その結果、以下のことが明らかになりました。
- 企業が顧客志向であるほど、従業員エンゲージメントが高い
- 特にサービス業界の従業員は「会社の顧客志向性」を重要視する
- 自社を「顧客志向だと感じている」一般社員は、役員クラスのわずか半数
今回の調査からは、企業が顧客志向に真剣に取り組むことで、従業員エンゲージメントの向上に良い影響をもたらすことが明らかとなりました。また、役職によって会社に対する顧客志向度の認識の違いが明らかになったことから、役職によって触れる情報の質や量に違いがあり、そのことが従業員エンゲージメントの向上に関係していることがわかりました。
(※1)eNPS℠とは…「Employee Net Promoter Score(エンプロイー・ネット・プロモーター・スコア)」の略。従業員エンゲージメント(企業に対する愛着・信頼の度合い)を数値化した指標。「現在の職場で働くことを親しい友人や知人にどの程度おすすめしたいと思いますか?」という質問に0~10の推奨度から回答してもらい、9・10を選択した推奨者の割合から0~6を選択した批判者の割合を引いて算出する。
●調査結果のポイント
今回の調査では、会社の利益ではなく顧客の利益を最優先する姿勢を「顧客志向」と定義し、顧客志向と従業員エンゲージメントとの関係性を調査しました。
業界別eNPSや35の従業員体験の詳細の結果については、ダウンロード資料をご覧ください
https://www.emotion-tech.co.jp/resource/2023/employ_engagement2023
1. 企業が顧客志向であるほど、従業員エンゲージメントが高い
「自分の会社が顧客志向だと思うか」という問いに対して、「非常にそう思う」と回答した人のeNPSが-45と最も高く、「全くそう思わない」と回答した人のeNPSが-93と最も低い結果となりました。この結果から、顧客志向の度合いと従業員エンゲージメントには高い相関関係が見られる、すなわち企業が顧客志向であるほど従業員エンゲージメントが高まることが推測できます。
また、会社の顧客志向性に個人の顧客志向性をかけ合わせて分析したところ、個人の顧客志向性を重要視する人(「あなたが働くうえで「会社が顧客志向であること」はどの程度重要ですか?」に対して「非常に重要だと思う」、「やや重要だと思う」を選択した人)の従業員エンゲージメントは、次のように違いがありました。
自分の会社が顧客志向であると理解している場合の従業員エンゲージメント(職場推奨度)は5.3ポイント(11段階中)だったことに対し、会社が顧客志向だと思えない場合の従業員エンゲージメント(職場推奨度)は2.7ポイントでした。
つまり、個人の顧客志向性を重要視している人は、自分の会社の顧客志向性を感じられないことによって、従業員エンゲージメント(職場推奨度)が大きく低下することがわかりました。以上のことから、会社が顧客志向を実践できているかどうかが従業員エンゲージメントの向上に影響を与えていると考えることができます。
2. 特にサービス業界の従業員は「会社の顧客志向性」を重要視する
業界別では、特に「職業紹介/派遣」「宿泊」「金融」「教育」「飲食」が顧客志向への関心度合いが高い業界であることが明らかになりました。これらの業界では、従業員が顧客と直接接点を持ちサービス提供を行う仕事が多く、顧客志向の重要性を認識しやすいことが考えられます。
3. 自社を「顧客志向だと感じている」一般社員は、役員クラスのわずか半数
会社の顧客志向度合いの認識には、立場によって大きく差があることが判明しました。
「あなたの会社はどの程度、顧客志向だと思いますか?」という質問に対し「非常にそう思う」を選択した割合は、役員・部長クラスでは22.2%、課長・係長・主任クラスは12.2%、一般社員は11.0%と、役職が一般社員に近づくにつれ、会社の顧客志向性に対しての認識度が下がっていました。これは、経営者や経営陣が持つ顧客志向の姿勢が会社全体にまで浸透していない可能性を示唆しています。
●調査の実施背景
人口減少による労働力不足が叫ばれる昨今、2022年6月、政府は「経済財政運営と改革の基本方針」(※2)において、「人への投資」に重点を置き、3年間で4000億円規模の予算を投じることを発表しました。人材を資源ではなく「資本」と捉え、従業員の働きがいの向上に着目した投資を行うことで最適なリターンを生み出すという人的資本経営の実現は、今やあらゆる企業にとっての共通命題です。
