コロナ禍収束による経済活動の本格的再開やインバウンド復活に伴い、屋外イベントの来場者が増加する一方で、韓国で発生した雑踏事故など、一度に人が集中するリスクも高まっています。
スマホでの位置情報だけでは対応できない来場者への現地対応が急務となる中、新たな日中及び夜間誘導対策として、従来掲示にはない視認性と分かりやすさで会場運営をサポートしました。
知名度、来場者数共に国内最大級の隅田川花火大会(103万5000人来場。7月29日主催者発表)は、安全かつ円滑な花火鑑賞のため、大規模交通規制や、来場者への移動方向制限などが実施されています。さらに、打ち上げ中は花⽕をより綺麗に鑑賞するため、会場周辺の照明を一斉に消灯することに伴い、視覚情報が制限され、暗闇の中でも効率よく快適な誘導を促す方法を模索していました。また、地図アプリなどの位置情報は当日の細かな移動制限などには対応しておらず、来場者は打ち上げ会場に行って初めて移動制限を知り、現地で混乱するケースも生じていました。
そこで、墨田区の公園・道路の管理部署である道路公園課は、産業振興課が推進するスタートアップ企業支援施策の一環で、区と繋がりをもつことになったユーモラス社が展開する高輝度蓄光ソリューション『ナイトコンシェルジュ』に、隅田川花火大会の安全対策への可能性を見出し、同社とともに活用方法を検討してきました。
丁寧な対話、現場実査を繰り返し行い、区とユーモラスで課題解決に向けた意識共有が図られ、現場や来場者に寄り添ったサイン製作へと繋がっていきました。
高輝度蓄光を活用して暗闇でも視認性を高め、直感的に移動方向がわかる場内設置サイン、誘導員着用サイン、暗闇で光る誘導バーなどの新アイテムを採用。固定設置以外にも、運営スタッフが自ら蓄光アイテムを身につける手法で『来場者と一緒に移動してエスコートする』というユニークな発想も加わり、スムースな場内移動を実現しました。
コロナ禍からの復活に伴い、今後さまざまな消費活動や屋外イベントが増加が予想される中で、デジタルだけでは対処しきれないリアル現地においての課題増加も予想されます。
来場者の視認性と注目度を高め、安全かつ快適に場内を運営する際に、現地での来場者に即した表現などを活用することで、自発的な協力を促す一助となります。本ソリューションは祭事や音楽フェスなどの屋外イベントでも来場者へのエスコートツールとして使用することが可能です。また、繰り返し利用することができ、経済的な誘導案内サポーターとしての活躍も期待されています。
墨田区 都市整備部道路公園課担当者コメント
『 区立公園のほとんどは、24時間開放しています。広い公園では、同じ場所であっても、昼と夜とでは知覚する情報に格差が生じます。誘導、案内、注意喚起など視覚情報に頼ったサインが公園内には多数存在します。そのどれもが明るさで情報の明晰度が変わります。一方で、園内灯や公園内のトイレ照明により、光の届く範囲は明るさが確保されていますが、指向性が強く輝度が高いLEDの普及も重なって、光の届かない範囲は実際の照度以上に暗く感じる印象があります。
ナイトコンシェルジュは、この昼夜の明るさ格差と照明で対処しきれない暗がりといった、情報の断絶ポイントを補うことに寄与する期待があります。昼間のイエローから夜のブルーにいたる過程で、グラデーションで変化する蓄光材のサインは、時間帯によらず、情報の明晰度が変わらない、という特性を持っており、年中無休の公園内では、安定した情報供給が叶うと考えています。
今回の隅田川花火大会での夜間誘導対策を経て、いつか、照明が一つもないナイトコンシェルジュのエスコートだけで、安全・安心な公園ができたらいいな、と想像が膨らみます。』
社会課題や背景
国内で開催されるイベントの数は増加傾向であり、年間約400もの花火大会が開催され(民間事業者開催を除く)、音楽フェスやライブの動員数は年間5000万人規模に達し、また全国各地の祭りなどに伴う来場者数はコロナ禍の経済回復やコト消費の風潮もあり、増加の一途を辿っています。
屋外イベントのうち、夜間に開催されるイベントは多く存在し、運営事業者は場内での安全な誘導の必要性と難易度の高さ、また経済的負担に苦慮しています。警備員などを配置しその対策を講じるケースも多いですが、保安業の有効求人倍率は7.43倍で、全体平均有効求人倍率1.45倍と比較して非常に高い倍率であり、昨今の人手不足もあり、既存の対策だけでは限界が生じています。
ナイトコンシェルジュは、これまで避難誘導などに使用されてきた蓄光素材をもっと創造的に使い、夜間の視認性向上だけでなく、ユーザーをエスコートする視点で開発されたソリューションです。
照明灯等による既存のハード整備には、設置・維持管理費のコスト面での課題があるなか、電力供給やメンテナンスなどの制約から解放される利点があり、半永久的に使用できるなど、消費しないサステナブルな空間演出を目指しています。
2022年度の国土交通省のモデル事業に採択され、高輝度蓄光素材と空間演出を融合させたオリジナルツール(特許出願中)を用いた社会実験が実施されました。利用者の9割が継続設置を希望し、商用化が開始されました。今後、公共空間以外にも観光やイベント活用など、様々なシーンでの活用に期待が寄せられています。
※『ナイトコンシェルジュ』はオリジナルの空間演出法として特許出願済、商標登録済です。
株式会社 humorous(ユーモラス) 本社:東京都目黒区、代表取締役:田村勇気
広告代理店にてプロデューサーとして多くの映画やドラマ、ドキュメンタリーなどの製作に携わってきた代表の田村が、エンタメのアプローチで社会課題を解決する企画会社として2022年創業。『あそびゴコロが、世界を救う』をミッションに、既存にない組み合わせやユーモアを有効活用し、心にゆとりある社会の実現を目指します。
エンタメの演出を活用し課題空間を変身させるR&D事業『ZONE®プロジェクト』を推進。
無電力蓄光ソリューション『ナイトコンシェルジュ』、音楽と映像が一体化した路面演出システム『ZIP=ZONE Illumination Player』(特許出願中)、アニメーションが歩行者をエスコートする『プロジェクションAR』による演出法(特許取得)など空間ソリューションが開発中です。
東京都墨田区プロトタイプ実証実験支援事業サイト)
humorous HP) https://humorous.jp
ナイトコンシェルジュサイト)https://humorous.jp/nightconcierge