細胞内タンパクを補充する開発中の治療薬の初の臨床試験報告
投与した用量でのmRNA-3927の忍容性は概ね良好で、用量依存的な薬理作用および潜在的な臨床的有用性が示された
治験薬との関連を否定できない試験治療下で発現した有害事象(TEAEs)に起因する用量制限毒性や試験中止は認められず
mRNA-3927は280回以上投与されており、5人の患者は1年以上投与を継続
第1/2相臨床試験は用量拡大期へ移行
【米国マサチューセッツ州ケンブリッジ、2023年5月19日発】メッセンジャーRNA(mRNA)治療薬とワクチンのパイオニアであるバイオテクノロジー企業のモデルナ(NASDAQ:MRNA)は、2023年米国遺伝子細胞治療学会(ASGCT)年次大会にて発表した、プロピオン酸血症(PA)に対する開発中の治療薬mRNA-3927の第1/2相臨床試験に関する中間データを報告しました。
進行中の国際共同第1/2相臨床試験(ClinicalTrials.gov ID:NCT04159103)は、遺伝学的にPAと診断された1歳以上の被験者を対象に、mRNA-3927の安全性、薬力学および薬物動態を評価するための多施設共同、非盲検試験です。本試験では、用量漸増法を用いてmRNA-3927の静脈内投与を評価しました。最初の投与レジメンでは0.3 mg/kgを3週間ごとに静脈内投与し、その後2週間ごとに投与を行いました。用量最適化試験(投与10回)を完了した被験者は、非盲検延長試験(NCT05130437)による治療継続が可能となります。本試験の主要評価項目は安全性および忍容性で、副次的および探索的評価項目には、薬理作用、潜在的な血漿バイオマーカーの評価、ならびに代謝代償不全イベント(MDEs)の発現頻度およびその持続期間が含まれています。投与した用量でのmRNA-3927の忍容性は良好であり、用量依存的な薬理作用および潜在的な臨床的有用性を示唆するなど、初期徴候が観察されました。
これまでに、5つの用量コホートで、合計16人がmRNA-3927の投与を受けています。このうち11人が試験を完了し、非盲検延長試験に登録され、うち5人はmRNA-3927の投与を1年以上受けました。mRNA-3927の投与前12カ月以内にMDEsを報告していたほとんどの被験者で、投与開始後はMDEsの発現率が低いか、認められませんでした。
両試験を通じて合計280回を超えるmRNA-3297の投与が行われ、これは13患者年を超える投与経験に相当します。治験薬との関連を否定できない試験治療下で発現した有害事象(TEAEs)による用量制限毒性や試験中止は認められませんでした。臨床試験中に15人の被験者がTEAEsを報告しましたが、うち9人の報告が治験薬に関連するTEAEsでした。また8人の被験者に重篤な有害事象(SAEs)が報告されましたが、ほとんどのSAEsはPAと関連しており、mRNA-3927との関連は認められませんでした。また6人の被験者には軽度の注入に伴う反応(IRR)のTEAEsが認められましたが、ほとんどの事象は初回投与時に発現しました。
モデルナのシニア・バイスプレジデントで治療薬とオンコロジー領域の開発責任者カイル・ホーレン医学博士(Kyle Holen, M.D)は「用量拡大期に入ってもなお有望な結果が示唆されているmRNA-3927の臨床試験を継続していきます。それはこの治験薬の安全性、有効性をさらに評価し、今後計画する臨床試験の推奨用量を決定するために必要だからです。本報告は 細胞内タンパクを補充するmRNA治療薬となる可能性があるmRNA-3927の初めての臨床試験の結果です。私たちはこれまで13患者年を超えるmRNA-3927の投与経験を得ることができました。モデルナの研究活動にご協力くださっている患者さん、ご家族そして研究者の方々に心から感謝いたします。そしてプロピオン酸血症だけでなく、その他の希少疾患に対しても、mRNAプラットフォームの治療薬としての可能性を、今後も継続して探索できることを大変嬉しく思います」と述べています。
プロピオン酸血症(PA)とmRNA-3927について
