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イベント概要
開催概要
港町として栄えてきた小樽と神戸。街の発展を支えてきたのが『運河』です。
運河のおかげで街が栄え、海と人間の生活が密接に結びついた反面、そのせいで運河の水が汚れ生態系が壊れてしまった歴史があります。文化・歴史を学びながら、いかに人間の生活・行いが生物環境へ影響を与えるかを学び、兵庫の「環境」小樽の「観光」の両面から、各地域の優れた点を相互に汎用させ未来への活用性を考えていきます。
兵庫編の舞台となるのは兵庫運河。昔、一大商工業地域として栄えましたが、潮の流れが阻まれるなどして油やごみが浮き、生き物が住めない環境になってしまったことがあります。現在は周辺住民や企業の取り組みによって環境改善を図っており、直接的にアサリの養殖やイカやエビの住みかを作る実験も行っていますが、人の流動は少なく有名とは言えず、水辺の活用法に課題が残っています。
運河の水質や生物を調査し、運河の未来について考えることが子ども達のミッションです。
・イベント名 ひょうご・おたる運河調査隊2023
・日程 2023年7月28日(金)~2023年7月30日(日)【2泊3日】(兵庫編)
・開催場所 兵庫運河(兵庫県神戸市)
・参加人数 小学校5・6年生 計40名(兵庫県在住20名/北海道在住20名)
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【DAY1】海に関する基礎講座
はじめに、3日間調査を行う為の基礎講座(座学)を実施しました。まずは小樽と兵庫の運河について、規模の違いや海との接地面の多さなどを比較しました。また、小樽と兵庫が江戸時代から交流交易船「北前船」によってつながっていた歴史なども学びました。そのほか、海の生物をとりまく環境を知るため、「潮汐」や「DO(海水に溶けている酸素量)」、「栄養塩(植物プランクトンや海藻・海藻に必要な3大栄養素の総称)」、「ブルーカーボン」などについて、クイズや実験を交えながら学びました。
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【DAY1】兵庫・小樽の海の幸食べ比べ
座学が終わった後は大蔵海岸に場所を移し、BBQを行いました。北海道から今が旬のホタテやほっけや鮭、兵庫から地元でとれる須磨海苔やちりめんじゃこを持ち寄り、それぞれの土地でとれた豊かな食を味わいました。みんな揃っての食事で緊張もほどけ、明日の現地調査の前にたくさんの友達もできました。
小樽の海にも思いを馳せながら二つの地域の海の幸を堪能して、子ども達の期待も膨らみます。明日から、この豊かな海の恵みと密接に繋がる運河について、現地で調査をしていきます。
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【DAY2】兵庫運河の歴史
実際の調査に出かける前に、兵庫運河の歴史についてさらに深く知るため、座学を行いました。北前船によって小樽から兵庫へニシンなどが運ばれ、そのニシンが肥料になり、兵庫の土地が豊かになりました。また風によって難破する船が多かったことから、兵庫商人・北風正造氏らにより、風よけの為の「兵庫運河」がつくられたという歴史があります。兵庫運河はかつて木材置き場となり、ヘドロが溜まってとても生き物が住める状況ではない時代がありましたが、近隣住民や企業の手により、環境改善に取り組み、現在ではたくさんの生き物が住める環境になりました。
そんな兵庫運河を実際に見て触れて、どんな環境になっているのか、どんな生き物が住めるようになっているのかを調査します。
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【DAY2】兵庫運河の生き物調査と水質調査
座学のあと、兵庫運河で生き物調査と水質調査を実施しました。生き物調査エリアでは、兵庫運河にどんな生き物がいるのか、魚やアサリを採取し調査・観察を実施しました。兵庫運河には人工の干潟が作られており、天然のアサリがたくさん生息しています。そのアサリが、運河の水をきれいにしています。子ども達は、採取したアサリを入れていたバケツの水がほんの数分で綺麗になっていく様子や、兵庫運河にアサリだけでなくタコやエイ、アナゴ、カニなどが生息していることをを知り、驚いた様子でした。
