■過去2回の展覧会「多層世界の中のもうひとつのミュージアム」と「多層世界の歩き方」では、現実空間と情報空間の双方から体験する展覧会のあり方を模索し、外出制限の時代とその要請にもとづくこれからの社会において、私たちの意識や感覚にどのような変化があらわれるのかを、メディア・アート作品※2を中心に構成し、考察を行ないました。
■今回は、メタバースやミラーワールドといった仮想空間や現実空間をデジタル化した鏡像世界が、いよいよ現実のものとなり、実装されつつある現在、リアルとバーチャルが共存する多層世界の中で、変化していくであろう私たちのリアリティのあり方に着目しました。
■ICCにおけるリアル展示に加え、一部作品については、オンラインからの体験も可能となっています。
※2 コンピュータをはじめとするさまざまな先端メディア・テクノロジーを使用したアート作品を総称する言葉。
柴田まお 《Blue》2020年– 内田聖良 《バーチャル供養講》 2021年-
撮影:Hayato Wakabayashi
1. 企画展「多層世界とリアリティのよりどころ」開催概要
英展覧会名 : Viewpoints of Reality in the Multi-layered World
開催期間 :2022年12月17日(土)~2023年3月5日(日)
【リアル展示】
会場 :NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]ギャラリーA
開館時間 : 午前11時〜午後6時
入場料 :一般 500円(400円)、大学生 400円(300円)
「ICCアニュアル2022」展とのセット券 :一般 800円(700円)、大学生 600円(500円)
(事前予約制・当日入場は事前予約者優先)
*( )内は15名様以上の団体料金
*身体障害者手帳をお持ちの方および付添1名、65歳以上の方と高校生以下、ICC
年間パスポートをお持ちの方は無料。
*予約方法の詳細は、後日ICCウェブサイトにてお知らせします
休館日※3 : 毎週月曜日、年末年始(12/26〜1/4)、ビル保守点検日(2/12)
※3 月曜日が祝日もしくは振替休日の場合、翌日を休館日とします。
休館日以外においても、開館時間の変更および臨時休館の可能性がございます。
最新情報はICCウェブサイト(https://www.ntticc.or.jp/)などでお知らせします。
【オンライン展示】
会場 : ハイパーICC(https://hyper.ntticc.or.jp/)
体験料 : 無料
主催 : NTTインターコミュニケーション・センター [ICC] (東日本電信電話株式会社)
2. 展覧会概要
メタバースやミラーワールドといった仮想空間や現実空間をデジタル化した鏡像世界が現実のものとなり、いよいよ実装されつつある現在、さまざまな場面で、私たちはリアルなものとバーチャルなものが共存する世界を生きるようになっています。そうした状況の中で、私たちのリアリティのあり方も変化しているのではないでしょうか。
たとえば、現実世界の建築が仮想世界でのシミュレーションにもとづいて設計されるなど、仮想世界が現実を模倣するだけではなく、現実が仮想世界から触発されるといった、現在の多層世界のあり方は、両者を明確に切り分けることができなくなっています。
リアルとバーチャルは、0と1、白と黒のような明快な対概念なのではなく、その間のグラデーションの無数の視点からながめられるものなのではないでしょうか。それぞれ個人が、リアルとバーチャルの間で、自分の居心地のいい場所を見つけるようなバランスの取り方が求められるようになるのかもしれません。
私たちが現実の延長として、もうひとつの現実としての拡張世界を持つようになった現在(未来)において、多層世界時代の現実のあり方はどう変化するのでしょうか。これからの私たちのリアリティのあり方はどのように変化するのかを考えてみたいと思います。
3. 出品作家(五十音順)
内田聖良
佐藤暸太郎
柴田まお
たかはし遼平
谷口暁彦
トータル・リフューザル(Total Refusal)
藤原麻里菜
キュレーション:畠中実、谷口暁彦
キュレトリアル・チーム:指吸保子、鹿島田知也
ハイパーICC共同キュレーション:谷口暁彦
会場デザイン・監修:NOIZ
*作品例については【参考】をご参照ください。
4. 新型コロナウイルス感染症対策
NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]では、新型コロナウイルス感染症拡大防止対策のため、お客様ならびにスタッフの健康と安全を考慮し、ご来館される全てのお客様に以下の対応のご協力をお願い申し上げます。
下記に該当する方は,ご入館をお断りさせていただきます。
・ 37.5度以上の発熱症状がある方。
(入館時にサーモカメラ及び、非接触型体温計での体温計測を実施します。)
・ 過去2週間以内に、感染拡大地域や国への渡航をされた方。
・ 発熱、咳、鼻水、倦怠感の症状が続くなど、体調不良の方。
