬に対するアンメットニーズが存在します。
ベーリンガーインゲルハイムについて
ベーリンガーインゲルハイムは、今日そして次世代にわたり、暮らしを変革する画期的な医薬品や治療法の開発に取り組んでいます。研究開発主導型のバイオ製薬企業のリーディンクカンパニーとして、アンメットメディカルニーズの高い分野において、イノベーションによる価値の創出に日々取り組んでいます。1885年の創立以来、ベーリンガーインゲルハイムは、株式を公開しない独立した企業形態により長期的視野を維持しています。ヒト用医療用医薬品、アニマルヘルスおよびバイオ医薬品受託製造の3つの事業分野において、52,000人以上の社員が世界130ヵ国以上の市場で事業を展開しています。
詳細は、下記をご参照ください。
https://www.boehringer-ingelheim.com/
(ベーリンガーインゲルハイム)
https://www.boehringer-ingelheim.jp/
(ベーリンガーインゲルハイム ジャパン)
https://annualreport.boehringer-ingelheim.com
(アニュアルレポート 英語)
References
- Navarini AA, et al. European consensus statement on phenotypes of pustular psoriasis. JEADV. 2017;31:1792-1799.
- Crowley JJ, et al. A brief guide to pustular psoriasis for primary care providers, Postgraduate Medicine. 2021;133(3):330-344.
- Hanna M, et al. Economic burden of generalized pustular psoriasis and palmoplantar pustulosis in the United States. Curr Med Res Opin. 2021. 37(5):735-742
- Ohkawara A et al. Generalized pustular psoriasis in Japan: two distinct groups formed by differences in symptoms and genetic background. Acta Derm Venereol. 1996 Jan;76(1):68–71.
- Augey F, et al. Generalized pustular psoriasis (Zumbusch): a French epidemiological survey. European Journal of Dermatology. 2006; 16(6):669-673.
- Jin H, et al. Clinical features and course of generalized pustular psoriasis in Korea. The Journal of Dermatology. 2015; 42(7):674-678.