ヨコハマ海洋市民大学2023年度講座第3回「磯の生物観察」を開催しました!

この記事は約6分で読めます。
ヨコハマ海洋市民大学実行委員会は、令和5年8月5日(土)に横浜の海が抱える社会課題の解決に挑戦する市民を養成する講座「ヨコハマ海洋市民大学2023年度第3回講座」を開催いたしました。
このイベントは、次世代へ豊かで美しい海を引き継ぐために、海を介して人と人とがつながる“日本財団「海と日本プロジェクト」”の一環です。

<イベント概要>

・「横浜の海が抱える社会課題を自ら考え、解決できる市民(海族・うみぞく)」を育成するヨコハマ海洋市民大学2023年度講座(年10回開催)の第3回目「磯の生物観察」を開催。

・開催日時:令和5年8月5日

・開催場所:真鶴町立遠藤貝類博物館、三ツ石海岸

・参加人数:11名(会場受講生5名、ゲスト1名、講師・実行委員5名)

・共催:日本財団 海と日本プロジェクト

・後援:横浜市、海洋都市横浜うみ協議会

通常は平日の夜、みなとみらいや赤レンガ倉庫を眺めながらの講座となるヨコハマ海洋市民大学ですが、残念なことに横浜には気軽に生物観察できる磯がありません。今回は土曜日の朝から講師の水井さん(特定非営利活動法人ディスカバーブルー代表理事)が拠点としている真鶴半島三ツ石海岸にやってきました。

みなさんは神奈川県の真鶴半島と三浦半島を線で結ぶと相模湾(北側)・相模灘(南側)というように呼び名が異なることをご存知でしたか?その相模湾、相模灘の両方に接している真鶴半島は鶴という名前から想像できるように上空から見ると鶴が首を伸ばしているように見えるそうです。

ふだんは渡れない先端の三ツ石(笠島)ふだんは渡れない先端の三ツ石(笠島)

そんな真鶴半島は、沖を流れる黒潮の影響もあり暖かく、海中の環境はとても良いところです。地形的に深海(水深200m以上)がすぐそばに迫っていて西の静岡県熱海沖に見える初島との間でも水深は600m程度もあり、JAMSTECのしんかい6500や海上自衛隊の潜水艦も潜航することができるそうです。またダイビングスポットとしても有名で、たくさんの魚たちと色とりどりのソフトコーラルでとても色彩豊かな海だと紹介されました。生息する魚の種類も豊富で、ときどき定置網にジンベイザメが入ってしまうこともあるそうです。

真鶴の海中景観真鶴の海中景観

磯で観察できる生物は大きく分けると3つです。1つめは海中を自由に泳ぐ魚やイルカ、クジラの遊泳生物(ネクトン)、2つめに泳げないか泳ぐ力があってもほぼ海底にいるカニやヒトデ、フジツボなどの底生生物(ベントス)がいます。これは当日配布されたガイドブックにも130種類くらいが掲載されていて、専門家が本気になって探すと200種類くらい見つかるそうです。そして3つめがプランクトン(浮遊生物)です。泳ぐ力はほとんどなく海面や海中を漂って暮らしています。今回の観察は2つめのベントスが中心ですね。

そしてヒョウモンダコやハオコゼ、ガンガゼ、スベスベマンジュウガニなど危険な生物の説明もありました。磯で安全に遊ぶためにはとても大切な情報ですね。

当日配布されたガイドブック当日配布されたガイドブック

そんな生き物の豊かな真鶴半島ははるか昔の噴火の際に流れてきた溶岩からできています。磯に降りると岩に空けられた人工的な穴(矢穴)に気づきました。これは真鶴の産業として石を切り出していた跡です。現在は採石場所が他に移り海岸では行われていないそうですが、なんと鎌倉時代から採石されていた記録があるそうです。ちなみに江戸城やお台場、明治以降も鉄道の敷石や、みなとみらいのドッグヤードガーデンなどにも使われているそうです。