・ マスクを着用されていない方。
最新情報はICCウェブサイト(https://www.ntticc.or.jp/)などでお知らせします。
5. ICCのご案内
所在地: 東京都新宿区西新宿3-20-2 東京オペラシティタワー4階
(京王新線 初台駅東口から徒歩2分)
【参考】出品作家と作品例
内田聖良 《バーチャル供養講》 2021年-*リアル、オンライン
3Dスキャンされた捨てられない思い出の品々が、それらとの記憶が書かれたテキストともに奉納された仮想空間
の「バーチャル供養堂」をVRで体験する作品です。内田は、「バーチャル供養講」という、ネット上における
人々のさまざまな記憶や感情が種々の軋轢を生じ、他人と会うことが禁忌となった時代における、架空の新しい民
間信仰を空想し、この作品を制作しました。会場では、供養のあとにペーパークラフト「のりしろさま」を配布
し、だれかの思い出の品を持ち帰り、組み立てることができます。また、オンラインでも供養を体験可能です。
佐藤瞭太郎《All Night》2022、新作 *リアル
「アセット」と呼ばれる、既存の3Dモデルだけを用いて制作された3DCG映像作品です。佐藤は、インターネットで収集された大量のアセットを「漂流物」ととらえ、作品の中でそれらのさまざまなキャラクターを並列に扱います。作品はそれぞれ異なる世界から集められたかのようなキャラクターたちが、脈絡なく一堂に会する非現実的な光景を描き出します。キャラクターたちは自分の意志とは無関係に、物語に翻弄されているようにも見えながら、それらアセットのデータがインターネット上を「移動」しながら「変形」していく様子を表しています。
柴田まお 《Blue》2020年– *リアル、オンライン
撮影:Hayato Wakabayashi
会場に設置された青色をした彫刻が、映像では、なにもない会場とクロマキー合成され、その形を消滅させてしまう作品です。実体としての彫刻が透明になって、展覧会場にある実際の彫刻とは異なる容態で、インターネット配信されます。現実の彫刻の姿は会場に足を運ばないと見ることができません。彫刻という、一般的には現実空間に形をもった立体物として存在する表現形式が、インターネット以降の環境における、多様な鑑賞環境の中でどのように展開可能かを考えます。
たかはし遼平《並行植物調査》2021年 *リアル、オンライン
撮影:竹久直樹
ゲーム空間における植物のリサーチにもとづいて制作された作品です。本作は、実際に公園や渓谷などを散策して、現実の植物の植栽を撮影し、ゲーム内のバーチャルな植物を生やす余地がありそうな場所に、付近の植物と似たような形状の植物をゲーム世界や3Dモデルのアセットから探し、植えるというプロセスで制作されています。たかはしは、現実世界における整備された庭や公園とゲーム世界の植栽の関係などを考察し、そこに関連を見出しています。
谷口暁彦 《骰子一擲 / a throw of the dice》2018年、新作 *リアル、オンライン
かつてどこかで実際にサイコロが落ちた風景を3Dスキャンし、3Dプリンタしたオブジェクトと、サイコロの投げるリアルタイム・シミュレーションによる作品です。シミュレーションの中でサイコロが落ちる瞬間、サイコロに重なるように、3Dスキャンされた風景が現れます。風景はサイコロの6つの面それぞれに埋め込まれていて、サイコロの面に応じて表示されます。ここでは、サイコロが6つの異なる時間と場所が保存され、呼び出される記憶装置として見えてきます。
トータル・リフューザル《How to Disappear》2020年 *リアル
オンライン・シューティング・ゲーム『バトルフィールドV』のプレイ映像を素材として制作された映像作品です。このゲームでは、ゲームがプレイヤーの自由意志によって遊ばれるものだからこそ、戦場から脱走したままプレイを継続することが不可能になっています。この作品では、リアリティを追求して制作されたビデオゲームの世界では存在を許されず、そして戦争史においてもほとんど光の当てられてこなかった脱走者の歴史が語られます。そしてビデオゲームと現実の戦争を対比しながら、現代のわたしたちにとってのリアリティがどこにあるのかを探っていきます。
藤原麻里菜 *リアル
《顔をハメてもその様子を誰も見ることができない顔ハメパネル》AR 2022年
《ZOOMをガチャ切りできる受話器デバイス》2021年
《オンライン飲み会から緊急脱出できるマシーン》2020年など
《オンライン飲み会から緊急脱出できるマシーン》2020年
藤原は、頭の中に浮かんだ不必要なものをなんとか作り上げる「無駄づくり」を主な活動とするコンテンツクリエイターで、これまでに200個以上の不必要なものをYouTubeなどで発表してきました。本展では、そのなかからコロナ禍の生活でお馴染みとなったオンライン会議ツールを使用する際に、誰もが感じたことのあるささやかな気まずさを解消するための装置や、観光旅行が制限された時期に発想された、観光地におなじみの顔ハメ看板をARで再現しようとしたプロジェクトなどを展示します。