一般に高い周波数帯の電波は直進性が強く、減衰しやすいため、電波を広範囲に届けることが難しくなります。このため、これまでは、全方向へ電波を届ける4つ以上の基地局アンテナが必要でしたが、マルチセクタアンテナでは1つで対応可能なため基地局装置の小型化が実現します。
本実証実験では、本基地局装置に5G基地局制御装置の実機を接続し、28GHz帯の電波を用いた通信で、 1つのマルチセクタアンテナから全方向への電波放射と無線ビームの制御による切り替えを確認しました。 マルチセクタアンテナのアンテナ素子単体の指向性測定は、2022年にドコモで実施していましたが、5G基地局装置にマルチセクタアンテナを実装し無線ビーム制御を行った実験は、世界初※となります。
マルチセクタアンテナとは、360度全方向の空間を複数(マルチ)のエリア(セクタ)に分け、1つのアンテナ筐体からそれぞれのエリア(セクタ)に対し、同時かつ独立に電波を送受信するアンテナです。本実証実験に用いたマルチセクタアンテナは、特定の方向に強く電波を送受信できる指向性アンテナ素子を放射状に12素子配置したアンテナで、テレビ放送などで用いられる八木・宇田アンテナを高周波数帯に応用したものです。屋内を高い周波数帯の電波で全方向にエリア化するには、従来は多素子の平面アレーアンテナを複数用いる必要があり、付随する回路規模が増大し、消費電力や設置性において課題がありました。
本実証実験では、高いアンテナ利得を全方向に対して実現するマルチセクタアンテナと5Gで標準化されているビーム切り替え技術を組み合わせることで、基地局装置の低消費電力・小型化を実現します。本基地局装置のマルチセクタアンテナを天井に設置することで従来より少ない基地局で高い周波数帯の電波を部屋の隅々まで届けることができ屋内の通信環境の改善に貢献します。
今後、本基地局装置を用いてさまざまな環境での実証検証を行いながら、アンテナ部分の回路実装を進め、低コストでのエリア構築が可能となる基地局装置の実用化をめざします。横浜国立大学、ドコモ、日本電業工作、富士通は5G Evolution & 6G に向け、ミリ波・テラヘルツ波など高周波の電波の有効利用および屋内での電波のつながりやすさをめざし取り組んでまいります。
本実証実験については、ドコモが2023年2月2日(木)からオンライン上で開催する「docomo Open House’23」にてご紹介します。
◆「docomo Open House’23」オンラインサイト:
https://www.docomo.ne.jp/corporate/technology/rd/openhouse/openhouse2023/
※ 2023年1月30日現在、ドコモ調べ。