岩場(磯)と矢穴岩場(磯)と矢穴

真鶴半島の陸上部分は豊かな森で、お林(おはやし)と町の人から呼ばれ愛されています。江戸時代、小田原藩によりクロマツが植林され、天皇家の所有となった明治維新後は火薬の原料となるクスノキも植林されたそうです。戦後は真鶴町の所有となり現在のクロマツとクスノキ、そして本来この地域に分布するスダジイの巨木が立ち並ぶ深い森となっています(不必要な開発はしなかったんですね)。海から森まで自然がそのまま残されており、魚付き保安林(うおつきほあんりん)にも指定されています。

急な階段を降りて磯に立つとたくさんの家族連れや釣り人がいます。箱メガネや網を持っている子どもたちもいて、とても楽しそうです。

さぁ、ここからは童心に還ってひたすら生き物を追いかける時間です。潮溜りには小魚もいますが全然網で捕まえられません。大きめの石をひっくり返すと大小さまざまなナマコやカニが隠れています。カニもすばしっこいので捕まえるのは大変です。石をひっくり返して観察した後はその石をもとに戻すのも忘れずに。直射日光で石についた小さな生き物が弱ってしまいます。

あっというまに50分の採取時間が終わり、参加者の集めた生き物を白トレーに入れて解説の始まりです。今回は真鶴町立遠藤貝類博物館の学芸員栢沼さんも採取と解説に加わってくれました。今回の生物観察ではなんとアオリイカを受講生が捕まえてくれました!潮溜りに取り残されていたようですが講師も長い間生物観察会をやっていて初めてのことだそうです。他にも指先ほどのチビイトマキヒトデやトラフナマコ、テツイロナマコ、ニセクロナマコ、イソナマコそしてイソガニやイソカニダマシ、ニザダイの幼魚などを観察することができました。講師陣からの解説が終わると生き物が弱る前に急いで海に帰します。
そして昼食時にはなんと、講師から観察の際に捕まえたクルマナマコの皮膚を少しいただいて骨片を顕微鏡で見るサプライズが!本当に車輪の形をしているんですね。ナマコの種類ごとにこの骨片デザインが異なるというのも実に不思議です。

観察した生物とクルマナマコの骨片観察した生物とクルマナマコの骨片

午後は希望者対象のロックバランシング講座です。石ころごろごろの海岸ならではの遊びですね。基本となる考え方を学んだ後は自由に積みながら、よりカッコ良くなる方法などを教えてもらい、それぞれ素敵な作品に仕上げていました。

参加者と石積み写真参加者と石積み写真

参加者の声                          

・複数回参加しているが、毎回新しい学びがある

・指の爪ほどのチビイトマキヒトデを観察できて嬉しかった

・最高に気持ちいい時間をすごさせていただきました

<団体概要>

団体名称:ヨコハマ海洋市民大学実行委員会

URL:https://yokohamakaiyouniv.wixsite.com/kaiyo/

活動内容:横浜市民が横浜の海が抱える社会課題を自ら考え解決に向けて行動できる海族(うみぞく)になるための養成講座を年10回(コロナ禍以前は年20回)開催している。座学だけではなく実際に海や海を学べる野外講座も開催している。

日本財団「海と日本プロジェクト」

さまざまなかたちで日本人の暮らしを支え、時に心の安らぎやワクワク、ひらめきを与えてくれる海。そんな海で進行している環境の悪化などの現状を、子どもたちをはじめ全国の人が「自分ごと」としてとらえ、海を未来へ引き継ぐアクションの輪を広げていくため、オールジャパンで推進するプロジェクトです。

海と日本PROJECT【日本財団】
日本全国の海に関する様々な情報を日本財団「海と日本PROJECT」がお届けします。おでかけにぴったりなイベント情報や、海の現状を知る最新調査報告など、海を知って、海を思い、海に集うための情報が満載です。
タイトルとURLをコピーしました