●作家のコメント
空撮。この言葉を耳にしたとき、皆さんはドローンで捉えた写真や映像を連想するでしょうか。ドローンから見た視点は私たちの生活に浸透し、空撮写真がより身近に感じられるようになりました。
私、吉永陽一は約20年前に空撮の世界へ入り、自らの空撮作品をつくりはじめてから15年ほど経ちました。最近ではよく「ドローンなの?」と尋ねられますが、セスナ機やヘリコプターに搭乗して撮影する空撮です。根っから鉄道と飛行機が好き、それに「空を飛びたい」憧れ。それらがミックスして体現したのが、空鉄(ルビ:そらてつ)と呼ぶ、空撮の鉄道写真です。空撮した鉄道写真だから空鉄と、単純な閃きで誕生した言葉です。
私は学生時代、先輩写真家の鉄道空撮連載に衝撃を覚えました。いつしか自分なりの鉄道空撮作品をつくりたい。その強い気持ちが原動力となり、「空鉄」を日々追求し続けています。
空撮写真は自在なアングルから地上を俯瞰し、一目瞭然となるために記録性が高く、資料や調査研究用に最適です。日々撮影する空撮業務では、そういった客観的な写真が主です。では、その客観的な世界に自らの想いを注ぐことで、記録だけではない、より意思のこもった「じわぁ…」とくる作品はできないか。長年考え、追求してきました。そして人々の営みと鉄道、生活のなかの鉄道、人と鉄道の息づかいを感じられるような1カットを、上空から切り取っています。
本展は、2023年1月から何度も飛んできた日誌です。空から見る世界はその都度表情が変わり、毎日違った大気に包まれます。今日は大阪、明日は東京、今度は鹿児島。全国ではありませんが、その土地、その列車、その人々…。上空から様々な画角のレンズで切り取る世界にはいくつもの鉄道と街と人の息づかいがあり、ときには地上からは想像できない世界が広がっています。
どうぞ、空からの鉄道の世界をご覧ください。
【プロフィール】
吉永陽一(よしなが よういち)
1977年東京都生まれ。
大阪芸術大学写真学科卒業後、建築模型製作会社スタッフを経て空撮会社へ。
フリーランスとして空撮のキャリアを積む。
15年前から長年の憧れであった鉄道空撮に取り組み、2011年の初個展「空鉄(そらてつ)」を皮切りに、個展や書籍などで数々の空撮鉄道写真を発表。「空鉄」で注目を集めている。
ライフワークは鉄道空撮のほか、学生時代から撮り続けている6×6や4×5の鉄道情景や廃墟。空撮以外にも旅や鉄道などの紀行取材も行い、陸空で活躍。
公益社団法人 日本写真家協会 正会員
日本鉄道写真作家協会 正会員
●THE GALLERY 企画展 吉永陽一「空鉄 2023 空撮鉄路日誌」
会 場:ニコンプラザ東京THE GALLERY、ニコンプラザ大阪THE GALLERY
展示期間:東京 2023年11月21日(火)~12月4日(月)
大阪 2023年12月14日(木)~12月28日(木)
開館時間:10時30分~18時30分(日曜日休館/最終日は15時まで)
●「THE GALLERY」について
「THE GALLERY」は2017年に東京・大阪に開設した写真文化の普及・向上を目的とする写真展示場です。ニコンの機材を用いて著名な写真家が制作した質の高い作品を展示する企画展の他、ニッコールクラブ会員展、写真団体展などを開催します。