プロピオン酸血症(PA)は、深刻な罹患率および死亡率を伴う希少かつ重篤な先天代謝異常症であり、全世界で10万人~15万人に1人が罹患しています。PAは、プロピオニルCoAカルボキシラーゼ(PCC)のαまたはβサブユニット(PCCAおよびPCCB遺伝子)の病原性変異に起因し、PCC欠損症とそれに続く有害な代謝物の蓄積をもたらします。PAは、再発性の生命にかかわる代謝代償不全イベント(MDEs)および多臓器合併症が特徴です。多臓器合併症には、神経症状、心筋症、不整脈、成長遅延、再発性膵炎、骨髄抑制および易感染性が含まれます。長期にわたって蓄積した有害な代謝物は様々な臓器を傷害し合併症を引き起こし、MDEsの発現頻度が多いほど認知機能は低下します。
現在、PAの根本原因を標的とする有効な治療法はありません。
mRNA-3927は、新規の静脈内投与される脂質ナノ粒子(LNP) 製剤で、PCCAおよびPCCBサブユニットタンパク質をコードする2つのmRNAを内包しており、肝臓におけるPCC酵素活性を回復させます。細胞内タンパク質をコードすることにより、mRNA治療薬として急性代謝代償不全の予防と治療に役立つ可能性があります。
モデルナ社について
モデルナは、2010年の創業から今日までの10年強の間に、メッセンジャーRNA(mRNA)分野の科学研究型企業から、現在は7つのモダリティにわたる多様なワクチンと治療薬の製品ならびに臨床開発段階のプログラムを有する企業へと発展しました。モデルナはmRNAと脂質ナノ粒子製剤を含む幅広い知的財産ポートフォリオを構築し、最新の大規模製造設備では迅速な臨床開発と臨床使用を目的とした生産が可能です。モデルナでは国内外の様々な政府や企業との提携関係を継続しており、革新的な科学の進展と速やかな製造拡大の実現を可能にしています。最近では、これらモデルナの能力を結集した例として、新型コロナウイルス感染症拡大に対し、効果的なワクチンを早期に開発、承認取得に至ったことがあげられます。
モデルナのmRNAプラットフォームは、基礎および応用の研究・医薬デリバリー技術・製造においての継続的な進歩を目指して構築されており、感染症、免疫腫瘍学、希少疾患、循環器疾患、並びに自己免疫疾患のための治療薬とワクチンの創出を可能にしています。過去8年間、Science誌によりトップのバイオ医薬品企業として選出されました。モデルナは、Great Place to Work®により、米国で「働きがいのある会社」として正式に認定されました。さらなる詳細は、www.modernatx.com またはhttps://www.modernatx.com/ja-JP をご覧ください。
将来予測に関する表明
本プレスリリースには、改正された1995年度米国民事証券訴訟改革法の意味の範囲内における将来予測に関する記述が含まれています。これには、mRNA-3927に関連する用量依存的な薬理作用および潜在的な臨床的有用性、急性代謝性不全の予防および治療におけるmRNA治療薬の潜在的な役割、ならびにmRNA-3927の臨床開発計画および進行状況などを含みます。
将来予測に関する声明は場合によっては「予定である」、「かもしれない」、「はずである」、「可能性がある」、「期待する」、「意図する」、「計画する」、「目的とする」、「予想する」、「信じる」、「推定する」、「予測する」、「可能性」、「継続する」、またはこれらの語句の否定形もしくはその他の同等の語句によって識別することができます。ただし、これらの語句がすべての将来予測に関する声明に含まれているわけではありません。本プレスリリース中の将来予測に関する表明は約束と保証のいずれでもなく、それらには既知および未知のリスク、不確実性、およびその他の要因が関わり、その多くはモデルナの統制の範囲外にあり、かつ実際の結果を将来予測に関する表明に表現されている、あるいはそれから黙示的に示されるものから大きく異なる可能性があるため、これらの将来予測に関する表明に対して過度に依存しないようお願いいたします。これらのリスク、不確実性、およびその他の要因には、米国証券取引委員会(SEC)のウェブサイト(www.sec.gov)から入手可能な、モデルナがSECに提出した2022年12月31日を期末とする年度のフォーム10-K年次報告書およびそれ以降にSECに提出した書類の「Risk Factors」欄に記載されたリスクと不確実性が含まれています。法によって求められる場合を除き、モデルナは本プレスリリースに含まれるいずれの将来予測に関する表明についても、新たな情報、将来的な展開、あるいはその他のいずれを理由とするかを問わず、更新または改訂する意図または責任を持ちません。これらの将来予測に関する表明はモデルナの現時点での予測に基づくものであり、本プレスリリースの日付においてのみ有効です。