子宮頸がんを対象とした腫瘍浸潤リンパ球輸注療法に関する慶應義塾大学との共同研究契約

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                           子宮頸がんを対象とした腫瘍浸潤リンパ球輸注療法に関する

                     慶應義塾大学医学部産婦人科学教室との共同研究契約に関するお知らせ

当社は、慶應義塾大学医学部産婦人科学教室と「先進医療B(進行子宮頸癌に対する骨髄非破壊的前処置および低用量IL-2を用いた短期培養抗腫瘍リンパ球輸注療法の第II層臨床試験)における、腫瘍浸潤リンパ球(TIL, Tumor Infiltrating Lymphocyte))の製造法の技術移転」に関する共同研究契約を締結しましたので、お知らせいたします。

慶應義塾大学は、「子宮頸がんを対象とした腫瘍浸潤リンパ球輸注療法(TIL療法)」(以下、「本臨床試験」という)について、2021年1月4日に厚生労働省へ第3種再生医療等提供計画としての届け出を行い、2021年1月5日付で本臨床試験を開始しております。また、本TIL療法は、2019年11月慶應義塾特定認定再生医療等委員会により第3種再生医療等提供計画として適と判定され、2020年12月厚生労働省先進医療会議において先進医療として許可されております。

(慶應義塾大学プレスリリース:https://www.keio.ac.jp/ja/press-releases/2021/1/6/28-77294/

当社は、本臨床試験において、腫瘍浸潤リンパ球の製造を受託することを目的として、同製造法の技術移転に関する共同研究契約を2023年6月26日に締結しました。TIL療法は、高度なTILの培養技術が必要なため、実施可能な施設は世界でも約10施設程度にとどまります。国際医療福祉大学医学部免疫学の河上裕教授(慶應義塾大学医学部名誉教授)らは、このTILの培養技術を日本で最初に確立し、既に2017年に3例の悪性黒色腫患者に TIL 療法を実施しています。当社は、河上教授らが確立したTILの製造法に関する技術移転を受け、同臨床試験の細胞加工を実施する予定です。

現在、当社では、①脊髄小脳変性症を対象とした幹細胞製品ステムカイマルと②ALSを対象としたiPS神経グリア細胞の研究開発を実施しており、神経変性疾患の再生医療に注力しております。今後は、TIL療法を起点として、がん免疫療法の分野にも事業を展開してまいります。

なお、本件による2024年3月期連結業績予想への影響はありませんが、中長期的な業績向上に資するものと考えております。

TIL療法

腫瘍浸潤リンパ球輸注療法(TIL療法)は、患者本人のがん組織に含まれる腫瘍浸潤リンパ球(TIL)と呼ばれる免疫細胞を採取して体外で大量に培養し、患者にTILを戻す養子免疫療法の一種です。TIL療法は米国を中心に、1980年代より主に進行悪性黒色腫に対して実施され、治療効果が報告されてきました。悪性黒色腫に対するTIL療法の成績は、腫瘍が縮小した患者(奏効率)が約7割で、病変が完全に消失する割合(完全奏効)は約2割とされ、さらに、完全奏効の患者では少数の例外を除き再発しないことが知られています。再発子宮頸癌でも9例の報告があり2例の完全奏効が報告され、5年以上再発していません(J Clin Oncol, 2015. 33: 1543-5)。米国では子宮頸癌に対するTIL療法の企業治験も始まっています。

以上

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