高速道路のネットワークを永続的に維持していくために、供用から30年を超え老朽化の激しい橋梁の床版取替工事が各地で進められています。床版取替工事は、既設橋の形状把握、復元・補強設計、交通制約に応じた新設床版の割付け、既設床版の撤去計画などを網羅的に進めていく必要があり熟練者のノウハウに頼っています。また、従来の2次元CADオペレータによる割付け作業では、複数案の作成から最適案の決定までに設計者のチェック・修正指示を含めて多くの時間を要しています。そこで、オフィスケイワンと大林組は、床版取替工事の生産性向上に向けて、登録したルールをもとに新設床版と壁高欄の割付け、既設床版の切断位置の決定(カット割り)を設計者自身が行えるシステムを開発しました。
2.開発システムの概要
新設床版の割付け、壁高欄の割付け、属性入力、既設床版のカット割りをあらかじめ登録したルール(※1)をもとに自動で複数案を作成することができます。複数案をもとに関係者協議により決定した設計プランは、平面図や3次元モデルなどのデジタルデータに変換して次工程に引き継ぐことが可能です。本システムによる割付け作業の実証テストでは、従来作業に比べ90%の生産性向上を確認しています。
割付け機能のほかに、新設床版のハンチ形状シミュレーション機能、既設床版のジャッキアップ孔配置機能、4D施工計画シミュレーション機能などがあります。
既設鋼桁の3次元モデリングは、鋼橋CIMシステム「CIM-GIRDER」を採用しました。合理化設計に加えて板継ぎ入力を機能追加することにより、建設当時の道路橋示方書に対応した3次元モデルを作成することが可能となっています。また、線形座標から3次元モデルを作成する「パラメトリックモデリング」を採用しているため、竣工図から入力データを先行作成した場合でも、既設鋼桁の測量完了後に実測を反映した3次元モデルを大きな手戻りがなく作成できるメリットがあります。
※1:標準版の長さ(許容する最大・最小長さ)、主桁との角度、中間支点との間詰位置の離隔、桁端部パネル長さ等のパラメータ
3.対外発表
開発システムは、オフィスケイワンと大林組により、土木学会とプレストレストコンクリート工学会にて発表しております。
・令和4年度土木学会全国大会 第77回年次学術講演会
・第31回プレストレストコンクリートの発展に関するシンポジウム
4.今後の展開
オフィスケイワンはこれまで、設計・図面情報を数値化して3次元モデリングを行う橋梁CIMシステムを開発・提供しモデリング業務の効率化に貢献してきました。今後は開発システムのような「設計思想をルール登録し複数の設計案を高効率に提示」するシステム開発にも注力することで、意思決定プロセスの改善・可視化・効率化、橋梁設計・施工のDX(デジタル・トランスフォーメーション)の実現に貢献してまいります。
5.オフィスケイワンについて
2014年の創業以来、道路・橋梁向けのBIM/CIMシステムの開発・販売、3次元設計サービス、3次元モデルの利活用研究を中心に事業展開しています。橋梁建設現場での生産性向上の取り組みにより、日建連表彰2020 第1回土木賞 特別賞を受賞するなど、設計と施工をつなぐICTベンダーとして建設DXに貢献します。
公式サイト https://www.office-k1.co.jp/
橋梁CIMシステム https://cim-system.com/
橋梁の建設現場におけるオープンイノベーション https://prism.office-k1.co.jp/
6.お問合せ先
オフィスケイワン株式会社 TEL.06-6567-8951 保田(やすだ)宛て
〒550-0013 大阪府大阪市西区新町1丁目10-2 大阪産業ビル8階
お問合せフォーム https://www.office-k1.co.jp/contact