水質調査エリアでは、水の色や透明度測定のほか、塩分や溶存酸素などについて調べました。調査の結果、兵庫運河が比較的綺麗で、溶存酸素も魚が住むことに適した数値であることを確かめられました。また、採泥やプランクトン採取も行いました。採泥では泥を触ったりにおいを嗅いだりして、ヘドロの実物がどのようなものなのかを自分達の目で確かめました。プランクトン採取ではプランクトンネットを桟橋から引き上げて観察しました。採取した海水の中には主に植物プランクトンがたくさん見受けられました。かつて生き物が住めない状態だった兵庫運河は、環境改善により、生き物たちが住める環境になっていることを体感しました。
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【DAY2】兵庫運河でのSUP体験とアサリの水質浄化実験
午後からは、兵庫運河でのSUP体験とアサリによる水質浄化実験を行いました。
SUPでは陸側から見ていた景色と、SUPに乗って運河側から見る街の景色。色々な角度から環境をみつめ、未来の兵庫運河がどのようになっていくと良いか考えました。また、生き物調査を行った「あつまれ生き物の浜」にいた生き物たちのタッチプールも体験しました。生きているタコやエイに触れる機会はあまりないので、その感触などに驚いている様子でした。
アサリによる水質浄化実験では、採取したあさりの計測や、パックテストによる水質分析などを実施しました。兵庫運河では水質をよくするために、二枚貝のアサリを養殖しています。これらの取り組みを背景に、本当に二枚貝は水質をよくするのか実験を行ったところ、見違えるほど水が綺麗になるのを目の当たりにしました。
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【DAY3】アミコン練る練る
最終日は未来の兵庫運河を考えるために、今起きている地球規模での環境の変化や、それが人間の活動によってもたらされていることなどをおさらいしました。それを踏まえて、「最新の技術で環境を再生する」というテーマで、アミノ酸コンクリートの制作を行いました。アミノ酸コンクリートは、コンクリートからゆっくりと溶け出すアミノ酸が微細藻類の成長を促進し、魚の住み家にもなります。子ども達は生き物たちが集まりやすい形を想像し、みんなで協力して型枠を作り、アミノ酸やセメント等を練ったものを流し込みました。乾燥作業を経てできた完成品は、おたる編で小樽水族館の屋外プールに設置します。
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【DAY3】未来の運河ワークショップ
最後に、運河や港の望ましい状態についてポストイットにメモし、ジャンルごとに分類をしました。子どもたちからは、たくさんの生き物の名前や、海藻チップスの開発、兵庫運河の紹介カード付アサリチップス、アマモンというヒーロー企画、兵庫運河の体験ツアーなどのアイデアが飛び出しました。そしてそのアイデアを文章と絵にまとめました。どの案も、兵庫運河がより綺麗になることで認知度があがり、人が集まる場所となることを望む内容でした。
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参加した子ども・保護者からの声
・内容はどれも楽しめた。座学でも初めて知ることが多かったので退屈はしなかった。
・SUPが一番楽しかった。アサリ取りも。体験学習が良かった。
・室内のカリキュラムで魚の家を作るのが楽しかった。
・宿泊先の舞子ビラが、部屋も景色も最高で大満足だった。
・同部屋の人とも仲良くなれたし、北海道の参加者とも友達になれて嬉しかった!
・バーベキューが楽しく食べられたのと、シラス丼とワカメの味噌汁は今回一番満足。
<団体概要>
団体名称:一般社団法人海と日本プロジェクトinひょうご
活動内容:海への興味・関心喚起を目的とした取組や、海洋ごみ問題の啓発・削減を目的とした取組
日本財団「海と日本プロジェクト」
さまざまなかたちで日本人の暮らしを支え、時に心の安らぎやワクワク、ひらめきを与えてくれる海。そんな海で進行している環境の悪化などの現状を、子どもたちをはじめ全国の人が「自分ごと」としてとらえ、海を未来へ引き継ぐアクションの輪を広げていくため、オールジャパンで推進するプロジェクトです。