女子ボートレーサー トップクラス52人アンケート

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 日本モーターボート競走会は、女子のトップレーサー52人を対象にアンケートを行いました。近年女子の活躍は目覚ましく、今年は遠藤エミが史上初めて最高峰のSG(スペシャル・グレート)制覇を達成、新時代を切り拓きました。人気・実力ともに男子と肩を並べつつある状況を、本人たちはどのように感じているのでしょうか。
 また、ボートレーサーは男女ともに選手寿命が長く、結婚・出産後もプロ競技生活を続けるワーキングウーマン、ワーキングマザーが多数いることで知られています。実力主義の世界で働く女性の職業感にも迫りました。

【アンケート概要】

●実施日:2022年8月2日~7日、ボートレース丸亀

●回答者:GⅠ「第36回レディースチャンピオン」出場選手52人
●回答者のプロフィール:
 <年齢> 平均38歳
      20代 9人,30代 22人,40代 15人,50代以上 6人
 <級別> A1級 23人,A2級 20人,B1級 9人
 <年収> 平均2千3百万円(2021年)

1.男女の実力差、女子トップの2割は「互角」

 ボートレースは男女がほぼ同じ条件で戦うプロ競技です。近年は、最高峰のSG競走にも女子レーサーが当たり前のように出場し、男子強豪を相手に上位争いを演じています。果たして本人たちは、現在の男女の実力差をどのように認識しているのでしょうか。
 総合的に見た男女の実力差は、「かなり離れている」(16人)と「まあまあ離れている」(23人)が7割強、「それほど離れていない」(9人)と「男女差はない」(1人)は2割弱でした。女子トップクラスの2割程度は、男子ともほぼ互角に渡り合える感覚を持っているようです。
 ボートを操る乗艇技術は、「かなり離れている」(20人)と「まあまあ離れている」(25人)が大半を占めました。「それほど離れていない」(5人)は1割弱、「男女差はない」と答えた選手はいませんでした。乗艇には体力や筋力も必要で、男子とのパワーの差はなかなか埋めがたいようです。
 エンジン整備・プロペラ調整についても、「かなり離れている」(10人)と「まあまあ離れている」(19人)が半数以上でした。しかし、「それほど離れていない」(18人)と「男女差はない」(3人)も合わせて4割で、乗艇技術ほどの差は感じていないようです。

2.女子の武器は「体格」「ハート」「コミュニケーション」
 「女子が男子より優れているところ」について聞きました。最も多かった回答は「体格」(19人)です。ボートレースは同一規格のボートとエンジンを使用するため、体重が軽い方が有利です。選手たちが過度の減量を行わないように、男子は52kg、女子は47kgの最低体重制限が設けられています。この5kgの差が、女子には貴重なアドバンテージとなっています。
 それ以外では「向上心」(15人)や「ハングリー精神」(10人)など、メンタル面に関するものが上位にきました。ハートの強さでは男子に負けません。「コミュニケーション能力」(11人)も女子の強みのようです。水の上ではライバルですが、陸の上では職場の同僚。互いにアドバイスしたり、作業を手伝ったりと、仕事ができる女子は人付き合いも上手なのでしょう。

 
3.7割以上が「男女混合レースは好き」
 「男女混合レースは好きか」とたずねたところ、「大好き」(5人)と「どちらかというと好き」(30人)が合わせて7割近くとなりました。「男女混合レースが好きな理由」は、「女子レースより勉強になる」(17人)、「男子と戦うのが楽しい」(13人)、「男子に勝つと自信になる」(11人)などでした。男子との実力差を感じながらも、強い相手と戦うことを意欲的に楽しんでいることがうかがえます。

 

4.仕事の魅力は「収入」「やりがい」
 「ボートレーサーという仕事の魅力」を聞いたところ、「収入」(46人)、「やりがい」(31人)、「実力主義」(22人)が上位となりました。回答者の平均年収は2千3百万円(2021年)、最高は平高奈菜の5千4百万円です。生涯獲得賞金が10億円を超えている選手も2人(日高逸子、山川美由紀)います。一般的な職業に比べて高い収入が得られ、日々の努力が勝ち星や賞金となって表れることがモチベーションになっているようです。

5.職場環境には半数以上が満足、「託児施設があれば・・・」の声も
 ボートレーサーは性別や年齢に関係なく、出場期間中はレース場と宿舎に滞在します。女子レーサーたちは不便を感じずに働けているのでしょうか。「職場の施設・設備に満足しているか」を聞いたところ、「おおむね満足」(6人)と「どちらかというと満足」(23人)が合わせて約56%、「どちらかというと不満」(19人)と「かなり不満」(3人)が約42%で、満足派がやや上回りました。
 「職場に設けてほしい(増やしてほしい)施設・設備」は、「マッサージ・リラクゼーション」(39人)が最多となりました。身体が資本のアスリートだけに、心身をケアする設備を求めているようです。続いて多かった回答は「託児施設」(10人)です。出産後に復帰する選手が増えていることの表れと言えます。なお、現在の規則では、出場期間中は家族であっても接触・連絡は出来ません。

6.我が子にも勧められる素敵な仕事

 ボートレーサーの父や母に憧れて、同じ道に進む二世レーサーは少なくありません。「自分の家族がボートレーサーになりたいと言ったら賛成するか」を聞いたところ、「はい=賛成」(23人)が「いいえ=反対」(6人)を大きく上回りました。我が子にも自信を持って勧められる素敵な仕事だと感じているようです。
 「第36回レディースチャンピオン」の優勝者は香川素子です。選手生活26年、初のGⅠタイトル獲得でした。息子の颯太も駆け出しのボートレーサー。親として先輩として、この仕事の大変さと素晴らしさを身をもって伝えました。

  
7.一流の条件は「安定した成績」、「年収5千万円」
 最後に、女子レーサーが目標とする「一流のボートレーサー像」について聞きました。一流に必要な条件は、約6割が「安定してよい成績」(31人)を挙げました。確かな実力があれば、タイトルや賞金は後からついてくるということでしょう。次いで「選手仲間や関係者からの信頼」(24人)、「ファンからの支持・人気」(20人)です。ボートレーサーとして仕事ができるのは、周囲の支えがあってこそというプロフェッショナルの自覚がうかがえました。
 「一流のボートレーサーに相応しい年収額」は、「5千万円以上」(19人)が最も多く、次いで「3千万円以上」(12人)でした。

 

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