風洞実験について
空気抵抗の計測や流れの可視化などの実験を整った風の中で行う風洞実験は、身近な乗り物の開発でも使われている、工業化社会を縁の下で支える実験手法です。
風洞実験を行うには、整った風を生み出す風洞本体だけでなく、風速計や力センサをはじめとした周辺の計測機器が必要です。風速計は、風洞が生み出す風の風速を測ることはもちろん、実験対象物に取り付けて、物体の内外を吹き抜ける風を測ることもあります。
写真1:日本風洞製作所製「Aero Optim」を用いた自動車の風洞実験の様子
写真2:自動車風洞実験における局所的な風速計測(イメージ)
超音波風速計について
風速計にも様々な種類がありますが、中でも、人が聞き取れない高い周波数の音で風速を測る「超音波風速計」は、低風速から高風速まで幅広い風速をカバーできるだけでなく、風向も同時に測定できる優れた機能を有しています。
従来の超音波風速計は、サイズが大きく、値段も高価なものでしたが、ストラトビジョンが開発した超音波風速計「ULSA」*は、小型・低価格な超音波風速計で、発表以来1年での累計出荷台数が100台を超えるなど、注目を集めています。
*超音波風速計の仕組みや、「ULSA」の開発ストーリーは、こちらも御覧ください。
写真3:超音波風速計 ULSA BASIC 本体
写真4:IoTモジュールを搭載したULSA M5B
共同開発の狙い
この共同開発では、ストラトビジョンの持つコンパクトな超音波風速計を製作する力と、日本風洞製作所の流体に関する知見を融合させ、下記のような機能を兼ね備えた超音波風速計を開発していきます。
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空力:空力的に最適化された形状により、計測への影響を抑え、精度を向上させること
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高風速対応:高風速域でも精度良く風速計測ができること
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コンパクト:風洞実験等の試験時に、供試体に取り付けて使うことができるコンパクトなサイズであること
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防塵・防滴対応:屋外での使用に耐える防塵・防滴性能を持つこと
開発において、ストラトビジョンは超音波風速計のセンサ・電子回路の開発を担い、日本風洞製作所は、設計・試験に必要な風洞装置の提供や、流体力学的な設計・解析・文献調査などを担います。
ストラトビジョンと日本風洞製作所が共同で実現する、新しい風洞実験、新しい風速計測ソリューションにご期待ください。
ストラトビジョン代表 河野紘基氏 コメント
風洞試験装置はものづくりの土台を支えるテクノロジーであり、重厚かつトラディショナルなイメージをもちますが、日本風洞製作所様は新進気鋭の若き技術者集団として、従来にない革新的なコンセプトの風洞製品を続々と世の中に生み出されてきました。
そのような「理論と実践」双方に根差した流体のプロフェッショナルの皆様と、超音波風速計に関する共同開発を行えることによって、大きなシナジーが生まれることを確信しています。
株式会社日本風洞製作所 代表取締役社長 ローンジョシュア コメント
風洞実験は、風速計をはじめとした周辺の計測機器なくしては成り立ちません。今回、同じ福岡を拠点とし、個人事業ながら高い技術力を誇るストラトビジョン様と協力関係を構築できたことは、大変光栄です。コンパクトな風洞Aero Optimと、コンパクトな超音波風速計との組み合わせで、風洞実験の門戸や選択肢をさらに広げていけるよう、関係者一同頑張ってまいります。
ストラトビジョンについて
成層圏など高高度の極限環境観測を低コストで行える無人観測気球の研究開発を行うため、2020年8月から個人での挑戦を開始。
気球回収技術の実現プロセスで小型気球に搭載可能なコンパクトな対気速度計が必要になり、2022年に独自の超音波風速計の開発に至りました。
一般販売を開始した超音波風速計ULSA(アルサ)は、発表1年で出荷台数100台を数え、大手メーカーや研究機関等で続々と導入いただいております。
公式HP:https://strvsn.net/
日本風洞製作所について
風洞試験装置や、流体関連の実験機器の設計・開発・製造・解析などを手掛ける、2016年10月に創業した九州大学発のベンチャー企業。従来、多くの人に手が届かなかった風洞試験を誰でも気軽にできる世の中を目指す「風洞の民主化」をスローガンに、コンパクト風洞試験システム「Aero Optim」をはじめとした製品開発・製造を手掛けています。今年3月には、静岡県沼津市に、一般の方も利用できる風洞実験施設「富士エアロパフォーマンスセンター」を開設し、自転車・自動車・ドローンなどの業界から注目を集めています。
富士エアロパフォーマンスセンターHP:https://fuji-apc.com/