エモーションテックでは2013年の創業当初より、会社が従業員の働きがいを大切にすることでエンゲージメントが向上し、提供するサービス品質が向上する結果、良い顧客体験が創出され、企業収益が向上するという好循環を描いた「サービス・プロフィット・チェーン理論」(※3・以下、SPC理論)に基づいた分析手法の研究を行っています。(※4)
今回の調査では、人的資本経営にとっての重要指標と言われている従業員エンゲージメントスコアの1つである eNPSとその要因となり得る35項目の従業員体験の実態把握と共に、SPC理論で提唱されている従業員エンゲージメントと顧客ロイヤルティのつながりという観点から「顧客志向」に関する調査を実施しました。
(※2)出典:内閣府「経済財政運営と改革の基本方針 2022」
(※3)1994年にハーバード大学のヘスケット教授とサッサー教授らが”Putting the Service-Profit Chain to Work”という論考にて発表した概念。
(※4)2019年9月に顧客体験向上につながる従業員体験を見つけ出す特許技術(特許第6588176号:評価結果を分析するためのコンピュータシステムおよびそのコンピュータシステムにおいて実行される方法およびプログラム)を取得
●調査概要
主要15業界の企業に所属する6,187名を対象にeNPS(従業員エンゲージメント)に関する調査を行いました。「現在の職場で働くことを親しい友人や知人にどの程度おすすめしたいと思いますか?」という1つの質問から導き出すことのできる指標eNPS、そのスコアの構成要因となり得る従業員体験(35項目)に加え、顧客志向性についての調査を行いました。
調査対象 | 主要15業界の企業に所属する6,187名 |
調査方法 | インターネット調査 |
調査期間 | 2022年7月13日~2022年8月9日 |
回答数 | 6,187件(有効回答数) |
本調査の詳細は、ホワイトペーパー「会社が顧客志向であることが従業員エンゲージメントを高めている〜15業界でのeNPS調査を実施〜」(全16ページ)をダウンロードの上、ご覧ください。
資料内容の詳細
1.調査概要
1-1. 調査対象業界
1-2. 企業規模内訳
1-3. 調査内容
a. 調査構成
b. eNPS とは
2.調査結果:「会社が顧客志向であること」が従業員エンゲージメントを高めている
2-1. 職場に対する推奨度が高いほど、顧客志向が重要だと認識している
2-2.「会社が顧客志向であること」が従業員エンゲージメントを高めている
2-3. 顧客志向と従業員エンゲージメントは相互に影響しあっており、
企業としての顧客志向を浸透させていくことが重要
3.調査結果:全体及び各業界における eNPS
3-1. 回答結果全体の eNPS
a. 人的資本に関する指標との関係
3-2. 業界別 eNPS
3-3. 従業員規模別 eNPS
3-4. eNPS を正しく活用するために
【記事引用時のお願い】
本調査結果の引用・転載時には「株式会社エモーションテックによる15業界のeNPS℠(従業員エンゲージメント)調査」とクレジットを明記いただけますようお願い致します。
株式会社エモーションテックについて
CX(顧客体験)の向上をサポートする「EmotionTech CX」、EX(従業員体験)・エンゲージメントの向上をサポートする「EmotionTech EX」を提供。感情に関するフィードバックデータの正確な計測及び、特許を取得している独自の解析技術により、組織課題の可視化と改善実行を支援します。
注:ネット・プロモーター、ネット・プロモーター・システム、ネット・プロモーター・スコア及び、NPS は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、NICE Systems, Inc.の登録商標又はサービスマークです。 eNPS はベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、NICE Systems, Inc. の役務商標です。